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【99人→34人】メンバー激減のAKB48が向かう先──K-POPに相対化されたJ-POPアイドル

松谷創一郎ジャーナリスト
画像はイメージです(AI素材を使って筆者作成)。

激減したAKBメンバー

 1月11日、ブルーノ・マーズが東京ドームでコンサートをおこなった際、AKB48の「ヘビーローテーション」を披露して注目された。

 日本のファン向けのサービスだったと思われるが、この曲が選ばれたことにも十分な根拠はある。2010年に発表された「ヘビーローテーション」は一般にも浸透し、AKB48の人気をよりたしかなものとすることとなった。

 だがそれから14年が経った現在、AKB48の存在感は薄い。話題となるのも、たいていはメンバーの卒業発表だ。今年に入っても、11日に佐々木優佳里が卒業を発表し、26日にはIZ*ONEでも活躍した本田仁美が卒業コンサートをおこなったばかりだ。

 実際、コロナ禍以降にメンバーは大幅に減っている。3年前の2021年1月には99人いたが、現在(2024年1月28日)は34人にまで減った。さらに年内に卒業を予定しているメンバーは9人にも及ぶ。

 AKB48は、終焉に向かっているのだろうか──。

チャートを〝ハッキング〟

 2005年12月、AKB48は前田敦子や高橋みなみなど20人でスタートした。東京・秋葉原に常設のAKB48劇場を構え、「会いに行けるアイドル」をコンセプトとしていた。だが、そこからブレイクするまでには3年ほどの期間を要することになる。はじめて出場した2007年の『紅白歌合戦』も、特設された「アキバ枠」としてだった。

 本格的なブレイクはCDセールスが10万枚を超えた2009年頃からだろう。はじめてCDシングルチャートで1位を獲得したのも、この年の10月に発表したメジャー14枚目の「RIVER」だった。そして翌2010年10月に「ヘビーローテーション」が大ヒットする。最盛期はこの頃から指原莉乃が総選挙で3連覇を果たした2017年頃くらいまでだ。

 だが、この期間はポピュラー音楽の停滞・混乱期でもあった。産業的に右肩下がりのなか、CDに握手券などを封入する特典商法、いわゆる「AKB商法」でAKB48は存在感を高めていった。それを成立させたのは、オリコンが2018年末までCDのみのランキングを続けていたからでもある。ファンに複数枚購入をさせる〝推し活〟で、「音楽以外の価値」を強めていったのである。

 AKB48は、硬直した音楽チャートを合法的に〝ハッキング〟して人気を拡大していった。

年間シングル売上はコロナ前の87%減

 だが2010年代中期からストリーミングサービスが浸透し、同時に複数の音楽メディアを複合したビルボードチャートが価値を高めることによって、AKB48の〝人気錬金術〟は徐々に機能不全となっていく。CD売上でチャートをハッキングできなくなったからだ。

 さらにその後、指原莉乃や宮脇咲良など人気メンバーが離脱し(2018年)、メンバーがファンに暴行されるNGT48の不祥事が発覚(2019年)、そして新型コロナが直撃した(2020年)。この4つの要因によって急激にAKB48は弱体化した。11年連続で出場していた『紅白歌合戦』に落選したのも、2020年のことだった。

 握手会を開くことができないコロナ禍では、1年半ものあいだCDシングルを発売できず、他の48グループのメンバーがAKBに加わることもなくなった。それによってCDシングルの初週販売枚数も、コロナ禍直前(2020年3月)は約117万枚だったが、コロナ禍移行はその3分の1の35万枚前後で推移している。しかも、発表頻度も2018年までは年4枚ペースだったが年2回となった。

 CDシングルの初週販売枚数だけで年間の累計を比較すれば、2023年は2018年比で87.3%減(69.5万枚:543.1万枚)となる。CDシングル売上の9割近くが消えたことになる。

筆者作成。
筆者作成。

このままだとメンバーは25人に

 メンバーも減り続けてきた。最多だった2014年5月には139人もの正規メンバーがいたが、2021年1月には99人、2022年1月には83人、2023年1月に70人、そして現在は34人となった。最盛期よりも100人以上が減っている。

 さらにここから柏木由紀など9人が卒業を予定しており、18人いる研究生の昇格がなければ25人にまで減ることになる。5つで構成されていたチーム制も2023年4月いっぱいで休止となった。

 CDシングルの売上が9割減となり、メンバー数が3年で3分の1になったことを踏まえると、現状起きているのはやはりリストラと考えるのが妥当だろう。従来の規模を維持できなくなったのだと推察される。

 AKB48が根本的に追い込まれた要因としてあげられるのは、やはりK-POPの存在だ。女性を中心とする多くの若者がK-POPに惹かれ続けているのはいまに始まったことではないが、それが一層強まったのはコロナ禍だった。K-POPは音楽でしっかりとファンに訴求し、グローバルマーケットを獲得していたからこそ、コンサートが開催できなくても大きなダメージにはならなかった。

 対してAKB48をはじめとするJ-POPアイドルは、ドメスティックな空間でライブを軸とする生身の身体性の魅力を強める一方で、音楽をおろそかにしてきたことは否めない。音楽がグローバル化するなかで、一昔前のロックサウンドを続けるなど流行とは乖離した動きも続けてきた。国内においても、AKB48は2013年の「恋するフォーチュンクッキー」以降は一般に浸透するヒットを生めなかった。

筆者作成。
筆者作成。

予想されるME:Iの爆発的ヒット

 国内のアイドルシーンは、K-POPの影響で大きく変わった。本田仁美や宮脇咲良などがメンバーだったIZ*ONEや、JYPエンターテインメントによる「K-POP日本版」のNiziUが大ヒットした。またアイドルを標榜しないガールズグループ・XGがグローバルヒットを続け、宮脇咲良(サクラ)はLE SSERAFIMの一員として3度目のデビューをしてIZ*ONE以上の大ブレイクを続けている。

 また、昨年12月にはK-POPオーディション番組の日本版『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』から11人組ガールズグループ・ME:I(ミーアイ)が誕生し、4月にデビュー予定だ。韓国の制作会社・CJ ENMと吉本興業によるプロダクション・LAPONEエンタテインメントが、ブレイクしたJO1やINIなどに次いで送り出すガールズグループだ。

 しかもME:Iには、過去にデビュー経験のあるメンバーが3人含まれている。元アンジュルム(ハロプロ)の笠原桃奈、元Girls²の石井蘭、元Cherry Bullet(K-POP)の加藤心だ。さらに、新人ながら宇多田ヒカル並のヴォーカル能力を持つ高見文寧もいる。LAPONEとメンバーの実績や能力を踏まえれば、大ヒットは確実な情勢だ。

『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』公式Xアカウントより。上段中央が笠原桃奈、下段右から2人目が石井蘭、下段右が加藤心、上段右から2人目が実力派ヴォーカリスト・高見文寧。
『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』公式Xアカウントより。上段中央が笠原桃奈、下段右から2人目が石井蘭、下段右が加藤心、上段右から2人目が実力派ヴォーカリスト・高見文寧。

K-POPに挑むUNLAME

 こうしたなか、AKB48もやっと新たな展開を見せ始めた。それが昨年9月にデビューした7人組グループ・UNLAME(アンレイム)だ。冠番組『OUT OF 48』内のオーディションで選抜されたメンバーは、AKB48の5人(研究生を含む)と一般参加者の2人で構成されている。

 UNLAMEの特徴は、従来のAKB48と異なりダンスやヴォーカルなどのパフォーマンスをより重視した点にある。目指す先はK-POPの競合となることだ。そしてプロデュースするのは秋元康ではなく、ベンチャー企業を興した一ノ宮佑貴だ。CD売上に依存せず配信からスタートしたことや、そもそものメンバーの選抜からも、明確なコンセプトが強く読み取れる。

 今月19日に発表した新曲「UNLAME」は、雑誌『NYLON JAPAN』がヴィジュアルプロデュースするなど、従来のAKB48と一線を画すスタイルだ。今後は、すでにブレイクしているXGやNiziU、そしてME:Iにどれほど迫れるかが注目される。

キリギリスとしてのAKB48

 音楽やパフォーマンスに力を入れるUNLAMEのアプローチは、グローバル化する現在の音楽状況においては極めて正攻法だ。ただ、ひとつ苦言を呈するならそのタイミングは遅れに遅れた。

 5年前に筆者は、当時AKB48のメンバーだった高橋朱里にインタビューをした。IZ*ONEを生んだオーディション番組『PRODUCE 48』でファイナリストになった高橋は、デビューメンバーにはなれなかった。そこで筆者は以下のような提言をした。

ひとつ提案をするならば、ダンスや歌の実力を基準とし、海外展開も想定した新たなグループの誕生が望ましい。
言うなれば、AKB48グループ全体の精鋭チームだ。他グループとの兼任もなく、握手会もほどほどに、ダンスと歌を入念に磨いて曲とパフォーマンスに特化するようなイメージだ。
『PRODUCE 48』で高橋が吸収し、K-POPが当たり前のようにやっていることを、日本でもやるのである。
もちろんその際は、従来の48グループとはかなり体制が異なってくるはずだ。トレーナーを常駐させ、楽曲もダンスもミュージックビデオもグローバル基準で入念に制作しなければならない。
高橋が持ち帰ってきたものを発揮するためには、従来の環境自体を変えていくことが必要とされる。
「高橋朱里が『PRODUCE 48』で痛感した『日本と韓国の違い』」(2019年1月22日/『現代ビジネス』)

 いまUNLAMEがやっているのは、まさにこうしたアプローチだ。しかし筆者の提言からは5年もかかってしまった。高橋朱里もこの直後にAKB48を卒業して韓国に渡り、ガールズグループ・Rocket Punchのメンバーとして活躍を続けている。

 新型コロナの災難もあったが、音楽状況が変化するなかでAKB48は先行投資を怠った。結果、追い込まれてやっと腰をあげた印象だ。

 そうした運営を見ていて思い出すのは、イソップ童話の『アリとキリギリス』だ。コツコツと海外マーケットを開拓し、それが大きな実を結んだK-POP勢(アリ)に対し、AKB48(キリギリス)は将来に備えることを怠った。落日の芽は5年前にすでに見えていた。

「愛嬌」から「音楽」へ

 来年、AKB48はデビュー20周年を迎える。ひとつのアイドルグループがメンバーを入れ替えながらも20年続いたことは十分な結果かもしれない。

 だがいま振り返れば、その存続は音楽メディアがCDからストリーミングに移行する混乱期に生じたビジネスモデル(AKB商法)を基盤としていたのも間違いない。そこでは「アイドル」を生み出すシステムとメンバー個々のパーソナリティばかりが重視され、音楽は後回しにされ続けた。

 現在のK-POP人気は、その揺り戻しとして解釈できるだろう。つまり、「愛嬌を求められるアイドル」から「音楽をちゃんとやるアイドル」への転換だ。再デビュー組やかなりの実力派ヴォーカルが含まれるME:Iのデビューは、その状況をより鮮明にする可能性が高い。

 一方で、従来のAKB48の「会いに行けるアイドル」としてのあり方も、少ないメンバー数であれば今後も継続可能だろう。実際、現在AKB48のライブに足を運ぶのは40~60代が中心だ。約20年間の活動はファンのベテラン化も招いた。AKB48が日常生活に溶け込んでいるであろうそうしたファンの思いも、簡単に一蹴できるものではないだろう。

 以上をまとめると、K-POPとの競合を目指すUNLAMEと、東京の地域アイドルとしてのAKB48との二層構造となりつつある。現状ではこれがAKB48のリストラクチャリング=再構築──向かう先なのだろう。

2024年1月21日、東京・池袋の「第9回Fish-1グランプリ」におけるAKB48(筆者撮影)。
2024年1月21日、東京・池袋の「第9回Fish-1グランプリ」におけるAKB48(筆者撮影)。

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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