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分野別ガイダンスをパスする余裕などないはずなのに~教育広報担当者が知ると得する話・10

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆石渡、全国の高校で進路講演

知っている人は多くないかもしれないが、私の仕事の一つが高校での進路講演である。

地域や高校の難易度、内容はバラバラだ。

地域だと、今年は青森から沖縄まで。高校は進学校から進路多様校まで。内容は入試の変化解説から高卒就職や短大・専門学校進学、あるいは保護者向けマネープラン講座などもある。

今年はすでに約70回、実施した。

最近は「進路講演のイオン・ドン・キホーテ」を自称する今日この頃である。

と、ここまでは前回(9回)で書いた内容と同じだ。

◆分野別ガイダンスって何?

さて、進路講演で昨年から今年にかけて大幅に増加しているのが分野別ガイダンスである。

大学・短大等の広報担当者であれば分野別ガイダンスについてはご存じの方も多いだろう。

念のために説明すると、高校内で分野ごとに分かれて、大学や短大・専門学校の教職員が解説をする、というものだ。学校の宣伝は多少しても許されるが基本はその分野についての解説が主となる。

なお、大学・学部のパンフレット配布などは認められている。

1回転あたり30分から40分、2回転ないし3回転という高校が多い。

高校によっては、分野別ガイダンスの前に全員参加の基調講演を設けるところもあるし、分野別のテーマとして、高卒就職対策や入試対策などを設けることもある。

さて、この分野別ガイダンスは運営は進学情報会社が担う。そして、大学・短大等が参加を希望する場合、進学情報会社に参加料を支払う必要がある。

数十分、話す程度でしかも参加者は1回転あたり数人ということもある。

それでも、分野の志望がはっきりしている高校生がいるなら、ということで参加する大学や短大・専門学校は多い。

◆石渡、なぜか分野別ガイダンスに登場

さて、この分野別ガイダンスで私が講演する機会が昨年から今年にかけて大幅に増えた。

まず、分野別ガイダンスの基調講演、これは以前からあった。今月も福岡県・純真高校でこの基調講演を引き受けた。

私が大幅に増えたのは、分野別ガイダンスの個別テーマについてである。

つまり、ある高校では経済・経営学について、別の高校では福祉学について、と言った具合で話すのだ。

もちろん、私はどこかの大学に所属しているわけでもないし、経済学者でも福祉学者でもない。

いわば代打として話すわけだ。

それと、分野別ガイダンスは参加校が進学情報会社に参加料を支払う、と先に書いた。合わせて、参加校が自校の宣伝やパンフレット等の配布が可能、とも。

私の場合は代打なのでお金の流れが逆になる。すなわち、進学情報会社側が他の講演と同様に私に講演料を支払うことになる。

進学情報会社からすれば、本来は利益になるところ、余計な支出が増えることになる。

では、進学情報会社がなぜ私に代打を依頼するのか。理由は、その分野についての大学などが集まらなかったからだ。

◆分野別ガイダンスに参加しない理由

では、大学などが分野別ガイダンスに参加しない理由は何か、主なものは以下の3点だ。どれか1点というよりも複合しているケースが多い。

1:「高校が遠いので移動が厳しい」

2:「想定される参加人数が少ない」

3:「これまで進学実績のない高校だから」

1は、地方の高校で良くある話だ。その高校が大学所在地から離れていて移動がきつい、ということもある。それと、そもそも分野別ガイダンスで需要があっても対応可能な大学が地方では少ない、という事情もある。

2は、1回転あたり数人程度しかいないのに移動時間と参加費用をかけるのは効率が悪い、という判断だ。

3は、去年から今年にかけて増加している。

以上、3点が分野別ガイダンスについて大学等が参加を断る理由である。

その結果、石渡への代打依頼が増加することになる。

まあ、こちらとしては本業である進路講演が増えるのはありがたいので、代打依頼は歓迎すべきことだ。

ただ、私個人とは別に大学広報という点では強い違和感がある。

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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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