コロナ自粛で飲食店は売上激減! 有名シェフ6人が語るテイクアウトの実情とは?

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

緊急事態宣言が発令

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍晋三首相が4月7日に緊急事態宣言を発令し、翌8日から効力が発生しました。期間は5月6日までの約1ヶ月、対象となる地域は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡といった7都府県です。

それを受けて、東京都の小池百合子知事は、都内全域を対象に外出の自粛を要請し、施設の使用制限に関する要請も、10日に発表しました。

飲食店はますます厳しい状況

新型コロナウイルスが猛威をふるう中で、休業要請されたわけではありませんが、飲食店はますます厳しい状況を迎えています。

3月中旬くらいから休業する飲食店がちらほら見かけられるようになりました。印象としては、客の激減を受けて、大手外食企業よりも体力の弱い個店の方が状況を判断し、先に手を打ったという印象です。

小池知事が25日夜に会見でオーバーシュート(感染爆発)」について言及したあたりから、こういった動きが一気に広まったように思います。

そして、緊急事態宣言が発令されてからは、多くの飲食店が休業したり、営業を短縮したりするようになりました。

飲食店の売上が急激な落ち込み

では、飲食店は現在どのような状況となっているのでしょうか。

大手レストラン予約サービスを運営するテーブルチェック(TableCheck)は、新型コロナウイルスの影響が大きくなって以降、定期的に有益な数字を発表しています。

テーブルチェックによれば、2020年4月の予約件数は昨年同月に比べると86.2%も減少。それにもかかわらず、キャンセル率は昨年の10%程度から32%に跳ね上がっています。

レポートは頻繁に更新されていますが、状況はますます悪化の一途を辿っているといってよいでしょう。

テイクアウトを始める飲食店が多い

この苦しい環境の中で、席を間引いてテーブル間隔を広くしたり、数組に限定して客を減らしたりして、通常に近い営業を続けている飲食店もありますが、極めて少数です。

営業を休止したり、短縮したりすれば、売上はもちろん激減します。そのため、テイクアウト(テイクアウェイ)に力を入れる飲食店が増えてきました。

中には、ミシュランガイドに掲載されている飲食店や食べログで高得点を獲得している飲食店も少なくありません。

こういった飲食店の動きを受けて、食べログやRetty、ヒトサラといったレストラン紹介サイト、さらにはGoogle Mapsでもテイクアウトに対応したページ作りを始めて、飲食店を支援しています。

テイクアウトを行っている飲食店

では、実際のところ、飲食店のテイクアウトはどのような状況になっているのでしょうか。

テイクアウトを行っている飲食店に話を聞きました。

オルグイユ/加瀬史也氏

シャンパーニュとの相性を考えた料理でミシュランガイド一つ星を獲得する「オルグイユ」オーナーシェフの加瀬史也氏は、この状況をポジティブに考え、積極的にテイクアウトの知恵を絞っています。

その加瀬氏でも苦労しているところといえば、やはり衛生面。「ご購入いただいてから、どのように保存して召し上がっていただくかをご説明しなければならない」といいます。

「幸い当店は固定費が低いので、テイクアウト需要が落ち込まなければ半年くらいは経営していける。固定費が多い飲食店では、2ヶ月くらいが限界なので、テイクアウトに対応しても焼け石に水ではないか」と懸念。

今後ついては「お弁当のようにカジュアルなものより、ご家庭で少し仕上げていただき、レストランの味を楽しんでいただけるようなものを考えている。ブイヤベース鍋や鴨のローストなど本格的なものを提供したい。仲卸業や生産者も同じように苦しんでいるので、手を取り合って乗り越えていけたら」と述べます。

ジュードゥマルシェ/榎本奈緒子氏

自家製パテドカンパーニュサンド@ジュードゥマルシェ(メニューは随時新しくなる)/店舗提供
自家製パテドカンパーニュサンド@ジュードゥマルシェ(メニューは随時新しくなる)/店舗提供

四谷・曙橋の住宅街にある「ジュードゥマルシェ」は、オーナーシェフ榎本奈緒子氏による女性ならではの繊細で凛とした料理で好評を博していますが、どのようにしてテイクアウトに対応しているのでしょうか。

「レストラン営業とテイクアウトは全く異なる業態。時間が経ってもおいしく召し上がっていただけるように、通常とは異なる新しいメニューを考案している」と話します。

「認知度が低い状態で始めたので、実施していることを知っている方が少ない。どれくらい販促費をかけてよいのかも悩ましいところ。2ヶ月間くらいは続けられそうだが、どれくらい売上が伸びるかわからないので、精神的、経済的な負担が増している」と思いを吐露。

「今は他のスタッフに休んでもらって、私ひとりなのでメニュー数をあまり増やせないが、リピートくださる方のためにも、定期的にメニューを変更していきたい。通常営業とは完全に別のメニューとなるので、お客様に喜んでいただけそうなものであれば、フレンチにこだわらなくてもよいと思っている。お客様は近くに住んでいらっしゃる方ばかりではないので、冷蔵郵送も考えなくてはならない」と課題も挙げます。

ラペ/松本一平氏

ラペBOX@ラペ(内容は届いてからのお楽しみ)/店舗提供
ラペBOX@ラペ(内容は届いてからのお楽しみ)/店舗提供

日本橋にある「ラペ」は現代風の軽やかな料理でミシュランガイド一つ星を獲得しているフレンチ。オーナーシェフの松本一平氏は「ラペBOX」をテイクアウトではなく郵送で提供することにしました。

郵送にした理由は「お店に来ていただくと、移動時に感染リスクがある。お客様とスタッフの接触も避けた方が好ましい」と答え、「受注生産なので、勤務スケジュールも組みやすく、効率的に作ることができる」とメリットも上げます。

「届くのに1日を要するので、衛生面にとても気を付けなければならない。真空パックで提供し、簡単に召し上がっていただけるようにもしている」と補足。

今後の展望としては「方法が確立されてきたので、郵送では難しい商品を車で配送することも検討したい。これまでお世話になった生産者の食材を使いながら、みんなで頑張っていきたい」と力を込めます。

テイクアウトを行っていない飲食店

テイクアウトに対応する飲食店がある一方で、テイクアウトを行っていない飲食店もあります。

今後はテイクアウトを始めることもあるかもしれませんが、どのような考えをもっているのでしょうか。

カンテサンス/岸田周三氏

東京のミシュランガイドでオープン以来三つ星を獲得し続けている、唯一の日本人シェフのフレンチといえば「カンテサンス」。

オーナーシェフ岸田周三氏は「他店について何かをいえる立場ではないが、みんながこの状況を乗り越えるのに必死。やれる事をやるのは経営者としては当然だと思う」と言及します。

緊急事態宣言の期間については「1ヶ月間という数字は説得力があるように感じられない。先が見えないので、どの飲食店も危機に瀕している」と懸念を表明。

ナベノ-イズム/渡辺雄一郎氏

ミシュランガイド三つ星「ジョエル・ロブション」元総料理長であり、ミシュランガイドニつ星「ナベノ-イズム」オーナーシェフの渡辺雄一郎氏もテイクアウトに対応していません。

自ら開発した万能調味料「ナベノソース」を2019年12月から販売し、好評を博しているだけに、テイクアウトを行っていてもよさそうですが、どうしてなのでしょうか。

渡辺氏は「衛生管理やウィルス対策ができた上で、初めてテイクアウトの料理を提供できると考えている」と回答。

具体的には「まず食中毒やゴミの問題がある。お客様、作り手、食材を配達する業者の方まで感染する可能性があるので、慎重にならざるを得ない」といいます。

HAJIME/米田肇氏

「HAJIME」は2017年からミシュランガイド三つ星として掲載され、世界中からゲストが訪れるイノベーティブレストランです。そのオーナーシェフである米田肇氏は「飲食店倒産防止対策」署名運動の発起人。

「もしかすると今後、何かしらの支援活動を行うかもしれないが、とにかく今はお客様とスタッフの感染を予防することが第一」であると述べます。

テイクアウトを行っている飲食店に対しては「通常営業の損益を補うまでには至らないのではないか。少しでも何とかしたいという気持ちや、純粋に街を元気にしたいという思いが感じられる。ただ、ソーシャルディスタンスも取らず、行列ができていることもあるので、危機管理も心配だ」と憂慮。

こういったことも含めて「できるだけ早く営業を再開しないと、多くの飲食店が危ない状況になるのではないか」と警鐘を鳴らします。

新型コロナウイルスの影響下で正解はない

テイクアウトを多なっている飲食店、および、テイクアウトを行っていない飲食店について紹介してきました。

新型コロナウイルスの動向が予測できず、かつ、国や自治体の動きも不透明であるだけに、経営方針を立てるのも非常に難しいところです。

どの料理人もゲストに満足してもらえるようにと日々知恵を絞っていますが、新型コロナウイルスの影響によって、素晴らしい食体験をゲストに提供できないのは忸怩たる思いでしょう。

テイクアウトに対応する、しないに正解はありません。どちらの苦悩もよく理解できるだけに、いち早く新型コロナウイルスが収束すること、および、国や自治体によるさらなる有効な施策を願います。