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コロナ第3波が到来!? 普通の飲食店を苦しめないために行うべきたった1つのこと

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

第3波の到来か

日本国内の新型コロナウイルスの新規感染者数が増えています。

東京都では連日300人を超えており、全国では13日に初めて1700人を超えて最多人数を更新。北海道や大阪府、神奈川県や千葉県でも1日の新規感染者数が最多を記録しており、予断を許しません。

国は第3波が到来したとは明言していませんが、各地で過去最多を記録していたり、推移グラフの様子を鑑みたりすれば、3回目の大きな山が訪れていることは、火を見るよりも明らか。

感染拡大の第3波が訪れたと認識してよいのではないでしょうか。

国や自治体、メディアに不満

こういった局面で気になるのは、飲食店の状況です。

飲食店は3月から大きな損害を被ってきましたが、「Go To トラベル(Travel)」「Go To イート(Eat)」によって、少しずつ復調してきていました。しかし、1年で最大の書き入れ時である12月を迎えようとする時期になって、感染が再び拡大しようとしているとあっては、穏やかではいられません。

これまで2つの大きな波を経験してきたので、国や自治体、国民や飲食店にも知見が蓄えられてきたことと思います。

ただ、国や自治体の施策や対応、メディアの報道には不満をもっていました。

第3波を迎えるにあたって、同じ轍を踏まないように、国や自治体、そしてメディアには是非とも改善してもらいたいことがあります。

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業態別に対応を分ける

飲食店を一括りにして議論したり、どの飲食店に対しても同じ施策が行われたりしていますが、もっとこまやかに対応、報道する必要があります。なぜならば、全てを一緒にしているせいで、関係のない飲食店にも被害が拡大したからです。

飲食店といっても日本全国に約45.4万店もあります。

全てを十把一絡げにするのではなく、<料理を味わう飲食店>、<お酒を楽しむ飲食店>、<スタッフの接待を期待する飲食店>に分けて、しっかりと議論して施策をつくり、伝えていくべきです。

飲食店の分類

これら3つの飲食店の違いについて説明する前に、日本で分類されている飲食店の業態について触れておきましょう。

総務省統計局の日本標準産業分類は、日本における産業別の経済活動を分析する際にも使用されるなど最も有名。これによると飲食店は中分類76となっており、その下にぶらさがる業態は以下の通りです。

76 飲食店

  • 760 管理,補助的経済活動を行う事業所(76飲食店)

7600 主として管理事務を行う本社等/7609 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所

  • 761 食堂,レストラン(専門料理店を除く)

7611 食堂,レストラン(専門料理店を除く)

  • 762 専門料理店

7621 日本料理店/7622 料亭/7623 中華料理店/7624 ラーメン店/7625 焼肉店/7629 その他の専門料理店

  • 763 そば・うどん店

7631 そば・うどん店

  • 764 すし店

7641 すし店

  • 765 酒場,ビヤホール

7651 酒場,ビヤホール

  • 766 バー,キャバレー,ナイトクラブ

7661 バー,キャバレー,ナイトクラブ

  • 767 喫茶店

7671 喫茶店

  • 769 その他の飲食店

7691 ハンバーガー店/7692 お好み焼・焼きそば・たこ焼店/7699 他に分類されない飲食店

出典:日本標準産業分類(総務省統計局)

この中で、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、いわゆる風営法で管理されるものは次のようになります。

接待飲食等営業

  • 1号営業 料理店、社交飲食店

キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食させる営業

  • 2号営業 低照度飲食店

喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客席における照度を10ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業を徐く。)

  • 3号営業 区画席飲食店

喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むもの

出典:風俗営業等業種一覧(警視庁)

また、午前0時から6時までお酒を主として提供するバーや酒場は深夜酒類提供飲食店営業の届け出が必要です。

飲食店の区分け

前提を説明したところで、話を戻しましょう。先ほど挙げた飲食店の区分は次の通りです。

<スタッフの接待を期待する飲食店>とは、風営法の1号営業に該当する飲食店。店舗のスタッフが客の横に座って応対するような業態であり、料理やお酒よりも、スタッフによる応対に価値を置いています。

<お酒を楽しむ飲食店>とは、深夜酒類提供飲食店営業の届け出を提出しているような、お酒が中心となっている飲食店。風俗営業と深夜酒類提供は同時に行うことができないので、こちらはあくまでもお酒を嗜むための飲食店を指します。お酒がメインなので、20時や21時から営業を始めるところも少なくありません。

<料理を味わう飲食店>とは上記以外の飲食店であり、店舗スタッフによる接待やお酒を主としない、料理を堪能するための飲食店。一般的に認識されている飲食店であるといって構わないでしょう。

濃厚接触の度合い

この3つの飲食店に対して同じように対応したり、報道したりすることに疑問を覚えます。なぜならば、感染リスクと関連が深いとされる濃厚接触の度合いが全く異なるからです。

<スタッフの接待を期待する飲食店>は、これら3つの飲食店の中で、ダントツに不特定多数との濃厚接触が多いものでしょう。そもそも、スタッフと濃厚接触を希望しているからこそ、料理やお酒がそれなりでも、高いお金を支払ってでも訪れているのです。明らかに濃厚接触が多い業態であれば、この飲食店から早期に厳しい施策を実施するべきです。

<お酒を楽しむ飲食店>は、お酒が入ることで話し声が大きくなったり、深夜まで営業したりしているので気分が開放的になったりすることから、感染リスクは比較的高めかもしれません。

<料理を味わう飲食店>は、テーブル間隔やパーティションの有無などによって、多かれ少なかれ差はあるでしょう。しかし、先の2つの飲食店に比べれば、料理を味わいたいという目的からして、濃厚接触の度合いはまだ低いと考えられます。

基本的にどれもが国で定められた区分けであり、私が勝手に決めたものではありません。それなのに、国や自治体の施策ではどれも同じものとして乱暴に扱われていることは全く不思議なことです。

濃厚接触の度合いが異なるのであれば、それぞれの飲食店によって施策を最適化するべきです。それができなければ怠慢と思われても仕方ありません。

勘違いのない伝え方

伝え方も改める必要があります。

これまでもクラスターが発生した場所や感染のリスクが高い場所として「夜の街」、「接待を伴う飲食店」、「社交飲食店」という言葉が用いられてきました。

このどれもが、風営法で定められたスタッフが応対する1号営業、つまり、<スタッフの接待を期待する飲食店>を指していますが、視聴者や読者などの受け手は勘違いしてしまうでしょう。

「夜の街」であれば居酒屋やダイニングバーなど、「接待を伴う飲食店」であれば仕事の接待で用いられるような高級なファインダイニング、「社交飲食店」であればみんなで親睦を深められるような飲食店と、誤った解釈がなされる恐れがあるのです。

そのせいで風評被害が生じてしまい、<料理を味わう飲食店>や<お酒を楽しむ飲食店>までも敬遠されてしまうのではいけません。日本経済のことを考えているのであれば、経済的損失は局所的かつ最小限に抑えた方がよいので、どのような飲食店であるのかを峻別するべきです。

国や自治体、メディアは、他の飲食店が損害を受けないように、細心の注意を払わなければなりません。

「Go To イート」に対する不安

「Go To イート」のオンライン飲食予約は給付金616億円の上限に達するため、終了します。

送客手数料がとられ、消費者心理的に客単価が抑えられてしまうオンライン飲食予約よりも、プレミアムがついて売上が増える食事券の方が、施策としては優れているでしょう。

しかしそれでも、ひとつの施策が終わってしまうことで、外食の喚起が弱まってしまうことに危惧を覚えています。

食事券は、東京都や神奈川県、福岡県といった多くの飲食店を擁する自治体では開始が遅くなっていることも不安の種。特に、日本が世界に誇れる数多のレストランを抱える東京都に食事券の給付金がどれだけ残されているのかと、危惧しています。

普通の飲食店を救ってもらいたい

「Go To イート」の目的は「感染予防対策に取り組みながら頑張っている飲食店を応援し、食材を供給する農林漁業者を応援する」ことです。

約45.4万もの飲食店の中で「バー,キャバレー,ナイトクラブ」に該当するものは約6.6万店。つまり、<料理を味わう飲食店>、<お酒を楽しむ飲食店>、<スタッフの接待を期待する飲食店>で区別してみれば、<料理を味わう飲食店>が飲食店全体の約85%を占めているのです。

家族や親類、友人やデートなど、一般的な方が利用するものは<料理を味わう飲食店>でしょう。なぜならば、家族で<お酒を楽しむ飲食店>に訪れたり、デートで<スタッフの接待を期待する飲食店>に訪れたりすることなどないからです。

第3波が到来した今、ほとんどの消費者が利用し、圧倒的に数が多い<料理を味わう飲食店>を救うために、国や自治体、メディアにはこれまでの経験を生かし、自分事として施策や伝え方に責任をもっていただきたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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