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懐かしの昭和カレーが神保町に! 打ちたて麺の名店「麺や 七彩」が手掛ける至福の“黄色いカレー”

井手隊長ラーメンライター/ミュージシャン
「キッチン きらく」の黄色いカレーとかき氷

東京・八丁堀に「麺や 七彩」という名店がある。

注文を受けてから麺を打つ“打ちたて麺”が特徴で、自分のために目の前で粉をこねて麺を打ってくれるというのは特別感があり、待つ間のワクワク感もひとしおだ。

「麺や 七彩」の喜多方ラーメン
「麺や 七彩」の喜多方ラーメン

2007年に都立家政で創業し、2011年には東京駅一番街の「東京ラーメンストリート」に出店。2015年に出店契約を終え、八丁堀に移転し、打ちたて麺をスタートした。当時は誰もがあり得ないと思っていた打ちたて麺も、「七彩」のブレイクにより少しずつ広がっていき、今は空前の手打ち麺ブームだ。

神保町に「キッチン きらく」をオープン

キッチン きらく
キッチン きらく

そんな「七彩」が今年1月、新ブランドを神保町にオープンした。その名も「キッチン きらく」

今川焼きのようなオリジナルの「きらく焼き」と、昭和感溢れるカレー、喫茶メニューがメイン。夏は限定でかき氷もやっている。「七彩」の手掛けるラーメンから離れた新業態としてオープンから注目を集めている。店主の阪田博昭さんを取材した。

「もともと女性が店長を務める新店を作りたいなと思っていて、神保町にいい物件が見つかったので、ここをキッチン(食堂)にしようと思い立ちました。育児、労働環境などまだまだ日本では女性が活躍できる機会が少なく、有能な人々が埋もれてしまっています。そこで『キッチン きらく』の開店をきっかけに、女性の活躍の場を提供したいなと考えております」(阪田さん)

阪田店主(左)と店長・月舘志乃ぶさん(右)
阪田店主(左)と店長・月舘志乃ぶさん(右)

店長は月舘志乃ぶさんで、阪田さんとともにメニュー開発をしている。

テーマは以前から「七彩」が取り組んでいる「食文化の継承」だ。阪田さんはラーメンだけでなく全国の食文化に注目しており、特に歴史を大事にしている。

「キッチン きらく」のオープンは、西の食文化にある「カレー焼き」という焼きまんじゅうとの出合いがきっかけだった。

「簡単に説明するならばエクレア状の大判焼きです。数年前に、新潟の五泉市にある『アラモードキムラ』さんで出合ったのがそのきっかけです。昭和40年代ころ大阪で流行ったカレー焼き(アラモード焼き)の技術を習得し、新潟に持ち帰ったという老舗店です。

初めてその焼きまんじゅうを食べた時に美味しくて衝撃を覚えました。そしていつかはこのカレー焼きを関東で継承したいと考えていて、カレーの聖地である神田神保町でのチャレンジを決めました」(阪田さん)

きらく焼き(※七彩提供)
きらく焼き(※七彩提供)

このカレー焼きを再現したのが「きらく焼き」だ。

神保町は古き良き文化を大切にしながらも、新しいものも気持ちよく受け入れる町。カレー焼きを提供するには最高の環境だった。

昭和レトロな“黄色いカレー”

カレーライス
カレーライス

そして最高なのがカレーライスだ。

見た目は昭和レトロな“黄色いカレー”。懐かしさあふれる見た目だが、これが劇的に旨い。

「探しきれていないからかもしれませんが、神保町界隈を食べ歩いていた時に、ふと昭和テイストな黄色いカレーを食べられる店がないことに気がつきました。新旧融合の文化が根付く神保町で黄色いカレーを提供することが出来たら、年配者には求めている人も多いだろうし、若い人には新しい食文化として紹介することも出来る。ルーツを探求しシンプルで美味しい黄色いカレーを提供すれば、我々のテーマでもある食文化の継承にもなります。海外からも日本のカレーは注目されているので一石二鳥でもあります」(阪田さん)

豚の背脂から抽出したラードと国産小麦粉、SBの赤缶カレー粉で作ったルーに加えて、ターメリックを主体としたルーを別に仕込み、2種類のルーを合わせて使用している。ベースのスープは雄の親鶏のみの濃厚清湯スープに、向田邦子のエッセイなど古い文献を調べることでたどり着いた鰹だしを合わせたダブルスープ。ラーメンの経験を生かした動物系のスープの使い方が巧みだ。

単純に古いカレーにするのではなく、今の人たちが食べても美味しくなるように少しコッテリ感を演出している。

見た目は昭和だがインパクトバッチリ
見た目は昭和だがインパクトバッチリ

蕎麦屋のカレー風にならないように、ダシの風味を抑えて、みりんと醤油で使ったカエシを隠し味に使っている。片栗粉は使用せず小麦粉のルーとスープの濃度のみでトロミをつけ、濃度はトロリとサラリの中間にしている。

昭和カレーの懐かしさに心躍るだけでなく、ラーメン店ならではの技術が光っていて、ここにしかない唯一無二のカレーになっている。カレーの街・神保町の中でもオリジナリティをしっかり放っているのだ。

絶品かき氷

かき氷(桃)
かき氷(桃)

そして夏限定のかき氷。これも美味しい。

かき氷の価格が高騰している中、まず700円は安い。さらに、氷の削り方も巧みで、シロップに使う果物も提携農家から届いた極上モノだ。

このクオリティで700円は驚きだ
このクオリティで700円は驚きだ

「かき氷は非加熱シロップがこだわりです。果物とオーガニックシュガーを合わせ、非加熱で寝かせます。加熱をしないことにより果物本来の香りが保たれ、フレッシュでベタつかない後味のかき氷が出来上がります。あとは氷の温度を0度に保ち、薄く削ることで頭にキンッとこない口溶けの良いかき氷になっています」(阪田さん)

ラーメンだけにとどまらない「七彩」の食文化の継承。

これからもたくさんのチャレンジがこのお店から発信されるはずだ。

キッチン きらく

東京都千代田区神田神保町1丁目5 M2神保町1F

※写真は筆者による撮影

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ラーメンライター/ミュージシャン

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。 自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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