農林水産省初の試み、賞味期限が迫った備蓄食品を捨てずに寄付、食品ロス削減に繋げる

農林水産省の備蓄食品が「FUKUSHIMAいのちの水」に直接渡された(筆者撮影)

2019年12月26日、農林水産省が、賞味期限2020年1月に迫った備蓄食料のおかゆを、福島県のNPO法人、FUKUSHIMAいのちの水に寄付した。これまで、賞味期限の迫った備蓄食料の入れ替え時には、これまで保管していたものは廃棄していた。捨てないで寄付をする取り組みは、農林水産省としては初の試みだ。

農林水産省本省の地下一階倉庫から駐車場に運び込まれる備蓄食品(筆者撮影)
農林水産省本省の地下一階倉庫から駐車場に運び込まれる備蓄食品(筆者撮影)

「もう捨てる時代じゃない」

農林水産省 大臣官房参事官の秋葉一彦氏によれば、「物品管理法」という、国が所有する物品に関する法律があるため、これまで、なかなか備蓄の寄付には至らなかったそうだ。これまでは、災害用の備蓄食を入れ替える際には、保管していたものは廃棄していた。だが、「もう、捨てる時代ではない」ということで、今回の決断に至ったとのこと。

備蓄食品の積み込みを手伝う、農林水産省大臣官房参事官の秋葉一彦氏(写真右側、筆者撮影)
備蓄食品の積み込みを手伝う、農林水産省大臣官房参事官の秋葉一彦氏(写真右側、筆者撮影)

賞味期限残り1ヶ月のおかゆ12,000食を4団体に寄付

今回、農林水産省が寄付をしたのは、災害時のための備蓄食料の、レトルトがゆ(やわらかご飯、内容量280g)12,000食。賞味期限が来月2020年1月に迫っているもの。

寄付先については、2019年11月末、農林水産省がフードバンク活動団体等に対し、要望調査を行い、提供先を下記の通り、4団体に決定した。

NPO法人FUKUSHIMAいのちの水

社会福祉法人世田谷区社会福祉協議会

フードバンク桐生

NPO法人日本もったいない食品センター

受け取った理事長「国の寄付は画期的なこと。継続して受け取っていきたい」

今回、農林水産省から備蓄食品を受け取ったNPO法人、FUKUSHIMAいのちの水の理事長、坪井永人さんは、次のように語った。

「本当にありがたい。(福島県から)わざわざ取りに来た。国が(備蓄食品を)出したのは画期的なこと。東日本大震災や台風19号の経験から、災害時に備え、家庭内の備蓄をしっかりやっていきたいと考えている。そのためには、出てくるか出てこないかわからないような備蓄ではなく、ルートのしっかりした継続性のある備蓄が必要なので、今回のような行政からの寄付は、非常に重要。今後も継続して(寄付をして)頂きたい。東日本大震災以降、1,000世帯、20,000人の人たちが、今だに、私たちのところへ水をもらいに来ている。今回頂いた食品は、生活弱者の方へ、2020年1月の中頃までに全て配りたい」

NPO法人FUKUSHIMAいのちの水 理事長、坪井永人氏(右)(筆者撮影)
NPO法人FUKUSHIMAいのちの水 理事長、坪井永人氏(右)(筆者撮影)

省庁でも初?他の省庁も農林水産省に追随して欲しい

筆者は2011年3月の東日本大震災を機に食品企業を辞めてフードバンク(セカンドハーベスト・ジャパン)の広報を3年間担当した。筆者が会社を辞めたちょうどその頃、FUKUSHIMAいのちの水が設立された(2011年3月に設立、2011年12月に法人設立)。

今日の寄付の様子を拝見し、ちょうど2011年から2012年にかけて、福島県でたくさんの水が必要となり、いのちの水が活動されていたことを思い起こした。

農林水産省 食料産業局バイオマス循環資源課 食品産業環境対策室長 野島昌浩氏(写真右から2番目)へお礼を述べるNPO法人FUKUSHIMAいのちの水理事長の坪井永人氏(手前)(筆者撮影)
農林水産省 食料産業局バイオマス循環資源課 食品産業環境対策室長 野島昌浩氏(写真右から2番目)へお礼を述べるNPO法人FUKUSHIMAいのちの水理事長の坪井永人氏(手前)(筆者撮影)

備蓄食品の中には、容量が大き過ぎて用途が限られるものや、寄贈数が多過ぎて小規模な団体には受け入れが難しいものもある。だが、マッチングを上手くやれば、今回のように、捨てずに活用することができるはずだ。

備蓄食品が積み込まれたトラックを見送る農林水産省の方々(筆者撮影)
備蓄食品が積み込まれたトラックを見送る農林水産省の方々(筆者撮影)

農林水産省の方によれば、確認はしていないものの、おそらく省庁としても今回の備蓄の寄贈は初めてではないかとのこと。農林水産省に続き、他の省庁でも、食品ロスとして廃棄をせずに、必要とする組織や人へ渡して活用されることを願いたい。

参考情報:

2019年12月23日 農林水産省発表 災害時用備蓄食料をフードバンク活動団体等に提供します~農林水産本省での初めての取組~

NPO法人 FUKUSHIMAいのちの水

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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