飲食店は緊急事態宣言の延長で瀕死! コロナ禍で営業せざるをえない4つの有名店が漏らした本音

(写真:アフロ)

飲食店の売上が過去最大の落ち込み

新型コロナウイルスが飲食店に与えている被害は甚大です。感染拡大の収束、および、経済活動自粛の解除に対して先行きがみえないため、飲食店は大きな危機に瀕しています。

東京都による協力金の申請が4月22日に開始されたり、国が飲食店の家賃に対する支援を検討し始めたりと、少しずつ飲食店の助けになる施策が具体化されてきました。

しかし、飲食店は2月が閑散期であった上に、歓送迎会のシーズンである3月と4月の書き入れ時の売上を逸失。3月の売上は対昨年比で17.3%減少となり、1994年以来の過去最大の下げ幅となりました。

本格的な自粛となった4月の売上は、3月よりもさらに減少することが確実です。

国や自治体からの自粛要請を受けて休業している飲食店もあります。中にはテイクアウトやデリバリーを始める飲食店もありますが、これまでの売上には遠く及びません。

固定費の負担が重くのしかかる

飲食店が主に困っているのは人件費と家賃の固定費。

人件費に関しては、雇用調整助成金を申請できますが、負担が全てなくなるわけではありません。そして、人件費よりもっと飲食店を苦しめているのが家賃。家主が協議に応じて減額したり、猶予したりしてくれれば、まだよいですが、そういった家主ばかりではありません。

様々な事情から、自治体による営業短縮の要請を厳守しながら、営業している飲食店もあります。

そのような飲食店はどのような考えをもっており、どのような困難に直面しているのでしょうか。

レクテ/佐々木直歩氏

「レクテ(recte)」はミシュランガイドで一つ星を獲得し続けている代官山のレストラン。食材の持ち味をありのまま表現した料理が評判を呼んでいます。

シェフの佐々木直歩氏は「私たちにできることは何なのかと話し合った結果、お客様の予約がある限り、安心と安全を考えて、誠意をもってお迎えしようということになった」と話します。

ゲストの反応については「たとえば、医療関係の方がお越しくださった際には、感謝のお言葉をいただいた。営業して意味があると実感している」ということです。

もちろん営業に際しては細心の注意を払っています。入り口とフロアの扉を開けて常に空気を入れ替えたり、ドアノブを消毒したり、さらには、全てのスタッフが毎朝体温を計測したり、マスクを着用したりしているのです。

最後に佐々木氏は「飲食店に限らず、中小企業への支援が遅いように感じられる。検査を拡大してもらい、できるだけ早く事態が収束するようにしていただきたい」と国や自治体への要望を挙げます。

サンプリシテ/相原薫氏

2020年度版のミシュランガイドに一つ星として掲載され、魚介に定評があるフレンチといえば「サンプリシテ(Simplicite)」。

オーナーシェフの相原薫氏は「たとえ営業していなくても、家賃や人件費がかかってしまう。毎月支払いが必要なので、週に1、2度だけ昼に営業を行っている」といいます。「サンプリシテ」は2月に3週間も休業したので、その時の損失が重くのしかかっていることは想像に難くありません。

「3月26日前後まではたくさんのお客様にお越しいただいた。しかし、その後の週末からは8割減くらいとなり、現在はゼロに近い」と厳しい状況が続いていると話します。

営業については「近くに住むスタッフだけで回している。通常の半分くらいの人数」であるとし、「マスクやゴム手袋を着用したり、こまめにアルコール消毒を行ったりしている。お客様にも来店時に手洗いとアルコール消毒をお願いしている」と対策を説明。

国や自治体の施策には、それなりに満足しているといいます。ただ「生産者を守るための施策が不足しているのではないか。質の高い食材を作るには手間や費用がかかるので心配している」と生産者が置かれた状況にも配慮。

「何気ない日常が戻り、全ての人々が安心して楽しい食事ができるようになることを願っている」と結びます。

グリグリ/伊藤憲氏

麻布十番「グリグリ(gri-gri)」は斬新な料理が目を引き、予約がなかなかとれないモダンフレンチ。オーナーシェフの伊藤憲氏に話を聞きました。

「家主に家賃を交渉したが、減額に応じてもらえなかったので、僅かでも日銭を稼がなければならない。社員には休んでもらい、単発の派遣スタッフをお願いしている」といいます。

「売上は通常の1割程度。借り入れも相談したが、面談が7月になるので間に合わない。新しい施策が打ち出されても、入金までに時間がかかるので、どこまでもつか」と憂慮。

営業に際して様々な対策が行われています。ゲストには、荷物を預かるのをやめて席まで持って行ってもらったり、着席したらアルコールジェルで消毒してもらったりするようにしました。

常に外気を入れてダクトも回したり、全スタッフがマスクを着用したり、誰かが触れた物はすぐにアルコール消毒したりしています。調理場では営業前に衛生グローブを着用し、営業が終わるまで外していません。

「助成金には感謝しているが、家賃に充てたら、すぐになくなってしまう」と述べるように、同店の賃料相場となる40万から50万円と先行きの不透明感を鑑みれば、これでは焼け石に水ではないでしょうか。

銀座エスコフィエ/小林かおる氏

老舗の「銀座エスコフィエ」は木村拓哉氏主演のTBSドラマ「グランメゾン東京」とも関係が深いフランス料理店。

代表取締役の小林かおる氏は「今年は70周年なので、このような事態となって非常に残念。しかし、今こそ食を通して何かできないかと模索し、この状況下でも銀座で働く人々の食と健康を支えたいと考えた」と営業の理由を明かします。

「対昨年比の売上は、緊急事態宣言前が50%以上減、それ以降は80%以上減。テイクアウトも行っているが、サービス価格なのでほとんど利益がでない」と厳しい現状について言及。

スタッフには体温や咳の有無をチェックし、うがいや手洗い、マスク着用などを徹底しているといいます。ドアノブや備品などを消毒し、手指の消毒液も設置。三密とならないように換気したり、ゲストの入店タイミングに配慮したりしています。通常10テーブルの空間を最大3テーブルに制限し、現在は大人数や団体は受け付けていません。

国や自治体に対しては「できる範囲で施策を行っているのは理解できる。ただ、もう少しスピーディーで効果的な対応を期待してしまう」と本心を覗かせます。

「当店の歴史は銀座の街と共に長らく受け継がれてきた。何とかして後世につなげられるように、クラウドファンディングでご支援をお願いしている」と藁にもすがる思いです。

ボンシュマン/花澤龍氏

ここまで、営業を行っている飲食店を紹介してきましたが、営業していない飲食店の声も紹介しましょう。

ミシュランガイド一つ星を長らく獲得し続けていた目黒区の名店「ボンシュマン(bonchemin)」。

オーナーシェフ花澤龍氏は「新型コロナウイルスの感染者数が減らないので、4月中旬くらいから営業を休業し、テイクアウトやデリバリーに切り替えた。ただ、営業しているのかと、毎日お問い合わせがある。状況が好転すれば、すぐにでも営業を再開したい」といいます。

国や自治体の施策については、どのように感じているのでしょうか。

「休業させるのであれば、安心できるように十分な補償をしていただきたい。補償できないのであれば、期間限定で消費税を削減するなり、抜本的な施策を行っていただかないと、個人事業主はとてもやっていけない」と陳情します。

家賃に対する迅速で効果的な施策を願う

どの飲食店も言及していますが、最も負担になっているのがやはり家賃です。現状では家賃の負担を軽くする効果的な施策はありません。したがって、家主が家賃の減額や猶予に応じなければ、飲食店がますます窮状に瀕することは明白。

同じ飲食店であっても、家賃の支払いに関して状況が違っており、テイクアウトやデリバリーに向き不向きがあるだけに、何が正解であるかは決められません。

東京都は飲食店に対して、5時から20時までの営業、19時までの酒類提供という営業短縮を要請しました。その要請をしっかりと守りながら、新型コロナウイルス対策も行い、懸命に営業している飲食店を是非とも応援したいです。

そして、国や自治体には、引き続き飲食店に対する有効な支援を考え、迅速に遂行してもらうことを強く願います。