米、強力な「神風ドローン」をウクライナに供与する契約締結間近 米報道 ロシアのウクライナ侵攻半年
ロシア軍がウクライナに侵攻してから半年が経過する中、バイデン政権は、24日、ロシアの侵攻を受けたウクライナに対して、新たに、これまでの1回の支援額では最大となる3ビリオンドル(約4100億円)の軍事支援を行うと発表した。
22日には、米防衛ニュースサイト「ディフェンス・ニュース」が、ペンタゴン(米国防総省)のスポークスウーマンから得た情報として、アメリカが、30日以内に、ウクライナに「スイッチブレード600」という強力な神風ドローンを供与する契約に署名する見込みであると報じている。
神風ドローンとは「徘徊型兵器」とも呼ばれており、上空を徘徊してターゲットを発見し、地上官制システムから指令が来ると高速度で急降下、“神風”のようにターゲットに突入し自爆することで、ターゲットを破壊する兵器だ。
バイデン政権が「スイッチブレード600」10機をウクライナに送る予定であることは4月初めに報じられていたが、これまでは、それよりも小型軽量で小さなターゲットの破壊に適した「スイッチブレード300」を供給するに留まっていた。「スイッチブレード600」の供給が遅れていたのは、まだプロトタイプで、テストと評価を行う必要があるからのようだ。
「スイッチブレード600」は「スイッチブレード300」を上回る攻撃能力を持っており、装甲車や戦車など大型のターゲットの攻撃に有効とされている。「スイッチブレード300」は約2.5キロと軽量で、10キロメートル飛行可能、最大15分間巡航でき、ターゲットに時速160キロで突入する能力があるのに対し、「スイッチブレード600」は54.4キロと重く、40キロメートル飛行可能、最大40分間巡航でき、時速184キロでターゲットに突入する能力がある。また、対装甲弾頭も装備されている。両者ともリュックサックに入れることができるほど携帯しやすく、地上からタブレットで簡単にコントロールすることもできる。
ウクライナ軍は南ウクライナのヘルソンでロシア軍に反撃すると予測されているが、「スイッチブレード600」の弾薬搭載量と長い徘徊時間は、ターゲットを発見し爆撃する強力なツールになると見られている。
「スイッチブレード300はレーダーにダメージを与えることに使えるかもしれませんが、ターゲットがより装甲し、ロシア軍が野外から少なくなるほど、スイッチブレード600が必要になるでしょう。両者は同じ(スイッチブレードという)名前ではありますが、システムもターゲットも非常に異なっているのです」と米シンクタンク「民主主義防衛財団」のブラッドレー・ボウマン氏は今後、「スイッチブレード600」がウクライナ軍の助けとなる兵器になると「ディフェンス・ニュース」に対して話している。
また、ドローンのエキスパートであるニュー・アメリカン・セキュリティー・センターのサミュエル・ベンデット氏も「スイッチブレード600は“スタンドオフミサイル能力(敵の対空ミサイルの射程外から攻撃できる射程の長いミサイルのこと)”を提供する。ロシア側はいつ何時でも攻撃を受ける可能性があり、安全ではいられなくなる」と話している。
ウクライナもロシアも、ドローンを操縦する兵士たちが多数死傷しているが、「スイッチブレード600」のような、より遠隔なところで発射できるドローンを使えば、その状況は良くなる可能性もあるという。この神風ドローンのウクライナへの配送日は、契約がまとまり次第決められるもようだ。
一方のロシア側は、イランからドローンを購入する兆候を見せていると言われており、今後、ドローンによる戦闘はいっそう激化して行きそうだ。
(参考記事)
Delayed kamikaze drone for Ukraine on track for next month: Pentagon
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