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コメント力の高いアギーレの久保評を耳にすると、日本代表監督復帰を願いたくなる

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 マジョルカは先月末、降格の危機にあるチームの立て直しを図るため、ルイス・ガルシア・プラザ監督を解任。後任にバスク系のメキシコ人、ハビエル・アギーレを迎えた。

 チームには日本人が期待する久保建英がいる。元日本代表監督が、日本メディアにサービス精神を発揮したとしても不思議はない。現地から送られてくる監督の久保評は確実に増えている。日本のメディアにとっては歓迎すべき話である。久保が、ページビューが見込める訴求力の高い選手であるのに対し、アギーレは日本通だ。八百長への関与を疑われ、およそ半年で解任の憂き目に遭ったが、監督として評価が低かったわけではない。久保の評価に一聴の価値を感じさせるような爪痕を、日本に残していた。

 実際、端々からうかがえるサッカー観を耳にすると、その真っ当な言葉にホッと安堵させられる。なるほどと頷きたくなる納得感のある言い回しだ。的確なコメントに、サッカー脳の確かさ、賢さが覗く。残念ながら、日本の監督やその予備軍であるテレビ評論家、解説者には拝みにくい言語能力である。本場と日本の差をそこに見る気がする。

 日本代表就任会見で、使用する布陣を訪ねられると「臨機応変に」と曖昧な言葉を発し、その場をやり過ごそうとした森保一監督とは、偉い違いである。サンフレッチェ広島時代、一貫して3-4-2-1で戦ってきた監督が、日本代表監督に就任すれば、攻撃的サッカーをコンセプトに掲げてきた日本サッカーの方向性は危ぶまれる。そこがメディアの一番の関心事で、森保監督もその手の質問を投じられることは、承知していたはずである。にもかかわらず、質問者を納得させる言葉を用意できなかった。

 もしアギーレが、森保監督の立場だったら、さぞや納得感の高いコメントを返していたはずである。アギーレは就任記者会見で採用する布陣まで口にした監督だ。記者から質問されたわけでもないのに、率先して「4-3-3」、「攻撃的サッカーで行く」と宣言している。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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