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アジア最大は東京国際映画祭か釜山国際映画祭か【1/2】

武井保之ライター, 編集者
『第36回東京国際映画祭』レッドカーペットセレモニー(C)2023 TIFF

 例年ほぼ同じ時期に開催される東京国際映画祭(TIFF)と釜山国際映画祭(BIFF)。ともにアジア最大をうたう2つの国際映画祭が10月に開催され、盛況のうちに幕を閉じた。

 今年の両映画祭をデータで比較してみる。

<第36回東京国際映画祭>

2023年10月23日〜11月1日(10日間)8劇場11スクリーンで上映

上映作品数219本

動員数:7万4841人

主なゲスト:ヴィム・ヴェンダース(審査委員長)、トニー・レオン、チャン・イーモウ、トラン・アン・ユン、ジャ・ジャンクーなど

(韓国映画の招待作品はゼロ)

<第28回釜山国際映画祭>

2023年10月4日~13日(10日間)4劇場25スクリーンで上映

上映作品数209本(Community BIFF上映60本を除く)

動員数:14万2432人

主なゲスト:チョウ・ユンファ、リュック・ベッソン、ファン・ビンビンなど

主な日本からのゲスト:是枝裕和監督、濱口竜介監督、岩井俊二監督、石井裕也監督、宮沢りえ、井浦新、田中麗奈、杉咲花、アイナ・ジ・エンド、松村北斗など

(日本映画の招待作品は国際合作も含めて16本)

※韓国スターが艶やかに彩る釜山国際映画祭の行方

 開催日数は同じであり、上映作品数もほぼ変わらない。一方、BIFFは上映作の座席の82%が埋まっており、動員数では差が開いた。

 両映画祭会場の様子を比べると、そのにぎわいぶりの違いは歴然としていた。BIFF会場には、日本の夏フェスを楽しむ若者たちのような、映画祭を楽しむ若い層の雰囲気がある。監督やキャストが集う年に一度の映画イベントを楽しもうという活気とにぎわいに満たされる。エンターテインメントにおける映画の位置づけが国民性の違いとして表れている。

 また、映画好きが多い韓国には、日本映画ファンも多い。例年多くの日本映画がBIFFに招待され、今年もゲストとして参加した日本人監督、俳優は大きな歓声を受けた。一方、今年のTIFFへの韓国映画の招待作品はゼロだった。

 そこへの見解をKOFIC(韓国映画振興委員会)のパク・キヨン委員長に聞くとこう答える。

「今年のTIFF招待作品に韓国映画がありませんでしたが、TIFFはいくつかの作品を招待しようとしており、BIFFも出品したい2作を選出していました。しかし、日本配給権を得ている映画会社からTIFFでの上映許諾を得られませんでした。この問題については、TIFFチェアマンの安藤裕康さん、プログラミング・ディレクターの市山尚三さんと解決策を話し合っています」

 過去のTIFFには毎年数本は韓国映画が出ていたので、今年が例外と言えるだろう。ただ、日本では映画ファンを除く一般層のTIFFへの関心は薄く、それが動員数にも表れている。海外の映画会社にとっての“TIFFに招待されるメリット”をどう作っていくかが課題になっている。

 両映画祭を見てきた映画会社33 BLOCKSのプロデューサー・李相美氏は、TIFFとBIFFのそれぞれの特徴として「BIFFは世界の多様な作品がラインナップされた作品数でしょうか。TIFFは選りすぐりの作品と映画に関するイベントが多様に行われるところだと思います」とコメントする。

 そんな両映画祭がともに盛り上がり、アジアの映画シーンをけん引していくことが期待される。

【2/2】「映画興行の明暗 日本は好調、前年超えほぼ確実 深刻不振の韓国は9月で前年比52%」へ続く

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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