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海自哨戒ヘリ墜落事故、艦長経験者「任務増加が訓練機会や訓練期間を圧迫」と問題視

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
護衛艦かがの飛行甲板上に駐機する対潜哨戒ヘリSH60Kシーホーク(写真:ロイター/アフロ)

海上自衛隊の対潜哨戒ヘリコプターのSH60Kシーホーク2機が深夜の訓練中に墜落した。海自は行方不明の7人の隊員の捜索を続けるとともに、事故調査委員会を設け、事故原因の特定を急いでいる。

今回の海自ヘリ2機の墜落は、幹部が部隊の技量を確認する「査閲」の最中に事故が起きていたことが分かっている。また、NHKの報道によれば、2機は事故当時、互いの位置情報などを共有する「僚機間リンク」と呼ばれるシステムで結ばれていなかった問題点が指摘されている。

●「任務増加が訓練期間を圧迫」

今回の事故に関連し、海自の艦艇艦長経験者のベテラン隊員は筆者の取材に対し、北朝鮮による相次ぐミサイル発射への対応や、中国公船が領海侵入を繰り返す沖縄県の尖閣諸島周辺での警戒監視活動の強化など、海自隊員の任務の増加が訓練機会や訓練期間を圧迫している問題点を指摘した。

同隊員は「任務の増加が訓練機会や期間を圧迫していることは、長年海自では問題視されている」と強調した。

そして、米海軍でもかつて横須賀を母港とする第7艦隊で事故が相次いだ際に、第15駆逐戦隊(デスロン15)の司令官が更迭されたが、それも訓練期間短縮によるものではないか、と巷間言われている歴史的事実を指摘した。

●人手不足のしわ寄せが現場に

中国が日本列島周辺で海洋進出を強める中、海自は近年、海自単独の訓練以外にも海上保安庁や諸外国との海上での共同訓練をぐっと増やしている。

「人手不足の中、そのしわ寄せが海自の現場に押し寄せているという見方は正しいか」との筆者の質問に対し、前述の海自ベテラン隊員は「間違いではないと思います」と明確に答えた。

2023年版防衛白書によると、実際に自衛隊の多国間共同訓練への参加実績は2013年度が19回だったのに対し、2022年度はその2倍以上の43回に及んでいる。中でも自衛隊と米軍の主な共同訓練は急増している。2013年度が24回だったのに対し、2022年度は108回に達した。つまり、この10年間に4.5倍も日米共同訓練が増えたことになる。

こうした多忙な現場環境が、高度な技術を必要とする今回の夜間の対潜戦訓練に悪影響を与える面ははたしてなかったのだろうか。

●海上自衛官定員は10年間で224人減

海上自衛官の現員は2023年3月末時点で4万3106人で、定員4万5293人に対する充足率は95.2%にとどまっている。これに対し、10年前の2013年3月末時点の現員は4万2007人で、定員4万5517人に対する充足率は92.3%だった。この10年間で充足率は上昇したものの、定員が4万5517人から4万5293人へと224人減ったことになる。

政治家は、与党も野党も党派を超えて自衛隊の人手不足に真剣に取り組むべきだ。政争の具にすることなく、自衛隊員の命を守るための対策を尽くさねばならない。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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