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Playoffファーストラウンドで消えたが、今後が楽しみなトレイルブレイザーズ

林壮一ノンフィクションライター
高校時代からのライバル、レブロン・ジェームズとカーメロ・アンソニー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ノンフィクション界の巨匠、故デビッド・ハルバスタムは1979-1980のシーズン、ポートランド・トレイルブレイザーズに密着した。そして、『The Breaks of the Game』という作品を刊行した。

 ハルバスタムほどのBIG NAMEなら特例が許されるかもしれないが、今日、一人の物書きがNBAのチームと同じ飛行機に乗り、全米中を旅しながら取材するなど、まず不可能であろう。それだけに『The Breaks of the Game』は抜群に面白く、何度読んでも発見がある。

 彼は不慮の事故で2007年4月23日に73歳で鬼籍に入ったが、トレイルブレイザーズのプレスルームやアリーナに身を置くと、生前のハルバスタムの息吹が感じられるような気持ちになる。

 そのトレイルブレイザーズの今シーズンが終了した。Playoffファーストラウンドの初戦こそ”KING”レブロン・ジェームズ率いるロスアンジェルス・レイカースから1勝を挙げたが、4連敗を喫し、ベスト8入りはならなかった。

 今年の2月頭より、新型コロナウイルスの影響によりNBAが中断されるまで、私はトレイルブレイザーズのホームゲームを取材した。

 浪人生活を経て、トレイルブレイザーズを復帰の場とした現在36歳のカーメロ・アンソニーがチームの中心となり、高校時代からのライバルであるレブロンと熱き戦いを見せたが、KINGの牙城は崩せなかった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200303-00165236/

 レイカースvs.トレイルブレイザーズ第4戦で、チームのエースであるデイミアン・リラードが右膝を負傷。

撮影:著者
撮影:著者

 また、SFとしてチームのバランスをとっていたトレヴァー・アリーザはNBA再開後、コロナ感染を危惧し、チームに合流しなかったことも響いた。アリーザは、いぶし銀のプレーでチームを盛り立てていた。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200212-00162555/

 

 柱の2人を欠きながら、今季のフィナーレを迎えねばならなかったトレイルブレイザーズだが、スーダン出身のウェンエン・ガブリエルやhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200214-00162141/、PlayoffではDLに入っていたもののレギュラーシーズン中に躍動したナシアー・リトルら、https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200305-00165314/若手の成長が見られた。

 KINGのいるレイカースに勝つには、まだまだ時間が掛かりそうだ。しかし、着実な進歩を見せた。

 2012年にドラフト全体6位でトレイルブレイザーズに入団し、同年のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いたリラードも、30歳。円熟期に入りそうだhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200322-00168658/

 リラードがフリースローを打つ折、アリーナからは毎回「M!V!P!」「M!V!P!!」という大合唱が送られるが、その声がまだ私の耳に残っている。

撮影:著者
撮影:著者

 来シーズン、更に一回り大きくなったトレイルブレイザーズを、ホームであるモダ・センターで目にしたい。

 その前に、もう一度『The Breaks of the Game』を読み返そうと思う。NBAファンの方にも、お薦めの1冊だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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