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間もなくTipoff 八村塁を待ち受ける同期の背番号9

林壮一ノンフィクションライター
2000年2月11日生まれと八村より2歳若いナシアー・リトル(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ポートランド・トレイルブレイザーズの背番号9は、ルーキーならではの洗礼を受けている。ホームアリーナであるモダ・センターを訪れる度に、ミッキーマウスが描かれたピンク色のバックパックをしょっている。

 「これもNBAの一部分なんだって」と彼は笑う。ルーキーは、先輩プレーヤーが用意したバッグを使用しなければならないらしい。

 ナシアー・リトル(20)、身長198cm、体重99.8kgのスモールフォワードだ。203cm 、104kgの八村塁より一回り小柄か。自宅のソファで父親と共にNBAを観戦し、コービー・ブライアント、カーメロ・アンソニー、レブロン・ジェームズらに憧れ、5歳の時にバスケットボールを始めた。

 「その時から、バスケ界の頂点でプレーしたいと思っていたんだ。サッカー、ベースボール、フットボールも経験したけれど、バスケ以上の喜びは味わえなかった。11歳から真剣にNBAを目指した」

 13歳の時、自らの才能を自覚。

撮影:著者
撮影:著者

 米国海軍兵だった両親は、「目標を定めて、それに向かって全力で取り組みなさい。何事も結果を出すのは容易いことじゃない。だから死に物狂いでやりなさい」と仕付けた。

 高校1年次、2年次は自宅近所に通ったが、3年からはスポーツエリートばかりを集める私立高校に転向し、フロリダ州タイトルを得る。

 「僕はサイズに恵まれたし、周囲の環境も良かった。両親がバスケに集中できる生活を用意してくれたことに感謝している」

 その後、マイケル・ジョーダンの母校であるノースカロライナ大に進学。1シーズンのみプレーし、プロ入りを宣言。今季のドラフト全体25位でトレイルブレイザーズから指名され、契約した。

 「人生最大の喜びだった。本当にNBA選手になれるんだ。夢が叶ったぜ!ってね」

 リトルは10月25日のNBAデビュー以来、計45試合、562分のプレーで、162得点、21アシスト、12スティール、14ブロック、106リバウンドをマークしている(アメリカ西部時間3月3日正午時点)。

 「1年目だからこそ、プレイオフに出たい。出場時間が短くても、そこで可能な限りのプレーをすることが、未来に繋がるように思う」

 八村は、リトルのプレータイムを大きく上回っている。出場は36試合だが、1058分。502得点、56アシスト、29スティール、5ブロック、217リバウンドを記録している。

 「コンザガ大と試合したことがあったから、八村のことは大学時代から知っている。力のある選手だし、今年は彼にとっていいシーズンだったよね。サイズも才能も申し分ないでしょう。オールスター時にはライジングスターチームにも選ばれたしさ。同期として負けらないって思いがあるよ」

撮影:著者
撮影:著者

 その八村が所属するワシントン・ウィザーズが今日、ポートランドにやって来る。

 「楽しみだ。絶対に勝つよ!」

 トレイルブレイザーズもウィザーズもそれぞれの地区で9位と、もう一つ順位を上げなければプレイオフに進出できない。

 「何とか追いつき、プレイオフに出たいね」

 12時間後にTipoffとなるルーキー対決は、どちらに軍配が上がるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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