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23年映画興収1位は実写『キングダム』、アニメ『スラムダンク』 『ミステリと言う勿れ』も大健闘

武井保之ライター, 編集者
筆者作成

 2023年の年間映画興収は、2022年の2131億円から前年比105〜110%ほどの2300億円前後となることが見えてきた。コロナ後から一昨年、昨年と年間興収を伸ばしてきたが、今年も前年超えを達成。2019年の歴代最高興収(2611億円)を上回ることはできなかったが、その9割弱まで戻した。

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100億円超えはアニメ3本 『君たちは〜』はとどかず

 作品ごとに見ると、今年の100億円超え作品は3本となり、すべてアニメ(昨年はアニメ3本、実写1本の計4本)。上半期に公開された『THE FIRST SLAM DUNK』(157億円)、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(140.2億円)、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(138.3億円)が興行シーンを大きくけん引した。

 宣伝を一切しないことでも話題になった宮崎駿監督10年ぶりの新作となるスタジオジブリの『君たちはどう生きるか』は86.1億円。上映は現在も続いており、ニューヨーク映画批評家賞のアニメ映画賞を受賞したほか、第81回ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞にもノミネートされた。海外公開でのヒットや高評価のニュースも伝えられており、この先もじわじわと積み上げていくことが期待される。

 もし、アカデミー賞の長編アニメーション映画賞に絡んでくれば、さらなる伸びも期待できるだろう。劇場上映は来年も続く予定。世界的評価と国内の成績をどこまで伸ばすか注目される。

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テレビ局映画が大健闘、邦画実写が興行を底上げ

 実写では、テレビ局製作映画の大ヒットが興行を大きく底上げした。近年では10億円でヒットと言われるなか、集英社と日本テレビが製作委員会に入り、東宝とソニー・ピクチャーズが配給する大作『キングダム』シリーズ第3作『キングダム 運命の炎』が、56億円の大ヒットで実写No.1となった。

 シリーズ作品は、シリーズを重ねる毎に興収が落ちていくのが一般的だが、本シリーズは2019年の第1作『キングダム』(57.3億円)から、2022年の第2作『キングダム2 遥かなる大地へ』(51.6億円)、今作とシリーズを通してほぼ変わらない興収を維持し、前作から今作では伸ばしている。

 原作人気だけではなく、映画作品としての映像演出、ストーリー、キャスト陣の演技が融合したクオリティの高い作品性が評価を受けている証だろう。シリーズ第4作の製作がすでに発表されているが、さらなるヒット規模の拡大と長期シリーズ化への期待がかかる。

 大きな期待と注目が集まるなか公開されたゴジラ生誕70周年記念作品であり、日本製作実写版ゴジラ30作目となる『ゴジラ −1.0』は、50億円以上が確実。しかし、『シン・ゴジラ』(82.5億円)まではとどかなさそうだ。

 本作は、北米での記録的大ヒットが伝えられているが、全世界興収としては100億円超えも夢ではないかもしれない。日本が世界に誇るIPがどこまでのグローバルヒットになるか注目される。

 ドラマ映画で久々の大ヒットとなったのが、『ミステリと言う勿れ』(47.4億円)と『劇場版 TOKYO MER~走る緊急救命室~』(45.3億円)。2作とも連続ドラマ放送中から話題性も人気も高かったが、近年のドラマ映画の多くが興行的に振るわなかったなか、ドラマの内容次第で映画館にしっかりと観客を呼ぶコンテンツであることを改めていまの時代に示した。

 近年、苦戦を強いられてきた邦画実写だが、今年は大手映画会社の大規模作品が大きく興収を伸ばし、興行全体を底上げする結果になった。一方、洋画および邦画でも独立系映画会社の小規模作品が置かれる苦境は変わっておらず、大ヒット作との格差は広がっている。長年の課題はそのままだ。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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