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2018年、特に印象的だったライヴ10+1

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Suchmos11/24横浜アリーナ(Photo/Kayo Sekiguchi)

2018年も、素晴らしいライヴをたくさん観させていただきました。ライヴ、フェス、イベント合わせて141本。どのライヴも、アーティストとファンの想い、そして作り手の情熱とがひとつになって、忘れられない時間を作り出し、感動を与えてくれました。その中でも特に印象的だったものをピックアップ。もちろん観ていないライヴの方が多い。そんな中、10本+1本を紹介するのも、なんだか偉そうで、申し訳ない気持ちになる。でも、いいものはいいとはっきり書き残す事で、「そのアーティストのライヴ、まだ観た事がない」という人に、少しでもアーティストの音楽、ライヴに興味を持ってもらえれると嬉しい、という想いを込めた。インディ―ズ、新人、中堅、様々なアーティストのライヴを観させてもらったが、結果的にキャリア豊富な、いわゆるビッグアーティストのライヴが並んでいる。でもやっぱり、多くの人から長年支持され続けているワケ、意味を、改めてしっかりと感じる事が大切だと思った。

サザンオールスターズ『キックオフライブ2018 ちょっとエッチなラララのおじさん』(6月26日/NHKホール)

6月26日NHKホール(Photo/岸田哲平)
6月26日NHKホール(Photo/岸田哲平)
Photo/岸田哲平
Photo/岸田哲平

年末の紅白歌合戦で、紅白の枠を超えて大トリを務め、NHKホールからその熱狂のステージを日本中に届けたサザンオールスターズ。40周年を迎えた2018年、サザンは紅白の半年前にNHKホールで初めてライヴを行った。スタジアム、ドーム、アリーナでのライヴが当たり前となっているサザンのライヴを、NHKホールで観ることができるなんて、これから先あるのだろうかと思いながら、2時間半のポップス大絵巻を、まさに瞬きするのも忘れるくらい観入って、聴き入ってしまった。このライヴの後、夏には「ロック・イン・ジャパンフェス」にも登場し、若いファンの心もしっかりつかんだ。40年間多くの人の心を潤してきたサザンのメロディと言葉は、決して色褪せない。

『終わらない青春、止まらない未来への突進力 40周年サザンオールスターズの、強靭な意志を感じたライヴ』

Suchmos『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA』(11月24日/横浜アリーナ)

11月24日横浜アリーナ(Photo/Kayo Sekiguchi)
11月24日横浜アリーナ(Photo/Kayo Sekiguchi)

初のアリーナ公演は、客席を終始極上のグルーヴで包み込んでくれ、その気持ちよさは圧巻だった。同時に強烈なメッセージを投げ続けていた。2018年は彼らのライヴを、4月の大阪オリックス劇場とパシフィコ横浜、7月の新木場StudioCoast、そして「J-WAVE LIVE SUMMER JAM 2018」(横浜アリーナ)と、かなり観た。6人が紡ぐ“囚われない音楽”とメッセージはどんな時、場所でもブレずに、貫き通す意志の強さと自信が、音に表れ、聴き手は熱狂する。

『Suchmos 熱狂の初横アリライヴ 「音楽の力を信じてるかい?俺らはそれだけでここに来たんだ」』

宇多田ヒカル『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』(12月4日/さいたまスーパーアリーナ)

12年ぶりのツアー。久々に観たということもあるが、その衝撃は大きかった。待ってくれているファンへの感謝の気持ちと、今までやってきてよかったという心からの想いを込めた歌は、例えようがないほどの熱さと清廉さを感じさせてくれた。彼女の声からは、哀しみ、強さ、弱さ、絶望、喜び…色々な感情の輪郭が、幾重にも重なっているのが伝わってくるし、見えてくるようだ。

aiko 『LOVE LIKE POP20』(11月29日/NHKホール、7月16日/大阪フェスティバルホール)

8月30日サザンビーチちがさき(Photo/岡田貴之)
8月30日サザンビーチちがさき(Photo/岡田貴之)

今年20周年を迎えたaikoの、自身過去最大規模のツアーを、東京と大阪で観た。とにかくバンドサウンドが素晴らしかっただけに、逆にピアノの弾き語りで歌う歌から伝わってくる切なさと繊細さが、心の奥深くに響いてきた。彼女はこれまで数え切れないほどの、女性の恋のシーンを描いてきた。100人いたら100通りの恋のカタチがある。でもその全ての人にaikoの歌は結びつく。aikoの物語が、色々な人達の恋の物語と繋がっている。8月30日に、サザンビーチちがさきで行った恒例のフリーライヴ『LOVE LIKE ALOHA6』も、過去最高の動員と、ますますパワーアップしているaikoのこれからが楽しみだ。

『aiko 「どうかずっと覚えていてくれますように」と歌い、思い続けた20年 さらに加速するその人気』

米津玄師『米津玄師 2018 LIVE/Fogbound』(1月9日/日本武道館)

2018年の音楽シーンの顔ともいうべき、米津玄師の年明け早々のライヴを観て「年明け早々こんなにすごいものを観ていいのだろうか」と、恐れおののいたことを、はっきり覚えている。聴こえてくる音楽も、目に入ってくるものも全てが美しく、それまで感じたことがない感覚が、脳と肌にしっかり残っている。10月に幕張メッセで行われた『米津玄師2018 LIVE / Flamingo』を観たかったとつくづく思う。

『米津玄師「LOSER」が好調 注目を集めるHondaのCM曲、ヒットのキーワードは「進取性」!?』

UVERworld 『UVERworld LIVE TOUR 2018(TAKUYA∞生誕祭 男祭り)』(12月21日/横浜アリーナ)

12月21日横浜アリーナ(Photo/鳥居洋介)
12月21日横浜アリーナ(Photo/鳥居洋介)

この日UVERworldは、13時から日本武道館で“女祭り”を、そして19時から横浜アリーナで"男祭り"を行い、一日で計47曲を全力でファンに届けた。今の彼らの勢いを示す伝説の一日となった。その“男祭り”は、男同士の遠慮のないコミュニケーションで異常な盛り上がりを見せ、ボーカルのTAKUYA∞も感極まり、涙を流していた。“男祭り”といえば、会場中のcrew(ファン)が肩を組み、涙を流しながら全員で「MONDO PIECE」を歌うシーンが印象的だが、この日も1万人を超える男共がひとつになって歌を響かせ、感動的だった。この興奮が覚めやらぬ12月25日に日本武道館で行われた、11年連続の恒例のクリスマスライヴも、例年以上に熱かった。

平井堅『Ken’s Bar 20th Anniversary Special!! vol.3』(12月24日/横浜アリーナ)

12月24日横浜アリーナ(Photo/上飯坂一、山谷佑介)
12月24日横浜アリーナ(Photo/上飯坂一、山谷佑介)

このライヴを観ながらとった取材メモに「歌の浸透圧が凄い!!」と書いてあった。平井の歌が心に染み渡る速さと、深いところまで入ってくる力が凄い、ということを言いたかったのだと思う。でもまさにそれ。オリジナルはもちろん、カバー曲もその輪郭のはっきりした声で、瞬時に独特の色に染める。とことん感動させた後は、お客さんとのやりとりで笑わせ、この押しては引く“鮮やかすぎる”メリハリは、観た人全てが虜になるはず。

三浦大知『DAICHI MIURA BEST HIT TOUR』(2月15日 /日本武道館)、”完全独演”公演「球体」(6月17日/NHKホール)

6月17日NHKホール
6月17日NHKホール

この日は、多くのゲストも駆け付け、豪華なエンターテイメントショウだった。中でも「Unlock」での菅原小春とのダンスバトルという言葉では片づけられない、オーラとオーラがぶつかり合い、内側に秘めているエネルギーをさらけ出す、果し合いのようなダンスでは、鳥肌が立った。その4か月後、NHKホールで行った『球体』は、武道館とは全く異なるコンセプチュアルで、実験的かつ冒険的な、刺激的なエンターテイメントショウだった。

『三浦大知 圧倒的なオリジナリティを追求し、観た者全てを熱狂させる、最注目の表現者の現在地』

椎名林檎『椎名林檎 ひょっとしてレコ発2018』(5月16日/ NHKホール)

緻密でスリリングなロックショウだった。極上のバンドの音、歌も含め、映像、衣装、演出に至るまで一部の隙もなく、凄みさえ感じた。生命力あふれるそのステージは、全ての人の心を揺さぶり、大きな感動を残したはず。デビュー20周年を記念してのアリーナツアー「(生)林檎博’18 -不惑の余裕-」を見逃してしまったのが、心残り。

エレファントカシマシ『エレファントカシマシ30th ANNIVERSARY TOUR “THE FIGHTING MAN”SPECIAL ド・ド・ドーンと集結!! ~夢の競演~」(3月18日/さいたまスーパーアリーナ)

エレカシ、スピッツ、Mr.Childrenというまさに夢の競演。共演ではなく競演という意味が伝わてくるライヴ。エレカシ30周年、スピッツは2017年に結成30周年を迎え、Mr.Children はデビュー25周年と、流れの速い音楽シーンの中で、第一線を走り続けているカリスマバンドの競演から生まれるエネルギーは、凄まじい。スピッツ、Mr.Childrenのエレカシ愛、リスペクトする気持ちが溢れていた、素晴らしい時間だった。

小田和正『ENCORE!! Kazumasa Oda Tour 2018』(8月8日武蔵野の森総合スポーツプラザ)

1月9日大阪城ホール(Photo/菊池英二)
1月9日大阪城ホール(Photo/菊池英二)

先日終了した、約40万人を動員したツアーの真夏の公演。9月で71歳になった御大の声は全く変わることなく、さらに豊潤さと瑞々しさが増しているように感じた。オフコース時代の曲から新曲まで、幅広いセットリストで、老若男女、幅広い層のファンを喜ばせた。3時間、30曲、そのサービス精神には頭が下がる。さらにこの追加公演が発表された。『Kazumasa Oda Tour 2019 “ ENCORE!! ENCORE!!“』と題して5月14日横浜アリーナを皮切りに、6月27日さいたまスーパーアリーナまで、全国5会場で10公演を行い、約10万人を動員する。今年もまた元気な歌声を届けてくれる。

『スタートから17年 『クリスマスの約束』の根底に流れる、小田和正の熱い想い』

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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