京都の和食店オープン初日に起きた10人7万円の無断キャンセルが極めて断罪されなければならない理由

(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

ノーショーやドタキャン

昨年末に<大反響があった食の炎上事件2018年 ワースト5>という記事を執筆して振り返りを行いましたが、1年を通して最も大きな反響があったのはノーショー(無断キャンセル)やドタキャン(直前キャンセル)の問題でした。

60人という大規模なノーショーから、同席者による連続ドタキャン、近所にある小学校関係者による貸切予約のドタキャン、50人のノーショーの作り話まで、残念ながらノーショーに関する炎上が続いていたのです。

しかし、SNSで厳しい批判が相次いだり、テレビでも大きく取り上げられたりして、世の中の認識もだいぶ変わってきました。

そして2018年秋には、官民が一体となり、ノーショーやドタキャンの問題に対して指針を含んだ対策レポートが発表されたのです。

ノーショーやドタキャンの被害が改めて客観的に可視化され、消費者の意識も高められたと思います。

そのかいもあってか、2019年に入ってからは、ノーショーやドタキャンに関して大きな話題は上らず、特に記事で取り上げるような事案もなく、よい方向に向かっているかのように思えました。

オープン初日にノーショー

しかし、ここにきて気になる事件が起きたのです。

京都で新たにオープンした和食店で、いきなり「予約バックレ」被害があったと店舗ツイッターが報告し、同情と応援の声が相次いだ。

(中略)

「今日グランドオープンした当店に10人7000円の予約をしてくださいましたお客様がいましたが 時間をすぎても現れず お伺いした電話番号も偽の電話番号でした」

出典:和食店、オープン初日に「10人予約バックレ」 22歳店長「丹精込めて作ったもの全てが無駄に...」

京都にある和食店で、10人分7000円コースを注文した予約がノーショーとなりました。しかも、この和食店でノーショーが起きたのはオープン初日であり、予約時に教えられた電話番号もつながらなかったというのです。

これまで炎上してきたノーショーと同じ以上に、極めて悪質であったことから、大きな話題となっています。

不毛なノーショーやドタキャン

ノーショーやドタキャンに関して、これまで以下の記事を書いてきました。

ノーショーやドタキャンは飲食店に大きな損害を与えることになり、よくない行為であるとだいぶ理解されてきたと信じています。

しかし、完全に撲滅することは難しいものです。

では、改めて何がいけないのかを説明していきましょう。

飲食店と客に不利益

ノーショーやドタキャンによって、飲食店は大きな不利益を被ります。

予約している客を想定してコースメニューが用意されているので、その分の食材が使用されないことは確実でしょう。もしも、アレルギーや苦手な食材があって通常とは異なるメニューが提供される場合には、特別な食材を使っているだけに、コストは余計にかかってしまいます。

人件費は固定費なので、常に計上されるコストです。しかし、本来はその人件費によって他の客をサービスできたことを考えれば、遊ばせてしまった分はやはり無駄となります。

訪れることのない客が予約したせいで、他の客が予約できなかったり、ウォークインの客が入ろうとして断わられたりすれば、機会損失にもつながります。飲食店に対してだけではなく、他の客に対しても被害を与えているといってよいでしょう。

また、ノーショーやドタキャンがある程度起こってしまうと、そこで被害を受けた分を、残念ながら他の客に転嫁しなければならなくなります。他の客にも不利益を与えていることは、明白なことです。

オープン初日のノーショーやドタキャン

今回起きたノーショーは、オープン初日という特別な日でした。実はオープン初日に起きるノーショーやドタキャンは、極めて悪質なのです。

通常、飲食店が新しくオープンする際には、お祝いも兼ねて、友人や知り合いがたくさん訪れます。

近所に住んでいる人であれば、オープンすることが事前に分かっているので、予約を入れてみたり、ウォークインであっても入ってみようかと思ったりするものです。同業者が気になって訪れることも少なくありません。

しかし、ノーショーした団体客の予約が入っているために、こういった客を全て断らなければならなくなります。本来は多くの人に注目され、集客しやすいオープン初日であるのに、その機会が奪われてしまっているのです。

飲食店をオープンするには多くの費用がかかります。敷金や礼金、前家賃を支払い、内装工事を行い、厨房設備やキャッシュレジスターを設け、イスやテーブル、調度品を購入し、プレートやカトラリー、ワイングラスといったテーブルウェアなどを取り揃えなければなりません。

小さな飲食店であったとしても、初期投資費用はだいたい700万円以上かかるでしょう。

オープン景気が訪れる一方で、その好調さは1~2ヶ月を過ぎれば、ぐんと落ちていきます。そのため、オープン直後は確実に売上を積み上げていきたいものですが、ノーショーによって利益どころか損益を受けてしまっているのです。

他の日であればよいということでは決してありません。しかし、キャッシュの確保という点でも、顧客開拓という面においても、オープン初日にノーショーすることは、非常に質が悪いといえるのです。

飲食店にもできることがある

ノーショーやドタキャンは、それを行う人が悪いことはいうまでもありません。

しかし、ノーショーやドタキャンを防ぐためには、現段階では飲食店側の努力も必要であると考えています。ある程度の対価を払えば、それなりの効果があるので、飲食店には是非とも行っていただきたいのです。

ITツールを導入することによって、事前決済を行ってもらったり、顧客情報をより確実なものにしたりすることができます。事前に電話確認を行い、様子を確かめたりすることによって、予め異変を察知することもできるでしょう。

特に、ノーショーやドタキャンになってしまったら大きな被害を受けるような予約に関しては、経営者であれば極めて敏感にならなければなりません。大人数の予約であればあるほど、予約した客の様子に些細な違和感があれば、疑ってかかってみるべきです。

オープン初日の不幸

件の飲食店のオーナーも、ちゃんと確認していなかった自分にも落ち度があったと反省していました。

オープンが近くなると、あれもこれもやることが多くなり、しかも、初めてのことばかりなので、気が回らなくなります。

これまで他の飲食店で十分な修行を積んできていたとしても、自分がオーナーシェフを務める飲食店であれば、ただ料理を作っていればよいというわけではありません。

あまり得意としていない経営や販促、対外業務も行わなければならないのです。

慣れない業務と多忙が重なり、重要な予約の確認が漏れてしまったのは理解できるところではないでしょうか。

門出の日にノーショー

飲食店のオーナーは警察に被害届を提出しましたが、教えられた電話番号がつながらないこともあり、もしも故意にノーショーを行ったとすれば、立派な犯罪となるのではないでしょうか。

私はこれまで、ミシュランガイドで星を獲得している料理人から、M.O.F.を受章したシェフ、一流ホテルの総料理長や料理長に話を聞いてきましたが、多くの方が将来的には自分の店を持ちたいという夢を持っています。

日夜、心身を削ってゲストのために尽くしてきた料理人が、一世一代の決断とばかりに大きな借金を負い、全ての信用を捧げた末に、ようやく自身の店をオープンできた門出の日に、非常識なノーショーが起きたことは、残酷であるといわざるをえません。

ノーショーやドタキャンは自分に返ってくる

ノーショーやドタキャンは飲食店のみならず、客にも多大な迷惑を与えること、そして、最終手には自身に跳ね返ってくることを、ノーショーやドタキャンを行う方はよく知るべきであると思います。

今回の件は、被害届が提出された後に、どのような顛末を迎えるのか、まだ定かではありませんが、不誠実な行為を行った方は、その報いが返ってくるかもしれないことをよく認識していただきたいと感じます。