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Creepy Nuts 話題のドラマ“ふてほど”終了後も、主題歌「二度寝」にますます集まる注目

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

Creepy Nuts初の両A面シングル「二度寝 /Bling-Bang-Bang-Born」が絶好調

3月20日に発売されたCreepy Nuts初の両A面シングル「二度寝/Bling-Bang-Bang-Born」が、4月11日発表の「オリコン週間合算シングルランキング」(CDの売上枚数、デジタルダウンロードのDL数、ストリーミングの再生数を合計したランキング)で2週連続1位を獲得するなど、その勢いが止まらない。1月7日に配信リリースされた「Bling-Bang-Bang-Born」(TVアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』OPテーマ)は“BBBBダンス”のバイラルな相乗効果もあって、全世界累計2億回再生を記録している――ということが大きなニュースにもなった。世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化したビルボードの “Global Japan Songs Excl. Japan”では史上初の12連覇(集計期間2024年3月29日~4月4日)と、その記録をさらに伸ばしそうな勢いだ。

話題のドラマ『不適切にもほどがある!』の主題歌「二度寝」。ドラマ終了後も注目を集める

一方の「二度寝」も、4月10日公開のBillboad Japanダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”(集計期間4月1日~7日)で1位の「Bling~」の次ぐ2位と絶好調だ。1月クールのドラマで特に注目を集め、4月5日に最終回を迎えた『不適切にもほどがある!』の主題歌として、ドラマの内容とリンクしたリリックも大きな話題になりドラマを盛り上げ、最終回には2人も出演した。

『不適切にもほどがある!』は主演・阿部サダヲ、宮藤官九郎オリジナル脚本のヒューマンコメディーで、昭和のダメおやじ・体育教師の小川一郎(阿部サダヲ)が1986(昭和61年)から2024(令和6)年にタイムスリップし、その不適切な言動が、日々変化をしていくコンプライアンスでがんじがらめになった令和を生きる人々に考えるヒント、気づきを与えてくれ、老若男女、幅広い世代から絶大な支持を得た。

初の両A面シングル「二度寝 / Bling-Bang-Bang-Born」(通常盤/3月20日発売)
初の両A面シングル「二度寝 / Bling-Bang-Bang-Born」(通常盤/3月20日発売)

R-指定が手がけた、「浦島太郎」「桃太郎」「花咲か爺さん」などの昔話のモチーフを散りばめ、“正しさ”の物差しさえ日々変わっていく、あらゆることやものの捉え方が目まぐるしく変わり続けていくこの時代を、 シニカルにそして遊び心いっぱいに表現したリリックが痛快だ。

R-指定の鋭く優しい眼差しが伝わってくる、痛快で、愛、優しさが詰まっているリリック

それはただの温故知新という意味で伝わってくるのではなく、昭和の親父が今の時代にやって来てあまりの変化に戸惑うというドラマの内容と呼応して、この目まぐるしく変化し、かつ、殺伐としたこの時代を生きる人間同様、昔話もアップデートを余儀なくされるものだ、という捉え方からR-指定の鋭い眼差しが伝わってくる。そして鋭さだけではなく、ドラマの根底を流れる子供や孫、家族というものに対する愛、優しさがリリックには詰まっている。子供にアップデートさせた昔話を、自身の失敗を経て得た経験を踏まえて読み聞かせているような、そんな優しい空気感さえ感じる。

ドラマに大きな刺激を与えた「二度寝」

時空の変化が大きな流れとしてドラマの中に存在したが、主人公の“昭和のおじさん”の代表のような市郎が時代を行き来し、その走り回る姿には現代の、令和の音楽が不可欠だった。今を生きる人に届けなければいけないからだ。令和を代表するアーティストの一組・Creepy Nutsが生むバウンシーでBPMが速いトラックに、ドラマの解像度をあげながらもきちんと“伝わる”、情緒も感じさせてくれる日本語を超絶ラップで畳みかける「二度寝」は、ドラマに大きな刺激を与えた。

DJ松永が作り上げた“グッドリズム”のトラックは、どこまでも軽快でキャッチーで、爆発力と共に切なさを連れてくる

DJ松永が作り上げたこのジャージークラブのビートがベースになっているトラックは、どこまでもポップで軽快、キャッチーでエモく、リリックから生まれるリズムとビートが相まって、さらにその超絶的なラップスキルによって、心の深いところまで突き刺さってくる。そしてその爆発力の中に、切なさを連れてくる。哀愁さえ漂ってくるこの曲はライヴはもちろん、春・夏フェスの夕暮れ時に聴きたいと思わせてくれる。聴き継がれる名曲が誕生した。

全国ツアー開催中。6月23日横浜アリーナでの追加公演が決定

昨年秋にリリースされた「ビリケン」、そして「Bling-Bang-Bang-Born」も「二度寝」も、自然と、迷いなく身を委ねることができる“グッドリズム”が貫かれ、軽快さに夢中になりキャッチされた聴き手は刺激的なリリックの虜になってしまい、何度もCreepy Nutsの音楽を体感、体験したくなる。現在開催中の全国ツアー『Creepy Nuts ONE MAN TOUR 2024』、そしてその追加公演として発表された6月23日の横浜アリーナ公演で、Creepy Nutsが生む“熱狂”を“食らって”、これまで感じたことがなかった新しい感情にまみれるという体験をしてみてはどうだろうか。

Creepy Nutsオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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