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#楽天家計簿』をリリース。ポイント経済圏とスーパーアプリによる金融再編『LINEレシート』後継は?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:楽天家計簿

KNNポール神田です。

LINEヤフーの『LINEレシート』『LINE PLACE』のサービス変更と同時のタイミングに、楽天は『家計簿』アプリをリリースした。

□楽天は(2024年)4月17日、家計簿アプリ「楽天家計簿」本格提供を始めた。楽天会員向けにリリースするもので、クレジットカードや銀行口座、証券口座と連携し、収入/資産から、ECや携帯料金といった支出まで一元管理。利用料は無料、まずはiOS版からの提供(Android版は今後提供予定)となる。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2404/17/news172.html

さらに、楽天ペイメントが「楽天ペイ」「楽天ポイントカード」「楽天Edy」を統合することを発表した。

□楽天ペイメントは2024年4月18日、共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」アプリと、キャッシュレス決済サービス「楽天ペイ」アプリを12月頃に統合すると発表した。
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2404/18/news185.html

『楽天Pay』アプリへの統合までにはあと8ヶ月程度かかる模様だが(それだけ難易度が高い?)、『楽天家計簿』はすぐに利用が可能となった。


■『楽天家計簿』は『LINEレシート』ユーザーの受け入れ先となるか?

レシートを読み取り入力している『LINEレシート』だと、一ヶ月の分類はこんな感じだ。
日々のレシート入力が無料で便利だった『LINEレシート』の受け入れ先となるか?と考えると、答えは『ノー!』だった。

まずは、『LINEレシート』から…

出典:LINEレシート
出典:LINEレシート


出典:LINEレシート
出典:LINEレシート


任意のレシートからの自動入力で、店舗名が読み取れないのは『不明な店舗』となるが、日別の購入履歴で、経費などの計算ができる。

そして、『楽天家計簿
https://personal-finance.rakuten.co.jp/
を早速、ダウンロードし、登録してみると、このような表示となる。
広告表示以外、あまり変化が見られない。
むしろ、『PayPayカード』の支払履歴をこのように取り込んでいるところから、PayPay陣営は『PayPay家計簿』の開発を大急ぎでキャッチアップする必要がでてきただろう。

出典:楽天家計簿
出典:楽天家計簿

出典:楽天家計簿
出典:楽天家計簿


■終了する『LINEレシート』のレシート情報に価値があり


『LINEレシート』はレシート情報から読み取っているので、4月16日の『ガスト』での食事をこのように、何を食べたのかまで読み取ってくれている。

出典:LINEレシート
出典:LINEレシート

一方、楽天家計簿では、『PayPayカード』からの情報のみなので、このような表示にしかならない。クレジットカードで支払った金額のみだ。

出典:楽天家計簿
出典:楽天家計簿

家計簿にどこまでの情報を求めるのかによって違うが、クレジットカードの支払情報に、レシート読み込み機能の情報が付加してくれたほうが重宝するのは明確だ。しかし、それにまつわるコストをどう負担するのか?
楽天家計簿は見事に、個人の消費行動に基づいた広告商品を表示している。もちろん楽天市場へのリンク付きだ。
それだけではない、外部のクレジットカードと銀行は1行づつしか登録できないのだ。なぜだろうか?


■楽天の見事な外部連携機能。 外部クレジット、外部銀行は1社づつのみ!

『楽天家計簿』の実に見事なところは、『その他の金融口座・サービス』を銀行1社、カードを1社しか登録できないところだ。

『その他の金融口座・サービス』に支払用に日常に使っている『PayPay銀行』と『PayPayカード』を入れてしまうと、他のメインバンクの銀行などが登録できなくなってしまう。
あとは、『楽天銀行』と『楽天カード』『楽天ポイント』しか使えなくなってしまうのだ。

出典:楽天家計簿
出典:楽天家計簿

多数の銀行やクレジットカードを管理している人は、有料のサービスを使っているかもしれないが、それほど多数の銀行やカード会社がない人は、広告はあれど、無料で使える『楽天家計簿』でひとつにまとめたほうが便利でコストもかからないという判断ができるようになるだろう。

当然、2024年12月までに、『楽天Pay』に統合する計画には、この『楽天家計簿』も統合し、楽天の金融系スーパーアプリ化を計画しているのは手にとるようにわかる。

一方、PayPayは、PayPayカード以外のクレジットカードを利用したPayPayでの支払いを2025年1月(2024年7月末予定だった)まで延期にしているが、むしろ、この8ヶ月で、楽天の金融再編の影響にどのように立ち回れるかにかかっている。
LINEヤフーの『LINEレシート』の技術を受け継ぎ、『PayPay家計簿』で、レシート取り込みの家計簿アプリを早急にリリースすべきだろう。
そして、楽天家計簿が外部連携を銀行、クレジット1社づつという囲みをはずし、各3社くらいまで広げ、会計アプリへの連携や税務署への確定申告を容易にできるようなマイナンバー連動型の家計簿アプリの登場を期待したい。





ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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