米「今年の言葉」12選 “新型コロナと大統領選の2020年”を表す “トランプ氏の不幸”は蜜の味!?

2021年、新型コロナウイルスのワクチンの普及により集団免疫は達成されるのか?(写真:ロイター/アフロ)

 日本では、先日、2020年を表す漢字として「密」が選ばれました。

 アメリカでは、毎年、辞書を出版しているメリアム・ウエブスター社が、オンライン辞典での検索数と前年比増加率をベースに「今年のワード」を選んでいます。その結果、新型コロナウイルスに始まり、新型コロナウイルスで終わろうとしている2020年の世相を表すかのように、「今年の言葉(ワード)」には「パンデミック」(感染症や伝染病が世界的に大流行する状態)が選ばれました。

 世界の感染者数が8,000万人を突破し、死者数が175万人を超えている「パンデミック」は収束の兆しを見せず、感染拡大が続くばかり。12月28時点で、米国の感染者数は1,900万人超、死者数は33万人超、17人に1人が感染し、1,000人に1人が死亡しているという惨憺たる状況です。

 同社は「パンデミック」を含むトップ12の言葉を紹介していますが、“2020年のアメリカ”をよく表していると思うので紹介したいと思います。12の言葉中4つが新型コロナ関連、3つが大統領選関連の言葉となっています。

 以下、言葉→ワード、と表現しています。

新型コロナ問題で注目

パンデミック Pandemic

 「パンデミック」の検索が増えたのは、米国で初めて新型コロナの感染者が確認された1月20日。その後、シアトルの病院から、初めて、新型コロナ患者が退院した2月3日にはこのワードの検索数は前年比1,621%増となり、3月までには前年比4,000%増まで達し、WHOがパンデミックを宣言をした3月11日は2019年3月11日の115,806%増と2020年で最も急増した日となりました。コロナウイルスやCovid-19というワードは検索数が減少したものの「パンデミック」は過去10ヶ月間、検索リストのトップに近い順位を維持し続けました。

 新型コロナ関連のワードでは以下のワードも選ばれています。

コロナウイルス Coronavirus

 「コロナウイルス」というワードは、医療専門用語から一般の人々が使うワードへと瞬く間に変わったことで注目されました。このワードは、1月20日にアメリカで初の新型コロナ感染者が出て注目され始め、3月19日には検索数が最大に増加、今年は前年比162,551%の増加となりました。また、“Covid-19”(2019年に現れた新型コロナウイルス)というワードもわずか34日で辞書入りしました。

クオランティーン Quarantine (隔離)

 2月にクルーズ船で起きた感染爆発を機に、隔離を意味する「クオランティーン」というワードの検索数が増加、今年は前年比1,856%増の検索数となりました。

アシンプトマティック Aymptomatic (無症状)

 病気を持っているものの症状を見せていないこと、という意味になりますが、新型コロナウイルスの場合、無症状の感染者でも人を感染させるという特徴があることから、このワードは、前年比1,688%検索数が増加しました。

米大統領選関連で浮上

 2020年は米大統領選も世界的に注目されましたが、選挙関連のワードの検索も増加しました。

クラーケン Kraken (スカンジナビアの海に棲む神話の中の怪物)

 7月23日、シアトルに「シアトル・クラーケン」というナショナル・アイスホッケー・チームが誕生したことから、同日、このワードの検索数が128,000%増加しました。「クラーケン」とはスカンジナビアの海に棲む神話上の怪物のことです。

 「クラーケン」は、11月なかば、不正投票を訴えるトランプ氏サイドの弁護士のシドニー・パウエル氏が「クラーケンを放つ」と言及した時にも検索数が急増しました。この場合、「クラーケンを放つ」とは「トランプ票が削除されたことを示す証拠を出す」という意味で使われました。しかし、辞任したバー司法長官に「証拠が見つからなかった」と言わしめた状況を考えると、凄い証拠はなかったということかもしれません。

シャーデンフロイデ Schadenfreude

 「他人の不幸から得る喜び」という意味で、いわゆる「人の不幸は蜜の味」という意味に近いと思います。このワードの検索数は前年比24,800%増加しました。

 10月2日にトランプ氏の新型コロナ感染が発表された時、また、トランプ氏がバイデン氏に敗北したことがわかった時にこのワードの検索が増えたということですが、反トランプ派がトランプ氏の不幸を喜んだからでしょうか。

マラーキー Malarky(ホラ、たわ言)

 次期大統領のバイデン氏が以前から好んで使っていたワードで、ホラやたわ言という意味です。10月22日に行われた大統領候補討論会の時にも使われて、検索数は前年比3,200%増となりました。

 2016年の民主党大会の時も、バイデン氏は当時大統領候補だったトランプ氏について「彼はミドルクラスの人々のことを心配していると言っている。冗談じゃない。ホラだ」と発言していました。

人種差別問題で注目

 2020年は、白人警官に膝で首を押さえつけらて亡くなったジョージ・フロイドさんをはじめ、黒人に対する警官の暴力が浮き彫りにされた年でもありました。この事件を契機に検索されるようになったのが「ディファンド」というワードです。

 また、カントリーミュージックバンド「レディ・アンテベラム」が人種差別問題を重視してグループ名を改名したことから、「アンテベラム」の検索も増加しました。

ディファンド Defund

 ディファンド(出資を取り消すこと)というワードは前年比6,059%増の検索数となりました。フロイドさんの暴行死をきっかけに、全米で警官の暴力に対する抗議デモが起きる中、6月初めからこのワードの検索が増えました。警官の暴力に抗議する活動家は警察改革の必要性を主張し、その策として、ディファンド、つまり、この場合、警察に対する予算を打ち切るよう訴えたのです。

アンテベラム Antebellum

 6月、カントリーミュージックバンドの“レディ・アンテベラム”が“レディ・A”と改名した時に、「アンテベラム」というワードの検索数が急増。

 フロイドさんの暴行死で人種差別反対の抗議デモが全米で起きましたが、「アンテベラム」というワードはアメリカでは南北戦争以前を意味し、当時行れていた奴隷制を肯定しているという指摘もあったことから、“レディ・アンテベラム”は改名しました。また、9月に、このワードをタイトルにした映画がリリースされた時にも検索数が増加しました。

差別撤廃のために闘った偉人の死

 2020年は、差別を撤廃すべく闘ってきた偉人が他界した年になりました。そこで注目されたワードがアイコンです。

アイコン Icon

 7月にはアメリカ公民権運動の指導者として人種差別撤廃に尽力したジョン・ルイス下院議員が、9月には男女差別解決に尽力した米最高裁判事のルイス・ベーダー・ギンズバーグ氏が他界したことから、このワードの検索数が前年比2,205%増加。成功し、賞賛され、何らかの理想を代表している人物がアイコンと呼ばれています。

レジェンドの死

 バスケットボール界のレジェンド、コービー・ブライアント氏が、1月、ヘリコプター墜落事故で他界したことから、マンバというワードが注目されました。

マンバ Mamba

 コービー氏は、10年以上前、自身に“ ブラック・マンバ”(非常に素早い、危険な猛毒ヘビのこと)というニックネームをつけていたのですが、事故の翌日、このワードの検索数が66,366%増となりました。

 他には、irregardless(イリガードレス)というワードの検索数も増加しました。regardless(リガードレス=〜に関わらず)と同じ意味ですが、7月に、女優のジェイミー・リー・カーティス氏(映画「ハロウィン」や「ザ・フォグ」などで主演)がツイッターで、このワードが辞書入りしたと伝えたことから検索数が464%増加。しかし、カーティス氏の主張は間違いで、このワードが初めて辞書入りしたのは1934年とのことです。

 2021年はどんな1年になるのでしょうか? 

 新型コロナが少しでも早く収束し、世界の人々が日常を取り戻すことができる2021年になるよう願って止みません。

(参考)

Merriam-Webster’s Word of the Year 2020