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「尼神インター」解散。吉本興業退所。誠子が語る「人生一度きり」の思い

中西正男芸能記者
コンビ解散、事務所退所を経て、今の思いを語る誠子さん(写真は本人提供)

 お笑いコンビ「尼神インター」を3月末で解散し、所属していた吉本興業も退所した誠子さん(35)。現在はフリーの芸人として活動していますが、新たな一歩を踏み出す中で感じた思いをストレートに語りました。

涙が出てくる

 吉本興業を出て、今は全て自分でやるという状況になっています。

 ただ、これまで経験がなかったことも自分でやらないといけない。お仕事のオファーをいただいたとしても、芸人の仕事だったら自分で判断できるんですけど、例えば、お芝居とかだったら、経験が浅いのでなかなか判断がつかない。そうなったら、役者さんの友だちに尋ねたり、これでもかと周りの方を頼りながら日々をやりくりしています。

 ずっとご縁やつながりに感謝して生きてきたつもりではあるんですけど、それをもっと、もっと噛みしめるというか。心底、有り難いことだと痛感するようになりました。これまでお世話になっていた方からご連絡をいただいたりすると、うれしくて涙が出てくる。そんなことも日常的になっています。

 基本的にはきちんとしたお仕事のお話が多いんですけど、自分でやるとなると、お仕事の窓口が私自身になるという状況が生まれます。私宛にいろいろなお話をいただくので「これは、恐らくお仕事ではないかな?」というような、ただただ私としゃべりたい、会いたいというだけと思しき連絡もあったりします。

 正直、戸惑うこともありますし、逆に、これまで吉本に支えてもらっていたんだということも本当に強く感じるようになりました。そうなると、また改めて感謝の気持ちがあふれてきます。

 言葉にすると、普通というか、きれいごとのようになってしまいますけど、本当にその思いしかないですし、その思いを感じることができただけでも、まずフリーになった意味があったのかなとも思っています。

 あと、今回絵本作家のむらかみさきさんの作品を朗読するコラボ企画をさせてもらったんですけど、むらかみさんからもメールで直接お仕事の依頼をいただきました。絵本のテーマが「自分らしく生きる」ということで、コンビを解散する時に出したコメントに「自分らしく」というワードが入っていたことをきっかけにオファーをいただいたんです。

 お話をうかがうためにむらかみさんのご自宅にも行かせてもらいましたし、お子さんにもお会いしました。戸惑うこともありますけど、こうやって直接オファーをいただく方の熱を感じた上でお仕事ができる。これは今の立場ならではのことだし、難しいけどやりがいがある。本当にそう思います。

人生一回きり

 コンビ解散という具体的な話が出たのは去年12月でした。ただ、1年ほど前からお互いに「何か」を感じてはいたと思います。十数年コンビを組んでいると、連れ添った夫婦というか、何も話さなくても感じるところがある。

 大阪から東京に拠点を変えて、テレビにも少しは出していただいて、さあここから何をするのか。そこで互いに「やりたいことが違うんだな」というのはあったと思います。

 そんな中、去年12月に渚から「どうなんやろ、解散という考えもあるんかな?」と言われたんです。

 実際に言葉として聞くと、もっと衝撃的というか、悲しさがダイレクトに心に突き刺さるのかなとも思っていたんですけど、意外なことに、自分の中に解散という言葉がすんなり入ってきたんです。「そんなバカな」という感じではなく「ま、そういうこともあるよな」と。

 なぜそうなったのか。改めて考えてみると、これまでコンビを組む時も、上京する時も、常に渚の言葉は正しかったんです。自分の中に渚の言葉への信頼感があるんだということに改めて気づきました。

 あんなキャラクターですけど(笑)、物事を深く考えているし、その渚が口に出して言ったということは、意思もかたいだろうし、とことん考えての言葉なんだろうなと。そう私も直感的に理解できたから、たじろがなかったのかなと思ったんです。

 「解散」という言葉を最初に出したのは渚でしたけど、結局、それは「尼神インター」としての答えだと思いますし、二人の出した答えだとハッキリ思えました。

 実質的にコンビの活動をせず、それぞれがピンで動くけど、コンビ名だけは残しておく。そんなパターンもあるんだとは思います。ただ、ここは渚も私も共通しているところで、中途半端なことはしないというか「やる時はやる」というのがあるんです。コンビとして稼働していないのに保険的に残しておく。それを良しとしないのも一致していたので、解散という形になったのもあると思います。

 私が吉本を退所したのも、その「やる時はやる」という思いと連動しているというか、解散という選択をしたんだったら、さらに思い切ったチャレンジをしようと思ったんです。

 高校を卒業してから吉本での世界しか知らない私が外に出て一から全てを始める。何がどうなるのか未知数だけど、一歩を踏み出す。もちろん不安もありますけど、そこにワクワクする自分もいるし、皆さんに見ていただく芸人という仕事をしている者として、その一歩が見てくださっている方へのメッセージになったらなとも思ったんです。

 今後も軸としては芸人でいたいと思っているので、自分でお笑いライブを開催してネタをするという部分はずっとやっていきたいと思っています。あと、お料理の仕事もやっていきたいし、書くことも好きなのでそれをお仕事にできたらなとも思っています。

 人生一回きり。好きなことは全部やっていってもいいのかなと今は思っています。

 渚とは解散してから連絡は取っていないんですけど、また良い形で再会できたらなと思っています。目標というか、現時点では私が勝手に思っていることなんですけど、最近(音声アプリ)Spotifyでラジオ番組を始めまして。その100回記念のゲストとして渚に来てもらえたらなとは思っています。

 週に1回の更新頻度なので、100回を迎えるのは2年後くらいになると思います。もちろん、私の仕事もその時に何がどうなっているかも分かりませんし、渚の思いも分かりません。

 ただ、前に進み続けていれば、いろいろな展開も出てくるだろうし、そんなことが起こる、起こせる自分でいられる。そのために日々積み重ねをしていけたらと思っています。

■誠子(せいこ)

1988年12月4日生まれ。兵庫県出身。NSC大阪校30期生。同期の渚と2007年に「尼神インター」を結成。24年3月末をもってコンビを解散。所属していた吉本興業も退所する。フリーの芸人として再出発し、料理家の荒谷未来さんとライフスタイルブランド「merci(メルシー)」を設立。絵本作家・むらかみさきさんの絵本「わるーいオオカミの子」を誠子がモノマネ芸を駆使しながら朗読するコラボ動画を誠子のTikTokやInstagramで配信中。また、音声アプリ・Spotifyでのラジオ「誠子食堂らじお」も展開している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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