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海自もがみ型護衛艦7番艦「によど」進水 艦名は仁淀川に由来 もがみ型は12隻で終了し新型FFMへ

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
9月26日に進水した海上自衛隊のもがみ型護衛艦7番艦「によど」(三菱重工業提供)

海上自衛隊の新型3900トン型護衛艦である「もがみ型」7番艦の命名・進水式が9月26日、三菱重工業長崎造船所(長崎市)で行われた。「によど」と名付けられた。

海上幕僚監部広報室によると、艦名は四国の愛媛、高知両県を流れる一級河川の「仁淀川」に由来する。艦名は海上自衛隊内での募集検討を経て、木原稔防衛相が決定した。艤装やさまざまな性能試験を経て、2024年度中に就役する予定だ。

この名を受け継いだ日本の艦艇としては、海自のちくご型護衛艦7番艦に続き、2代目となる。初代によどは1974年に就役し、1999年に除籍となった。日本海軍時代にも大淀型軽巡洋艦2番艦として「仁淀」が予定されていたが、対米開戦によって建造中止となった。

●もがみ型は12隻で終了、新型FFMを12隻建造へ 

防衛省は8月、もがみ型護衛艦「FFM」の能力向上型となる新型FFMを計12隻建造すると公表した。

もがみ型は年2隻というハイペースで建造が進められ、当初は計22隻が建造される計画だった。しかし、もがみ型は今年度予算の令和5(2023)年度計画艦までの計12隻で建造を終了する。令和6(2024)年度計画艦からは新型FFMが建造されることになる。来年度予算では2隻の建造に1747億円を要求した。令和10(2028)年度に配備される予定だ。8月25日に新型FFM建造の主契約者と決まった三菱重工業の概要提案は以下のイメージ図のようになっている。

新型FFMに関する三菱重工業の概要提案。防衛省は8月25日、主契約者に三菱重工業、下請負者にジャパンマリンユナイテッドをそれぞれ選んだ(防衛省資料)
新型FFMに関する三菱重工業の概要提案。防衛省は8月25日、主契約者に三菱重工業、下請負者にジャパンマリンユナイテッドをそれぞれ選んだ(防衛省資料)

(新型FFMの詳細については、関連記事「海自新型FFMは12隻を建造へ 2024年度防衛予算概算要求の主な注目点」をご参照ください)

●海自護衛艦として初の対機雷戦能力

「もがみ型」は、多様な任務への対応能力を向上させた新型の多機能護衛艦(FFM)だ。FFはフリゲートの艦種記号で、これに多目的任務対応(multi-purpose)と機雷戦(mine warfare)を意味するMが加えられた。海自護衛艦としては初めて機雷戦能力を有する多目的艦だ。

「もがみ型」は軍事力増強を続ける中国の海洋進出をにらみ、全長1200キロに及ぶ南西諸島を中心に日本の海上防衛の一翼を担う次世代の主力艦となる。増大する平時の警戒監視活動に加え、対潜戦、対空戦、対水上戦、機雷戦など多機能性を有していることが最大の特徴だ。

東シナ海や西太平洋など日本周辺で中露艦艇の示威活動が激しさを増す中、「もがみ型」は平時の警戒監視活動を手厚くして軍事的な空白地域を埋める。そして、有事には対潜戦、対空戦、対水上戦などの各種作戦を組み合わせて対処する構えだ。

海上幕僚監部は「FFMは従来は掃海艦艇が担っていた対機雷戦機能も備える」と強調する。機雷掃海能力や対潜能力は、アメリカ海軍が海自にとりわけ期待する分野でもある。

もがみ型護衛艦1番艦もがみ。もがみ型は船体表面の凹凸を減らし、敵の対艦ミサイルなどに探知されにくいステルス性の形状を備える(海上自衛隊横須賀地方隊撮影)
もがみ型護衛艦1番艦もがみ。もがみ型は船体表面の凹凸を減らし、敵の対艦ミサイルなどに探知されにくいステルス性の形状を備える(海上自衛隊横須賀地方隊撮影)

●ステルス護衛艦

「もがみ型」は基準排水量が3900トン。全長133メートル、全幅16.3メートルと、従来の護衛艦と比べて船体をコンパクトにし、乗員数も通常型の汎用護衛艦の半分程度の約90人に抑えた。このうち、女性自衛官は10人となり、女性自衛官の居住区画も整備された。また、護衛艦としては初めて「クルー制」を導入する。複数クルーでの交代勤務の導入などによって稼働日数を増やすことを目指している。建造費は7番艦と8番艦をあわせて令和3年度予算で947億円。

「もがみ型」は対艦ミサイルなどに探知されにくいステルス性の形状を備え、魚雷発射管やミサイルなどの電波を受けやすい機器を艦内に格納する。船体もロービジビリティ(低視認性)を重視した灰色と化しており、レーダーに映りにくい「ステルス護衛艦」とも称されている。

●海自護衛艦として初の複合機関CODAGを採用

もがみ型の速力は30ノット(時速約56キロ)以上。主機関としては、海自護衛艦として初めてガスタービンとディーゼルを併用する複合機関のCODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)を採用した。巡航時など通常はディーゼルを使用し、急加速時や高速時はガスタービンを併用する。ガスタービンエンジンはイギリスのロールス・ロイス社から川崎重工業がライセンスを得て製造したMT30を1基搭載。MT30は海自護衛艦では初採用となった。ディーゼルエンジンはドイツのMAN社製の12V28/33D STCを2基搭載している。軸出力は7万馬力。

主要兵装としては、三菱重工業製の新型の17式艦対艦誘導弾(SSM-2)の4連装発射筒を2基、短射程艦対空ミサイルのRAMブロックIIA(RIM-116C)を使用する近接防御火器システム(CIWS)11連装発射のレイセオン製の対艦ミサイル防御装置(SeaRAM)を1基、12.7ミリ重機関銃M2を射撃できる日本製鋼所製のRWS(リモートウェポンステーション)である遠隔操作式無人銃架を2基、BAEシステムズ製の62口径5インチ(127ミリ)単装砲を1基、ロッキード・マーティン製のMk41垂直発射装置(VLS)を1基(16セル、搭載弾薬はアスロック)それぞれ搭載する。VLSは後日装備となる。竣工時からVLSが設置されているのは令和5年度計画艦からとなる。

また、対潜水艦戦用としては、NEC製ソナーシステム「OQQ-25」や324mm魚雷発射管2基を装備し、SH-60K哨戒ヘリコプター1機を搭載する。

●従来の護衛艦にない新装備のUSVとUUV

さらに、対機雷戦用として、日立製のソナーシステム「OQQ-11」を搭載。機雷の敷設された危険な海域に進入することなく、機雷を処理することを可能とする無人機雷排除システム用の無人水上航走体(USV)1艇と無人水中航走体(UUV)を1機装備する。USVとUUVは従来の護衛艦にない新装備となる。USVは後日装備となる。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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