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KINGレブロンのライバル、カーメロ・アンソニーのリーダーシップ

林壮一ノンフィクションライター
レブロンより一つ年上のアンソニー。かなり動きがシャープになって来た(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズンも危なげなくプレイオフ進出を決めるであろうボストン・セルティックス。NBAで3年目ながら、早くも同チームの主軸に成長したパワー・フォワードのジェイソン・テイタムは、先日、自身のアイドルであった選手とユニフォームを交換した。

 2月25日、セルティックスは118-106でポートランド・トレイルブレイザーズを下した。22歳のテイタムはこの日、両チーム合わせて最多の36得点をマーク。プレー時間は34分間であるから、1分に満たぬ間に1得点していた計算になる。リバウンドは4、アシストは1。

 テイタムは言う。

 「カーメロ・アンソニーやコービー・ブライアントに憧れていた。カーメロのプレーから多くを学びながら育った。3本の指に入る大好きな選手さ。僕はカーメロ信者の一人だよ」

撮影:著者
撮影:著者

 試合後、カーメロ・アンソニーのロッカーには、きれいに畳まれた未使用のセルティックス背番号0のユニフォームが置かれていた。10度オールスターに選出されたアンソニーがNBA入りした折、テイタムはまだ5歳だった。

 ユニフォームの交換に応じたアンソニーはテイタムについて「弟のように可愛いヤツだ。今、伸び盛りの選手だよね。彼のプレーを見るのは楽しい。何度か1対1の局面もあったけれど、人間として彼を知るチャンスが出て来たかな…」と話した。

 カーメロが属するトレイルブレイザーズは、プレイオフに出られるか否か微妙な位置にいる。セリティック戦でのアンソニーは34分間コートに立ち、14得点。リバウンド2、アシスト1。

 現時点では、テイタムの方がベターな選手と表現することも出来る。

 しかし、輝かしいキャリアから浪人生活を経て、トレイルブレイザーズのユニフォーム00番を着るアンソニーは、これまでの彼とは違った顔を覗かせるhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200102-00157393/

 まず、体つきが全盛期より細く、シェイプしている。そして、献身的にディフェンスをする。何より、エースであるデイミアン・リラードが右鼠径部のケガで戦列を離れるなか、リーダーとしてチームを引っ張っている。

 

シュート練習には参加していたデイミアン・リラード 撮影:著者
シュート練習には参加していたデイミアン・リラード 撮影:著者

 チームが劣勢に立たされた折、ドリブルしながら空いている肩で相手の体に何度もぶつかってシュートしたり、ここぞという場面でインターセプトを見せたりと、ベテランならではの味を見せる。そうした彼の闘志にトレイルブレイザーズは活気付く。

 試合後の控室で、アンソニーに質問をぶつけた。

----11月にトレイルブレイザーズに加入し、今やチームリーダーのような立場になりましたね?

 「う~ん。あんまり気にしていないけれど、自分のキャリアが武器になっていることは事実だね」

----チーム力向上のために、若手選手に何か助言をしたりするのですか?

 「若手って誰? NBA全体の?」

----いえいえ。チームメイトであるウェンエン・ガブリエル選手やナシアー・リトル選手など。

 「ああ。コミュニケーションはよく取るようにしているよ。自分の経験からして、こういう局面では、こういう動きが上手くいったとか、明るくいこうぜとかね。でも、『こうやれ!』とは絶対に言わない。俺はそういうタイプの人間じゃないから(笑)」

 昨シーズン途中で居場所を失った日から、アンソニーはよくぞカムバックした。ベテランの意地で、是非ともプレイオフ進出をもぎ取ってほしい。引き続き、コート上で闘志を見せ続けてほしい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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