「賞味期限切れ食品買う?」に過半数が「NO」「お腹こわすから」と誤解している日本でようやく国の通知
2020年7月22日、消費者庁は、賞味期限の愛称・通称コンテストや食品ロス削減スローガン&フォトコンテストの募集開始を発表すると同時に「賞味期限の切れた災害備蓄食品について」というお知らせを発表した。
賞味期限については、「食べられなくなる期限」ではない、にもかかわらず、「切れたものを食べるとお腹をこわしそう」などという誤解がある。この誤解を解き、賞味期限によって発生する食品ロスを少しでも減らそうというものだ。
応募は2020年9月11日までで、ツイッター上でおこなわれる。
このコンテストと同時に発表されたのが、「賞味期限の切れた災害備蓄品について」というお知らせだ。
ここ数年だけでも地震や大雨による水害など、自然災害が国内で毎年発生してきた。そのたびに、賞味期限切れの備蓄食品の廃棄が報道されてきた。なにしろ総務省の調査によれば、国の機関が備蓄している災害備蓄食品ですら廃棄されているのだ。国が率先して捨てているのに、国民に対して「捨てるな」とは言えないだろう。
参考:
【4.14を前に】国の行政機関42%が災害備蓄食を全廃棄「食品ロス削減」と言いながら食品を捨てている
筆者も数多く、備蓄食品の廃棄とその活用を訴える記事を書いてきた。コロナ禍で、ようやくこのような通知が出たのはよかったと思う。が、イギリスやイタリアのように、賞味期限が過ぎた食品でも再利用し、資源として使い切れるような、食品ごとの具体的なガイドラインを出してもよいと考える。
なにしろ、テレビ番組で「賞味期限切れ食品を買うか?」という50人アンケートで、過半数が「買わない」と答え、その理由で「お腹をこわすから」と答える日本の消費者なのだ。義務教育で履修しているはずの「賞味期限」の意味を正しく理解しているとはとても思えない。
参考:
巣ごもり消費で疑問「賞味期限切れは捨てた方がいい?」英では賞味期限過ぎても捨てないガイドラインを推奨
とはいえ、「賞味期限(しょうみきげん)」と「消費期限(しょうひきげん)」では、読みでは「み」と「ひ」の一文字しか違わない。英語なら「best-before」と「used-by」でわかりやすいのに、日本語では、なぜこんな一般人が混同するような呼称をつけたのか。
食料自給率37%で、これだけ世界中からコストとエネルギーをかけて輸入し、フードマイレージ(食料を運ぶ距離と重さをかけた数値)が先進国の3倍近くも多い日本が、賞味期限切れ食品を五感で確認して活用しようと積極的に本気で呼びかけないのは、誰もがリスクを負いたくない「ゼロリスク」志向だからだ(「HPに書いてある」と言われても、それが一般に広く伝わるように伝えていないのなら意味がない)。伝えるなら、肚(はら)の底から伝えようとしないと、「仕事やってる感」を出すだけではとても伝わらない。
生鮮食品ならともかく、そもそも災害備蓄品は缶詰や乾パンのように、賞味期限が年単位と長いものが多く、品質が長く保たれるような容器包装や性質を持った食品が多い。にもかかわらず、これまで大量に廃棄してきた。気候変動も相まって、自然災害が増えている日本だからこそ、「食べられるものは徹底的に食べ尽くす」という本気度が求められる。
農林水産省は、2019年末、初の試みとして備蓄食品の寄付を実施した。そして今回、消費者庁が賞味期限切れの災害備蓄食品に関する通知を出した。
省庁が、こうして少しずつ行動を変えてきていることに一縷の希望が見出される。と同時に、国まかせではなく、市民一人ひとりが変わらなければ何も変わらない、とも思う。
参考情報
なぜ賞味期限切れの水は十分飲めるのに賞味期限表示がされているのか?ほとんどの人が知らないその理由とは