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居酒屋で17万円もの予約を無断キャンセルした男が衝撃の逮捕 今後に与える4つの影響

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

無断キャンセルで逮捕

読売新聞の記事で、ノーショー(無断キャンセル)を行った50歳代の男性が偽計業務妨害容疑で逮捕されたことが報道されました。

件の男性は、居酒屋に偽名で電話し、1人1万円のコースを17人分予約しながらも、当日来店しなかったということです。

他の系列店4店舗にも同様の行為を行っており、最初から来店するつもりがなかったとみて調査が進んでいます。

Yahoo!ニュースのトピックスにも

ノーショーを行った人物が摘発されるのは非常に珍しいです。

この報道は大きな反響があり、Yahoo!ニュースのトピックスでも取り上げられていました。

私も以前からノーショーやドタキャン(直前キャンセル)に関する記事をいくつも書いており、この逮捕に注目しています。

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ノーショーを意図して行った人物が逮捕されたこと、それが大々的に報じられたことによって、ノーショーやドタキャンの撲滅に大きな前進があるでしょう。

今後に向けて4つの影響があると考えているので、それぞれ詳しく説明していきます。

刑事事件

1つ目は、逮捕されたこと、つまり、刑事事件として扱われたことです。これは非常に大きな意味をもちます。

通常ノーショーが発生した場合、飲食店は自ら予約した人物を突き止め、キャンセル料金を請求しなければなりません。なぜならば、民事事件とみなされているからです。

相手を特定でき、すんなりと損害賠償してくれれば、まだよいでしょう。しかし、普通はそう簡単にいかないもので、もしも相手が支払わない場合には、民事訴訟に持ち込まなければならないので、困っているのです。

飲食店は営業利益が10%程度という業態。長い営業時間以外に、オープン前にはセットアップや仕込みがあったり、クローズ後には片付けがあったりと、拘束時間の長さが特徴です。

そういった状況で、相手を特定して料金を徴収したり、裁判を起こしたりする余裕などありません。損害賠償を支払ってもらったとしても、手間と時間を考えれば、到底割に合わないのです。

そのため実際には、ノーショーが発生したとしても、飲食店が泣き寝入りすることがほとんどであり、それがノーショーを野放しにさせている理由にもなっています。

しかし、刑事事件として扱われれば、飲食店はそこまで労力を費やす必要がないので、非常に助かるでしょう。

今回の事件は、かなり悪質であったことから、刑事事件となり、警察が動いたことも鑑みなければなりません。ただ、これまでは刑事事件と立件されることがほとんどなかったことに比べれば、大きな進歩です。

犯罪であるという認識

2つ目は、犯罪であると認識されること。

ノーショーが事件として扱われ、全国紙で報道されるとなれば、記事を読んだ読者にはノーショーがれっきとした犯罪行為であると認識されるでしょう。

もちろん、ノーショーの中には、うっかり忘れてしまうなど、故意ではなかった場合もあるかもしれません。しかし、ノーショーが飲食店に損害を与える偽計業務妨害という犯罪につながる行為であると知られることは重要です。

ノーショーを行っても刑事事件にならないと高をくくり、安易に行っていた人も少なくないでしょう。

今回の報道が、このようなノーショーを気軽に行っている人々に対して、人生を左右するかもしれない犯罪であると考えを改めてもらうよい機会になります。

ペナルティ料金の請求

3つ目はペナルティ料金の請求について。

ノーショーが犯罪であると認識されれば、飲食店によるペナルティ料金の請求にも誠実に対応する人が増えるのではないでしょうか。

なぜならば、ペナルティ料金を支払わなければ、警察に届け出されてしまい、刑事事件として立件されてしまう可能性もあるからです。

飲食店がノーショーのペナルティ料金を請求することは、海外では全くもって当然のこと。しかし、飲食店の予約は、客と飲食店との契約であるという認識が薄い日本では、あまり受け入れられにくいことでした。

しかし、ノーショーが犯罪であり、刑事事件になる可能性もあると認められることによって、飲食店がノーショーに対してペナルティを課しやすくなり、そしてスムーズに徴収しやすくもなります。

機会創出

最後は機会創出です。

ノーショーが悪であると理解され、飲食店がキャンセル料金を徴収できるようになり、ノーショーを行っていた人々が改心されるようになれば、不誠実な予約がなくなることでしょう。

そうなれば、これまで予約できなかった人々が予約できるようになり、新たな機会を創出できます。

忘年会や新年会、歓送迎会といった繁忙期では、残念ながら、複数店舗を予約する幹事もいるようです。また、以前記事でも取り上げましたが、女性に選んでもらうために、デートで複数店舗を予約する男性もいるといいます。

こういったことをする人々がいなくなれば、本来は訪れることができた人々が予約できるようになるので、飲食店にとっても客にとっても嬉しいことに間違いはありません。

大きな第一歩

ノーショーやドタキャンは、飲食店を苦しめるよくない行為ですが、私は何も飲食店だけのためを思って述べているのではありません。こういった行為によって、最終的にツケを払うことになるのは、誰であろう、客なのです。

飲食店はノーショーやドタキャンをある程度見越して価格設定やオペレーションをしなくては生き残ることができません。その結果、ノーショーやドタキャンの損害分が他の客に転嫁されてしまいます。

ノーショーやドタキャンが完全になくなれば、食品ロスも削減され、飲食店も客も幸せになることは確かです。

そのためには、特に悪質な今回の事件の人物が逮捕され、広く知らしめられたことは、大きな第一歩であると考えています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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