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Googleが『行政処分』、LINEヤフーの『行政指導』と何が違うのか?法的拘束力の有無

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:公正取引委員会

KNNポール神田です。

このところ、IT関連業界で『行政処分』やら『行政指導』のようなぶっそうな言葉が頻繁に飛び交うようになってきている。

Googleには、ヤフーの広告配信を妨害したことでの『行政処分』 の適応がなされた。

公正取引委員会が(2024年4月)22日、米グーグルに初の行政処分を出した。「検索連動型広告」と呼ばれるサービスを巡ってLINEヤフーの事業を一部制限した行為に、独占禁止法違反の疑いがあると判断した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE22C4F0S4A420C2000000/

□ 発表によると、グーグルは(20)14年11月、ヤフーに対し、外部のスマートフォン向けサイトなどではグーグルの技術を使った検索連動型広告の配信をしないよう要求。ヤフーは遅くとも(20)15年9月以降、この広告配信ができなくなった。
□公取委はグーグルの要求が、市場の公正な競争をゆがめ、独禁法が禁じる不公正な取引方法や私的独占に当たる疑いがあるとみて(20)22年に調査を開始。その後グーグルが要求を撤回したため、ヤフーは同年(2022年)11月から広告配信を再開できたという。
□グーグルが今月(2024年4月)提出した自主改善計画の項目は、公取委が承認した場合を除き今後3年間(2027年まで)はヤフーへの技術提供を制限しない
▽外部専門家の定期監査を受ける
▽改善計画の履行状況を3年間公取委に報告する――など。
公取委が実効性を認定したことで、グーグルには履行義務が生じる。公取委は監視を続け、不履行があれば独禁法違反調査を再開するとしている。
https://www.asahi.com/articles/ASS4Q1FKPS4QUTIL002M.html

これらは、公正取引委員会がGoogle LLCに対して出した通知だ。
これによると、Googleが検索エンジンや広告に関する取引で独占禁止法に違反する可能性があるらしい。あくまでも可能性だ。

独占禁止法は、競争を妨げたり、公正な取引を阻害したりする行為を規制する法律であり、今回のGoogleの行為が、独占禁止法の『私的独占』とか『不公正な取引方法』に当たるのかもしれないと指摘している。

そして、Googleは、公正取引委員会に対して、自分たちが問題を解決するための計画を提出し、公正取引委員会はその計画を評価して、問題が解決される可能性が高いと判断して、Googleの提出した計画が問題解決に役立つと認めたわけだ。

この認定は、Googleが独占禁止法に違反してることを認めたわけではない。

■『モバイル・シンジケーション取引に必要な技術提供の制限』が独占禁止法上の問題として確約計画を公正取引委員会が認定した

出典:公正取引委員会 
出典:公正取引委員会 

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/apr/240422-3.pdf

 公正取引委員会は、Google LLC(注1)に対し、検索エンジン及び検索連動型広告(注2)の技術の提供に係る取引に関して独占禁止法の規定に基づき審査を行ってきたところ、同社の後記3の行為が独占禁止法第3条(私的独占)又は同法第19条(不公正な取引方法第2項(その他の取引拒絶)又は第14項(競争者に対する取引妨害))の規定に違反する疑いが認められた。

 公正取引委員会は、当該行為について、確約手続に付すことで、Google LLCによって当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置が速やかに実施されることにより、競争の早期回復が図られると認め、令和6年3月22日、同法第48条の6の規定に基づき、同社に対し確約手続に係る通知を行った。

 今般、Google LLCから、公正取引委員会に対し、同法第48条の7第1項の規定に基づき、後記3の行為が排除されたことを確保するために必要な措置の実施に関する確約計画の認定を求める申請があった。公正取引委員会は、当該確約計画は当該行為が排除されたことを確保するために十分なものであり、かつ、その内容が確実に実施されると見込まれるものであると認め、本日、同法第48条の7第3項の規定に基づき、当該確約計画を認定した(注3)(注4)。

 なお、本認定は、公正取引委員会が、Google LLCの後記3の行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/apr/240422_digijyo.html

そして、どこにも『行政処分』の文言が見受けられないが、『確約計画』を認めるということが『行政処分』となる。

(注1)確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。

■行政処分と行政指導の違いは?

今回、気になったのが、この2つの言葉、『行政処分』と『行政指導』。

Googleは『行政処分』で、LINEヤフーは2度目の『行政指導』を受けた。

法的拘束力の有無:

『行政指導』は、法的拘束力がなく、行政機関が企業や個人に対して助言や指導を行うものだが、従うことが義務付けられていません。一方、『行政処分』は『法的拘束力』があり、行政機関が法律や規則に基づいて違反行為に対する罰則や措置を行える。

措置の性質:

行政指導は主に法令遵守や改善を促すための助言や指導を行うものであり、問題の解決や改善に向けたサポートを提供します。一方、行政処分は違法行為に対する罰則や是正措置を行うものであり、通常は違反行為の再発を防止することを目的とします。

手続きの違い:

行政指導は通常、口頭や書面による助言や指導が行われ、特定の手続きを伴うことはありません。一方、行政処分は公的な手続きに基づいて行われ、通常は書面で通知され、対象者に異議申し立てや審査請求の機会が与えられます。



□今後、違反時の追徴金は、国内売上の20%から最大30%

□政府は巨大IT企業に対する規制を強化する方針で、(2024年4月)16日に開かれた自民党の部会で、新たな法案を提示しました。政府はこの法案を来週にも閣議決定し、今の国会に提出する方針。
□指定された企業には、規制の順守に向けて毎年度、報告を求めるとともに、違反した場合は、日本国内での売り上げの20%を課徴金として支払わせるとしています。
□独占禁止法でほかの事業者の活動を不当に排除した場合と比べて、課徴金の水準は3倍以上にのぼり、違反を繰り返した場合にはさらに30%に引き上げられます。
□EU=ヨーロッパ連合では、先月(2024年3月)7日から巨大IT企業を規制する「デジタル市場法」の本格運用が始まっています。
アップルに対しては、(米国)司法省が先月(2024年3月)21日、「iPhone」をめぐり、他社の製品との間でアプリの機能を制限することなどで、市場での独占的な地位を違法に維持しているとして、提訴しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240416/k10014423611000.html

■LINEヤフーは2度目の『行政指導』

□LINEの利用者の大規模な情報漏えい問題では、運営会社のLINEヤフーに対し、総務省が3月に行政指導を行い、会社は4月1日、再発防止策を提出していました。
□これについて総務省は、この内容が不十分だとして2024年4月16日、会社に対し2度目の行政指導を行いました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240416/k10014423371000.html
□2度目の『行政指導』の影響か?『LINEレシート』、『LINE PLACE』 突然の終了宣言!
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/beba2efb13c95a2f2b4b9daec4de7c97313934bd

■『行政指導』の順序段階 助言<指導<勧告<警告 その上に『行政処分』

行政指導の中には、助言<指導<勧告<警告 とレベルの段階がある。
しかし、どの段階も、『行政処分』とは違い、『法的拘束力』はない。

助言 :

行政機関が企業や個人に対して、法令遵守や改善を促すための意見や助言を与えることを指します。法的拘束力はない。助言は、問題の解決や改善に向けた方向性を示すもの。

指導 :

行政機関が企業や個人に対して、具体的な行動や手続きの方法を示し、法令遵守や改善を促す行為を指します。指導は助言よりも具体的で、法的拘束力はありませんが、従うことが期待される。

勧告 :

行政機関が企業や個人に対して、ある行動をすることを勧める行為を指します。勧告はより強い要請を含み、従うことが期待されますが、法的拘束力はない。

警告 :

行政機関が企業や個人に対して、法令違反や問題の重大性を指摘し、再発防止を促すための通知を行う行為を指します。警告は、問題の深刻度が高い場合に使用され、再発を防ぐための警告としての意味合いがある。

同じ、行政◯◯がついても、指導と処分の差があり、指導のなかにも、これだけややこしい段階があるとは。むしろ、はっきりと明確に程度がわかる数値化する努力をしてもらいたいものだ。

また、Googleが、「(同法の)規定に違反したとは認定されていない」との声明を出した。処分を受け入れつつ、違法性が認められたわけではない点を強調した』

のも『行政処分』のわかりにくさを物語る

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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