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10人になっても4-4-1を貫いた日本と、5バックで日本に臨んできた韓国。真の勝者に輝くのは

杉山茂樹スポーツライター
(写真:REX/アフロ)

 中国、UAE、韓国を相手に2勝1敗。U-23アジアカップで日本は準々決勝進出を決めた。3戦ともとりわけ監督采配という点において見どころの多い試合だった。

 1-0で迎えた前半17分、西尾隆矢がレッドカードで退場するハプニングが起きた中国戦では、そこから10人でどう戦うかに注目が集まった。選択肢は大きく分けて2つ。それまで通り前からプレスを掛けに行くか。あるいは後方に多く人を配し、ゴール前を固めるか。試合展開は監督の判断1つで大きく変わる。大岩監督は大きな選択を迫られることになった。

 具体的には4-3-3で戦ってきた布陣をどう変えるかである。4-3-3に最も近い布陣は4-2-3だが、10人でこの態勢を維持するのはさすがに難しい。4-4-1が考えられる限りにおいて最も4-3-3寄りの布陣になる。

 逆に後ろを固めようとすれば、5バック(5-3-1)がわかりやすい選択肢になる。相手に主導権を渡すことを辞さない戦法でもあるので、圧を受けやすいサイドでウイングバックが高い位置を維持する3バック(3-5-1)にはなりにくい。

 4バックでも4-4-1以外に、両ウイングを置かない4-3-2という選択肢がある。しかしこちらも5-3-1同様サイドで数的不利を招くので、主導権を奪われやすい。守備的な布陣と言える。

 大岩監督の選択は4-4-1だった。両ウイングを残し、相手の両サイドバック(SB)にプレッシャーを掛けようとする態勢を維持した。

 相手の4バックで攻撃参加を仕掛けるのは9割方SBだ。SBとウイングはプレッシング=攻撃的サッカーを象徴する攻防になる。中国戦ではその要素が最後まで失われることなく進行した。

 後半の頭からとか、勝利が目の前にちらつけばちらつくほど後ろで守りたくなるものだ。それが日本サッカーの常識だろう。なによりA代表監督がそれを「賢くしたたかな戦いだ」と称し、好んで後ろを固めようとする。

 西野朗前監督もしかり。ハリルホジッチからバトンを受け継ぐと、残り2ヶ月しかないというのに、それまで「ハリルホジッチが試してこなかったから」と、最初で最後となった国内でのテストマッチ=ガーナ戦で、当たり前のように3バック(5バック)を試している。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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