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米津玄師「LOSER」が好調 注目を集めるHondaのCM曲、ヒットのキーワードは「進取性」!?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/Jiro Konami

米津玄師「LOSER」、1年半前の作品がHondaのCM起用され、ダウンロード、MUSIC VIDEO再生回数が急伸

6月4日付のBillboard JAPANチャート“Download Songs”(集計期間:2018年5月21日〜5月27日)が発表され、米津玄師の「LOSER」が1位、「Lemon」が2位と1、2フィニッシュを飾った。

5thシングル「LOSER/ナンバーナイン」(2016年9月28日発売)
5thシングル「LOSER/ナンバーナイン」(2016年9月28日発売)

「LOSER」は、米津玄師が2016年9月28日にリリースした両A面シングル「LOSER / ナンバーナイン」と、最新アルバム『BOOTLEG』(2017年11月)に収録されているが、5月17日からオンエアがスタートしたHonda「JADE」のCMソングとして、発売後約1年半を経て起用され、MUSIC VIDEOの再生回数も8750万回(6月4日現在)を超えるなど、元々注目されていた作品で、ロングセールスになっていたが、ここにきて急伸してきたのは、やはりCMを通して、多くの人の耳に届いていた事を証明している。「LOSER」のCMソング起用に関しては、CMオンエアスタート直後からネット上で「ホンダ、センス良すぎ」という声が飛び交っている。

「LOSER」の起用理由

今回「LOSER」の起用にあたりHondaサイドは、「新しいJADEでは、「NEW STYLE WAGON」をコンセプトに、ガソリン車とハイブリッド車に2列シート5人乗り仕様を追加。新CMの楽曲選定にあたっては実際に乗った方に感じて頂きたい「NEW LIFE」「NEW STYLE」をシンボリックに印象付ける存在が必要だと考えておりました。本楽曲は、"LOSER(負け犬)"と表現しながらも、自らを前へと突き動かす歌詞が多くの支持を集めており、躍動感のある曲調、ハイブリッドなビートも相まって新しいJADEのメッセージに共鳴するものがある、と考えました。特に、街中から海沿いのホテルまで気持ちよく走るJADEの疾走感やドライブ感を表現するのに最適である、という観点から本楽曲を起用させて頂きました」とコメントしている。

ONE OK ROCK、Suchmos、Nulbarich、米津玄師…HondaのCMにおける音楽へのこだわり、進取性に集まる注目

Hondaは以前から、CMにおける音楽に対してのこだわり、志の高さ、そして“進取性”に富んだ精神を感じさせてくれる。その“進取性”が脈々と受け継がれている気がする。車のCMソングというと、その時流行っているアーティストや音楽、そしてスタンダードナンバーをそれぞれのターゲットを鑑みながら使用している事が多い。しかしHondaは昨年の「VEZEL」のCMソングにSuchmosの「STAY TUNE」を起用し、大きな注目を集めた。音楽ファンの間では人気が出てきている、これからお茶の間に広がっていきそうなアーティストと楽曲を起用する、その"進取性"こそが真骨頂である。

2018年も「HondaJet」×ONE OK ROCK「Change」、「VEZEL」×Suchmos「808」、「GRACE」×Nulbarich(ナルバリッチ)「NEW ERA」、そして「JADE」×米津玄師「LOSER」というラインナップでCMを展開。ONE OK ROCKは日本が世界に誇るバンドになりつつあるが、Nulbarichは、2016年に登場するやいなや、感度のいい音楽ファンから絶賛され、今年も各地で行われる音楽フェスで引っぱりだこのバンドで、現在急速に認知が広がっている。

その登場は、音楽シーンに衝撃を与えた、カリスマ性を湛えたニューヒーロー・米津玄師

8thシングル「Lemon」(3月14日発売)
8thシングル「Lemon」(3月14日発売)

米津玄師は、2009年からニコ動をホームグラウンドに活動をスタートさせ、VOCALOIDシーンの中では、日本だけではなく世界からも注目される存在になった。2012年から本名で作品をリリースし始め、作詞・作曲・アレンジ・プログラミング・歌唱・演奏・ミックスの他にも、動画・アートワークも独りで制作するという、その驚異の才能は、音楽シーンに久々に現れた、カリスマ性を湛える、まさにアーティストとして、その存在感を大きくしてきた。最新シングル「Lemon」(TBS金曜ドラマ『アンナチュラル』主題歌)は「"史上最速”100万DL達成作品」として、日本レコード協会から認定されている。

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「LOSER」は約1年半前の作品だが、Hondaサイドのコメントにもあるが、躍動感あふれる楽曲が、颯爽と走る「JADE」の姿にハマっていて、楽曲と車の見せ方の相乗効果で魅力的なCMに仕上がっている。「NEW LIFE」「NEW STYLE」というコンセプトと、音楽シーンに登場したニューヒーローであり、スーパースターへの道をつき進んでいる米津玄師の存在とが、マッチしたということだろう。今回のマッチングの妙がもたらす衝撃は、商品にも、そしてアーティストにも、大きな効果をもたらすに違いない。

米津玄師オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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