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神戸大生・身内受けで退学処分も視野へ~バドミントンサークル迷惑行為騒動を考える

石渡嶺司大学ジャーナリスト
神戸大バトミントンサークル迷惑行為と炎上を専門家が解説(イラストはイメージ)(提供:イメージマート)

◆胴上げで天井破壊に障子破りの迷惑行為

2024年3月18日、神戸大学のバドミントンサークル「BADBOYS」の迷惑行為の動画がX(旧Twitter)上に投稿されました。

神戸大学バドミントン同好会「BADBOYS」の春合宿の写真です
旅館の物品を荒らしたり障子を破ったりなどの迷惑行為が散見され、また今後大学の新歓が始まる中このようなサークルがあることを神戸大学の新入生に知っておいて欲しいため拡散して欲しいです
#春から神大 #春から神大 #サークル
※X投稿より

別の投稿では、胴上げで天井を破壊する様子の動画も公開されました。

他にも、障子を破って笑顔で顔出ししている写真や旅館の金庫や掲示板などを勝手に持ち出した集合写真などもあります。

あまりと言えばあんまりな迷惑行為にSNSで瞬く間に拡散。

翌19日には、JCASTニュースなどが記事化し、さらにYahoo!トピックスに掲載されました。

3月20日には「神戸大迷惑行為」「退学処分」などがSNSでトレンド入りしています。

◆バドミントン部は無関係、大学はお詫び掲載

なお、同サークルは大学非公認のサークルであり、大学公認のバドミントン部などは無関係です。

バドミントン部のXアカウントでは、2024年3月20日現在、注意喚起の投稿が固定されています。

一部投稿で当アカウントが誤って言及されておりますが、こちらは神戸大学体育会バドミントン部アカウントであり、現在問題となっている神戸大学のバドミントンサークルとは一切関係ございません。ご承知の程、よろしくお願いいたします。
※神戸大学バトミントン部X公式アカウントより

この投稿が3月20日現在で再生数が1200万回を超えており、いかに注目されているかが明らかです。

神戸大学の動きも素早く、3月19日には、神戸大学サイトに大村直人・教育担当理事の名前でお詫びが掲載されました。

【重要なお知らせ】学生の不適切な行為について
2024年03月19日

このたび、本学学生による不適切行為がSNS上に掲載されており、関係者の皆様には大変ご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
詳細につきましては現在、学内で調査中であり、調査結果により大学として厳重に対処いたします。
このたびは誠に申し訳ございませんでした。今後このようなことが起きないよう再発防止を徹底してまいります。

教育担当理事
大村 直人
※神戸大学サイト掲載

◆一言でまとめるとバカ

今回のバドミントンサークルの迷惑行為、一言でまとめると「受験では頭いいのに、バカなんだね」です。

もちろん、関西ではバカが最上級の非難、と分かったうえでの「バカ」です。

後述しますが、SNSで炎上した場合、それも迷惑行為によるものは本人も周囲も傷つくだけです。

こうした炎上騒動はSNSが普及した2000年代以降、何度も起きています。

デジタルネイティブと言われるほど、情報通信機器に慣れているはずの大学生がネットリテラシーを身に付けていないのでしょうか。

しかも、それが、難関の国立大・神戸大所属の学生、というところがより一層、情けなく思います。

神戸大ブランドは関西では絶大であり、好条件の企業に就職できる確率が相当高いです。

その神戸大に合格しながら、後述しますが、今後の就職その他でデジタルタトゥーとして付いて回り、人生を棒に振ることになります。

だから、一言でまとめると「バカ」なんです。

神戸大の多くの学生はとばっちりを受けたバドミントン部を含めて、真面目であり、優秀です。

「BADBOYS」以外の学生からすればいい迷惑以外の何者でもないのではないでしょうか。

◆軽くても停学、幹部クラスは退学も

それでは、今回の騒動、「BADBOYS」の学生はどのような処分になるでしょうか。

神戸大学は3月19日時点では「厳重に対処」としか出していません。

当然ながら、これから調査した上で処分が下されます。

その処分内容ですが、「BADBOYS」の学生には厳しい処分となることが予想されます。

具体的には、幹部クラスは軽くても有期停学(3か月前後)か無期停学、重ければ退学処分もあり得ます。

幹部クラスとは、サークルの代表や副代表、会計などの上級生です。彼らは本来はサークルを運営する立場にあり、構成員の暴走を止める立場にあります。

今後の調査にもよりますが、すでにSNSにある動画等を見る限り、止めるどころか、煽る側だったことも考えられます。そうなると、重い処分にならざるを得ません。

さらに、後述しますが、未成年学生に対して飲酒を容認ないし勧奨していたことも考えられます。

幹部クラス以外でも、有期停学(1~3か月)か無期停学となることが有力です。特に旅館の金庫など設備・備品を持ち出すなどした学生は幹部クラスと同等の重い処分になる見込みです。

「単に一緒だっただけ」という学生も、サークル合宿が荒れることを想像できなかったとは考えづらいです。そうなると、訓告・厳重注意などの軽い処分になる可能性は極めて低いでしょう。

◆自作自演の迷惑動画でも厳重注意処分の過去

なぜ、停学ないし退学処分が有力と言い切れるのか、実は神戸大学の学生は、やらかした過去があります。

2009年8月、神戸大学の学生がホームレスの男性に生卵を投げつける動画をSNSに投稿、これが拡散されて炎上します。

この学生は大手電機メーカーの内定者でした。

騒ぎはこの学生の内定先やアルバイト先、神戸大学などにも飛び火します。

※なお、2009年・JCAST記事中では企業名が明記されています。本稿では内定取消になったかどうかなどが不明であること、また、この企業が騒動には全く関係ないことから「大手電機メーカー」としています

その後、この襲撃動画が自作自演であり、ホームレスの男性も学生の友人であったことが判明します。

この騒動に対して、神戸大学は学生を学部長による厳重注意処分としています。

自作自演であっても、明らかに不適切な動画の投稿に対しての処分が厳重注意処分でした。

神戸大学の学生は2013年にも事件を起こしています。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で男子学生(当時19歳)が中学時代の同級生2人(他は同志社大、関西外国語大の学生)とともに迷惑行為を繰り返しました。

迷惑行為とは、

「大型ボートのアトラクションなどに乗っている時に安全バーをゆるめて身を乗り出したり、裸になって立ち上がったりしたほか、2人乗りのボートをわざと傾けて転覆させた。少なくとも7回、迷惑行為を繰り返した。サッカーでけがしたのに、アトラクションで柱に当たって骨折したと虚偽の書き込みもしていたという」

※デイリースポーツ2013年4月10日
この学生はその後、停学3か月となっています(朝日新聞大阪版夕刊2013年6月22日)。

今回の騒動は旅館の天井や設備・備品を破壊・破損しています。しかも、過去にも同様の騒動を起こしていることが判明しています。

ホームレス襲撃の自作自演動画よりも悪質ですし、継続性すら疑われます。

それから、2013年のUSJ騒動では停学3か月でした。ただ、2013年の騒動では神戸大生は1人(他大学の友人と共謀)、今回はサークル全体で、しかも継続性が疑われています。そのうえ、未成年の飲酒も絡んでいる可能性も高く、そうなると、退学も含めた重い処分となる見込みです。

仮にですが、厳重注意・訓告など軽い処分となると、処分のバランスが取れません。当然ながら、今度は神戸大学に批判の矛先が向けられることになります。

この過去の処分事例を考えると、有期停学か無期停学、または退学処分が有力視されるのです。

◆未成年学生の飲酒があれば、さらに重い処分も

今回の騒動については、このサークルが旅館を壊すことに対して確信犯で臨んでいること、その様子が動画・写真ではっきり残ってしまっています。

これでは学生も「偶然だった」などの言い訳はできませんし、全国区のニュースとなってしまっています。

大学側も放置、または軽い処分で済ますわけにはいきません。そうすると、今度は大学が批判されるからです。

しかも、サークル活動で天井を壊すほどであれば、未成年者の飲酒、または飲酒勧奨もあったものと、推定できます。

2000年代以降、各大学は飲酒事故に過敏になっていて、未成年飲酒についても厳しく臨むようになりました。

神戸大は旅館に対する迷惑・破壊行為と合わせて未成年者の飲酒についても、厳しく臨むと見られます。

動画等を見る限りでは未成年者の飲酒もあった、と見る方が自然です。

◆飲酒事故には厳しく停学や退寮処分も

飲酒事故は2000年代以降、各大学とも厳しく臨むようになっています。

・白鷗大野球部で未成年部員が入部予定の高校生と飲酒→未成年部員2人が停学(下野新聞2018年3月14日)
・苫小牧駒澤大学硬式野球部の男子学生(22)が酒気帯び運転で逮捕→男子学生は無期限停学、同乗の学生4人は停学(読売新聞2019年8月16日)
・山形大学工学部の未成年学生がSNSにその様子を投稿、酒気帯び運転での逮捕など不祥事相次ぐ→停学や戒告処分など(毎日新聞山形地方版2018年7月27日)
・慶応義塾大学の学生サークルで未成年者の飲酒、酒をあおるなどの危険行為。集団準強姦で6人が書類送検も不起訴処分→6人中3人が無期停学(毎日新聞2017年11月29日)
・釧路公立大学の学生2人(うち1人は未成年)が飲酒で車破損→2人とも無期停学(北海道新聞2015年6月6日)
・釧路市内の3大学合同のサークルで未成年飲酒、13人が補導→北海道教育大学釧路校は学生8人(補導された学生3人、成人学生5人)のうち、酒席に最初から参加した3人を停学1週間、途中参加した5人のうち3人を訓告、2人を厳重注意(北海道新聞2015年5月22日)
・大阪商業大学日本拳法部で特定部員に対する暴力行為や飲酒の強要など3人が逮捕→大阪商業大学は部を無期限活動停止。逮捕の3人は部から除名、逮捕の3人を含む7人は無期停学などの処分(読売新聞2015年5月11日)
・釧路公立大学フットサル部で未成年の飲酒が発覚、11人が補導、うち1人が救急搬送→上級生12人を停学2週間、1年生は訓告処分。部は3か月活動停止(朝日新聞北海道版2014年5月15日)
・北海道教育大学函館校の学生サークルの忘年会でセクハラ行為・未成年飲酒が発覚→無期停学4人(うち2人は未成年)、飲酒で未成年3人を含む12人が停学3日または訓告処分(朝日新聞北海道版2014年3月29日)
・小樽商科大学アメフト部で飲酒事故が発生、未成年部員1人が死亡→主将など幹部クラス8人が無期停学、2・3年生26人が2週間~1カ月の停学、2・3年生16人が訓告、1年生21人が厳重注意処分。部は廃止(北海道新聞2012年7月13日)
※各新聞社記事より筆者作成

2014年の東北大学では学生寮・明善寮で飲酒やそれに伴うトラブルが絶えないことから、寮の一時閉鎖を強行。

その後、翌年に改装した上で寮を再開します。その際は、

入寮する学生には、「敷地内で飲酒せず、酒を持ち込まない」「ほかの居住者や近隣住民に迷惑をかけない」などの約束を守るとする誓約書を、未成年を含む全員に、保護者との連名で提出させた。違反すれば退寮させられることもあると明記した。同じ敷地内にある「松風寮」の学生にも、明善寮の内部や共有エリアで酒を飲まぬよう求めた。
※朝日新聞宮城地方版2015年4月16日

このように、大学側は飲酒、特に未成年者の飲酒には強い姿勢で臨むようになっています。

神戸大学「BADBOYS」の飲酒問題は今後、解明されていきますが未成年者の飲酒が判明した場合、未成年部員も勧めた部員も厳しい処分が下される見込みです。

◆停学となった場合の影響は?

では、ここから停学・退学処分となった場合どうなるかを見ていきます。

まずは、停学となった場合から。

停学となると、当然ですが授業には出席できません。

1カ月未満であれば、挽回できるかもしれませんが2カ月程度だとかなり厳しくなってきます。さらに3か月以上となると、留年することがほぼ確実となります。

留年によって、就職で不利になるかどうかは本人の問題です。

ただし、金融・商社大手などを中心として留年者には採用のハードルを上げる企業があります(留学経験者は例外として優遇されます)。

◆退学した場合は高卒扱いに

停学よりも重い処分として退学処分があります。

この場合、経歴上は「神戸大学中退」では「高校卒業」扱いとなります。

もちろん、本人が「神戸大学中退」と自称するのは勝手です。

ただ、それで効力を発揮するのは学歴系インフルエンサー・ユーチューバーなどごく少数です。それらでも、「しょせん、高卒かよ」と言われかねないのであまりお勧めはできません。

転職エージェントのリクルートエージェントは、大学中退でも履歴書には書いた方がいい、と勧めています。

ただ、同記事にある2019年の採用担当者向け調査では大学中退者の学歴は71%が高卒扱いとしています。

家庭都合や病気療養、あるいは留学などであれば、中退の経歴も有効かもしれません。しかし、今回のような不祥事による退学処分だとどうでしょうか。

後述しますが、企業側も学生(または元学生)のことを調べるでしょうし、中退との記載が有利になるとは思えません。

そうなると、退学処分を受けた学生は高卒として就職するか、あるいは、再受験して他大学に入学するか、どちらもいばらの道となりそうです。

◆大学の処分に対しての異議申し立てはできる?

結論から申し上げますと、異議申し立ては難しいでしょう。

特に、今回の騒動については、動画・写真で証拠がはっきりしています。

それで処分を軽く、と言っても通る話ではありません。

2018年には交通事故とそれに伴う処分を巡り、信州大学の学生が信州大学に対して裁判を起こしました。

学生は2016年4月、交通事故を起こし、新聞配達員1人が死亡しています。

大学は無期停学処分として、2017年7月まで処分を続けます。

学生側は2017年3月に不起訴処分となり、停学解除されず、ゼミ登録ができませんでした。それによって卒業が2年遅れた、として処分無効と損害賠償を求めて大学側を相手取り提訴します(中日新聞信州版2018年9月11日)。

この裁判について、2020年2月26日、長野地裁松本支部は原告側(学生側)の訴えを認めず、処分についての無効請求を却下、損害賠償なども棄却します(中日新聞信州版2020年2月27日)。

◆就活の賞罰欄は無関係、だけど…

停学となった場合、就活はどうなるでしょうか。

まず、履歴書の賞罰欄に停学となったことを書く必要はありません。

刑事罰については書く必要がありますが、少年犯罪や民事事件は不要です。

そのため、今回の騒動で停学になったとしても、履歴書の上では判明しません。

ただし、です。

企業からすれば採用するに値する学生かどうか、SNSなどをチェックします。

このチェックを専門としている企業に任せるところもあります。そこまでしなくても、採用担当者が学生の個人名を各SNSで検索に掛ければ簡単に判明します。

そのうえで、学生の趣味や嗜好、性格などを確認します。

どこまでやるかは企業次第ですし、採用担当者の個人差もあります。

ただ、SNSで検索を掛けるだけなら簡単にできるので、「社としての情報収集はしていないが、個人的にどんな学生か、興味本位で検索することはよくある」とする採用担当者は多いです。

SNSは匿名でやっているから大丈夫、と考える学生の方、それは甘いです。

そもそも、ネガティブな書き込みは本人が隠しているつもりでも、実は隠れていないケースが非常に多いです。

学生本人は匿名としていても、書き込み内容やフォローしている大学・サークル・団体などからは個人が特定できやすいです。

実際に2011年には立教大学の大手百貨店内定者が、別の学生のレイプ事件について擁護する内容をSNSで発信。その後も、批判コメントに挑発的な対応をします。

すると、別のSNSで内定先などを記載していることが判明。内定先の大手百貨店にも批判が殺到します。

その結果、この百貨店は「この学生が入社することはない」と発表し、内定取消か内定辞退をしたことを示唆する発表をしました。

さらに、学生の迷惑行為等で反感を持った他の学生、あるいは見ず知らずの社会人(通称・特定班)が迷惑行為をした学生の裏アカウントを企業側に通報、ということもあり得ます。

◆給付型奨学金受給者は打ち切りも

迷惑行為をやらかした学生は就活も問題ですが奨学金も問題となります。

日本学生支援機構サイトによりますと、給付型奨学金については、退学・除籍処分(授業料未納によるものを除く)、3か月以上の停学処分の場合、認定が取り消され、処分を受けた学年の初日に遡って支給済みの給付奨学金の返還が求められます。

3か月未満の停学処分、訓告処分であれば、処分期間中の支給が停止に。処分明け以降に給付が再開されます。

◆デジタルタトゥーは死ぬまで付いて回る

ここまで、過去の停学事例や就活・給付型奨学金への影響、異議申し立てが可能かどうか、を見てきました。

ここまででも、悲惨な話ばかりです。

しかも、大学生活や就活を乗り切っても、その後の長い人生もこの迷惑行為が付いて回ります。

迷惑行為や関連の動画・投稿などは残り続けます。いくら本人が投稿を削除し、SNSのアカウントを停止しても同じです。

ネットから完全に削除するのはほぼ不可能ですし、そうなると、仕事や結婚など人生の分岐点に立つたびに、過去の迷惑行為が掘り返される可能性があります。本来なら問題なく進むところ、「あの人は迷惑行為の人だから」と言われてせっかくのチャンスも何度となく逃すことになりかねません。

このように、デジタルタトゥーが死ぬまで付いて回ることになります。

今の大学生はデジタルネイティブ世代であり、情報通信機器の操作などには上の世代よりもはるかに慣れています。そして、多くはデジタルタトゥーやSNS炎上の怖さを理解しているはずです。

しかし、バドミントンサークル「BADBOYS」の学生は、神戸大という難関大に所属していながらこうした事態を想像できなかったことが悲劇の始まりだった、と言えるでしょう。

もう一度繰り返しますが、関西風に言えば、アホではなくバカだった、としか言いようがありません。

◆新入生はサークル・部の吟味を

最後に、これから大学に入学する新入生に向けて書きます。

迷惑行為をしても恥と思わないサークルは神戸大学の「BADBOYS」だけではありません。残念ながら、どの大学でも存在します。

迷惑行為をしでかすサークル以外にも、カルト宗教やマルチ勧誘などを目的としたサークルも珍しくはないのです。

特に神戸大などの難関大学は狙われやすいです。

カルト宗教などの側からすれば、難関大学の学生は優秀ですし、サークルを入口にしてうまく取り込めば、いい人材確保になるからです。

当然ながら、大学側もこうしたサークルのリスクは把握しており、新入生に対して注意喚起をしています。

そこで新入生は、サークル・部活動を選ぶ際は、大学のガイダンス、あるいは大学サイトなどできちんと確認することです。

それから、入学式の後のサークル勧誘時期には複数のサークル・部の話を聞いたうえで検討しましょう。

今回の騒動で「サークル怖い」と考える新入生がいるかもしれません。

しかし、人間関係を広げる、大学に勉強以外の居場所を作る、などサークル・部活動のメリットは大きなものがあります。

サークル・部活動を一切しない、というのも、いかがなものか、と考えます。

一応の目安として、大学の部・サークルは、公認・登録・非公認、そしてインカレに分かれます。

大学公認の部・サークルは、大学が公認しており、部室などの拠点も大学内にあります。

部だとさらに活動費の支給があります。サークルの場合は大学にもよりますが活動費の支給は少額か、またはゼロです。

公認されているだけあって、長く活動している部・サークルが多数です。

一方、非公認のサークルは大学が認定していません。学生が自主的に運営しています。活動場所は学生食堂や学内の教室を借りる(学生なので無料)などしています。

公認と非公認の中間が登録サークルです。大学にもよりますが、公認する前の段階として活動内容を認め、部室を提供する、あるいはサークル新入生勧誘活動を認める、などがあります。この登録サークルから公認サークル・部に昇格するケースもあります。

インカレサークルは複数の大学生が加入するサークルです。活動拠点は大学内でもありますが学外に置くことが多くあります。

どれが良くて、どれが悪い、というのは一概には言えません。

大学公認の部・サークルは大学が認定しているので非公認よりもいい、との言い方も一応はできます。

ただ、非公認のサークルでもしっかり活動しているところもありますし、逆に公認の部・サークルが実は学生が少なく、ほぼ活動停止状態にある、というところもあります。

公認サークル・部でも飲酒事故や迷惑行為をやらかすことがあるのは上記に示した通りです。

学生の相性もあるので、こればかりは勧誘活動で複数の部・サークルの話を聞くしかありません。

ちなみに筆者(石渡)は、20年以上前に大学(東洋大学社会学部)に入学した際は、クイズ番組が好きだったのでクイズサークルに入りました。ただ、高校時代まで人気だった「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ)が終了しており、クイズサークルは斜陽期でした。私が入ったときは他の1年生は2人、2年生はゼロ。3・4年生が確か5人くらいでした。人数が少ないので活動自体も盛り上がらず、結果、半年程度で辞めた覚えがあります。その後、大学3年次に鉄道研究会に入り、こちらは楽しかった記憶があります。

◆新入生は被害者ではなく加害者になるリスクも

新入生が色々と考えて入ったサークル・部が未成年者への飲酒強要を含む迷惑行為をやらかす可能性もあります。

未成年者への飲酒強要は、生命を脅かすリスクもあります。強い意志ではっきりと断る必要があります。そもそも、飲酒の強要は強要罪(刑法223条)、酔い潰すために飲ませた場合は傷害罪(刑法204条)、死亡した場合は傷害致死罪(刑法205条)、酔いつぶれた人を放置すると保護責任者遺棄罪(刑法218条)、さらに死亡した場合は保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)などが成立する可能性があります。

大阪大学サイトより
大阪大学サイトより

そのため、危険を感じた場合は、店なら店員に、大学内であれば大学職員か警察に助けを求めるといいでしょう。

「それができれば苦労しない、場の空気を壊したくない」という新入生もいるはず。

その「場の空気を壊したくない」が問題です。

飲酒の強要が嫌、と思いつつ、場の空気を壊したくないとの思いから、何もしなかったとしましょう。あるいは、一気コールを一緒にする、などした場合、今度は被害者ではなく加害者側の一人、とも見なされかねません。

早稲田大学サイトより
早稲田大学サイトより

上記のように、大阪大学早稲田大学などは飲酒の注意喚起をサイトに出しています。

大学によっては新入生向けのオリエンテーションなどでも未成年飲酒について注意を促しています。

神戸大学「BADBOYS」の迷惑行為を投稿した男性は、投稿の意図について、

「ちょっと一線越えてるなと思って。新入生歓迎の時期なんで、新入生に対して気をつけようと。注意喚起という感じ」

と答えています(テレ朝ニュース・2024年3月20日公開記事より)。

まさにその通りで、この注意喚起は神戸大学だけでなく、日本のどの大学でも共通ではないのでしょうか。

追記(加筆/2024年3月21日8時)

神戸大生の迷惑行為について2013年のUSJでの迷惑行為についてもご指摘いただきましたので、該当部分に加筆しました。

ご指摘いただいた、ぷらっと様、ありがとうございました。

なお、2013年USJ騒動の際は「逮捕で停学3か月だったので逮捕されていない今回が重いと学生側から訴訟が起きる」ともご指摘いただきました。

確認したところ、2013年USJ騒動では学生は逮捕されていません(大阪府警が捜査し、その後、略式起訴)。

それと2013年の際は神戸大生は1人(中学時代の同級生2人と共謀)であること、今回はサークルぐるみ、かつ、継続性が疑われ、しかも未成年飲酒も絡む可能性があることから、2013年の停学3か月と同等か、それ以上となる可能性がある、と考えます。そのため、全体の主旨は変えていません。

いずれにしても、ご指摘いただきありがとうございました。

追記(修正/2024年3月23日9時20分)

バドミントン、バドミントンサークルなどが「バトミントン」となっていたので修正しました。SNS上でご指摘いただいた聖神邪飛影様、ありがとうございました。

追記(修正/2024年3月26日8時20分)

小樽商科大学を「小樽商業大学」と表記していたので修正しました。ご指摘いただいたyamaguchi様、ありがとうございました。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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