Yahoo!ニュース

2万円で5千円還元?政府のマイナンバーとスマホのヒモづけで25%のポイント還元の謎 マイナポイント

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
レジでマイナンバーを出す人 出典:いらすとや

KNNポール神田です。

【追記】総務省は、2019年9月4日(水)『マイナポイント』のサイトも更新

https://mynumbercard.point.soumu.go.jp/promotion/

『マイキーID』の取得の方法のための『マイキープラットフォーム』

https://id.mykey.soumu.go.jp/mykey/html/MKCAS010.jsp

□政府がマイナンバー(個人番号)カードを活用して2020年度に実施するポイント制度の概要が(2019年9月)1日、分かった。

□民間のスマートフォン決済事業者と幅広く連携し、利用者がスマホに入金すると、地域を問わず使えるポイントを国費で上乗せする。

□(20)20年10月に始め、入金2万円に対して5千円分(25%)を提供する案が有力だ。

□本人認証やポイント管理にマイナンバーカードのシステムを使う点は変わらず、利用はカード取得が条件だ。

出典:政府、全国共通の新ポイント発行 マイナンバーカードを活用

■政府のキャッシュレス『ポイント還元制度』は期間限定 2019年10月1日〜2020年6月30日の9ヶ月間

もう、消費税10%まで待ったなしの一ヶ月を切った…。さらに、その景気をそこ支えするために、キャッシュレスのポイント還元を行う。この時点で、さらに、軽減税率でテイクアウトするかどうかで税率が10%と8%とにわかれ、さらにキャッシュバックのポイントは大企業と中小企業によって、5%と2%とにわかれる。しかし、店舗側からの申請が間に合っていない現状と、複雑なポイント還元比率は、税率だけのアップでも大変なのに、二重、三重のリスクが考えられる。当然、いろんな詐欺行為も考えられる。

特に、中小企業などでは、QRコードをユーザーがスキャンする方式がメインとなり、ユーザー側の金額の誤入力でもポイント還元が同時になされてしまう。意図的に桁をまちがえて決済し、金額の返金がなされても、ポイントまでは没収できないなどの事例があった。つまり桁をまちがえて入力し、申請してもポイントだけはもらい得ということも可能になってしまう…。これにかからず、違法な行為はいくらでもアイデアの数だけ思いつくことができる…。

増税だけでも大変なのに、なれないポイント還元に軽減税率、さらに一気に処理するサーバの耐性なども懸念をあげればキリがない。

■入金経路が確認できるマイナンバーに出金経路が確認できるマイナンバーへ

こんな状況で、まだ、はじまってもいない『ポイント還元制度』の終了後の2020年10月からは、マイナンバーとヒモづけで、2万円チャージすると5000円ポイント還元するという政府案が浮上してきた。これはもう、混乱を更に拡大するばかりだ。

まずは、マイナンバーのヒモづけの連携で問題がない人でテスト期間をふんだ上での実施にすべきだ。

現在、マイナンバーは、個人と銀行などの金融業、会社などとのヒモづけが必須となっているので、サラリーマンであれば、すべてマイナンバーで収入や入金経路が可視化されている。そして、次に消費先のキャッシュレスにマイナンバーがヒモづけされれば出金経路まで可視化されることとなる。

それが問題ないと思える人にはそれまでだが、不都合と思う人も少なくないことだろう。むしろ、25%までインセンティブをつけてでもマイナンバーを使わせたい政府の思惑がなんだかとても気持ちが悪い。いや、政府がいつでも閲覧できる状態が気持ちが悪いのだ。むしろ、マイナンバーを使わせる権利を国民にすべて渡し、オプトインで使用できるデータと利用されたことを知らせるような、エストニアの『イーレジデンシー』のような利用シーンを想定したい。番号が漏洩しても二重三重のセキュリティで悪用されるリスクが低い。しかも外国人でも取得することができる。EU圏でのIDとなる。もちろん生体認証だ。

エストニアの『イーレジデンシーカード』出典:筆者
エストニアの『イーレジデンシーカード』出典:筆者

むしろ、マイナンバーで福利厚生から、年金、パスポート、運転免許、確定申告と収入と同時に払った税金もふくめてすべて可視化し、選挙の投票もできるようにすべきではないだろうか?使いたい人だけがヒモづけし、使いたくない人は拒否することができる。そして、誰かが中央集権的に利用するのではなく、ブロックチェーン技術で、本人とのヒモ付けは担保しながらセキュリティを高め、利用するにはコストが発生し、そのコストは個人に反映できるというような新たな『個人情報時代』のヴィジョンも同時に提示すべきではないだろうか?

マイナンバーとスマートフォンのヒモづけを安易なインセンティブのポイント還元制度で提唱するのはどこかおかしいと思う。

■関連コラム

□いまさら人に聞けない『 #二段階認証 』とは?

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20190708-00133324/

□なぜ?『○○ペイ』は、こんなにもややこしくなってしまったのか?中国の『網聯』ネットワークを見習え

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20190522-00126829/

□『NETFLIX』のサーバ代金の1/6で整備された『ハローワーク』の80億円サーバ

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20190416-00122534/

□確定申告やマイナンバーは、エストニアのX-roadを見習え!

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20160216-00054467/

□マイナンバーが必要なのは国民よりも国会議員だ!

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20150325-00044183/

□2015年10月からのマイナンバー制度にご用心!

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20150601-00046222/

□風俗や水商売がマイナンバーで倒産する日

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20150911-00049412/

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

神田敏晶の最近の記事