新年会で食べ残しの持ち帰りを禁止する飲食店やホテルはもう時代遅れ その理由とは?

宴会で残った料理。持ち帰りを頼んだが、東京都23区内のこの店は禁じた(筆者撮影)

年末年始は忘年会や新年会のシーズンだ。外食の中でも食品ロスの発生率が一桁多いのが、披露宴と宴会。筆者が参加した宴会でも、料理が余ったため、持ち帰りの許可を店に頼んだところ、「衛生上の理由」で持ち帰りを禁じられた。

宴会ではビュッフェで出されたフランスパンも「持ち帰り禁止」。パンですら持ち帰り禁止なら、パン屋はどうやって商売するのだろう?(筆者撮影)
宴会ではビュッフェで出されたフランスパンも「持ち帰り禁止」。パンですら持ち帰り禁止なら、パン屋はどうやって商売するのだろう?(筆者撮影)

「またか」。食中毒のリスクを恐れ、このような対応をする飲食店は、日本では珍しくない。以前、中華料理店で開催された宴会でも、持ち帰りを頼んだら、「保健所からうるさく言われていますので・・・」と言われ、「全部、火を通してある料理なのに」と思ったが、持ち帰ることができなかった。

拙著『賞味期限のウソ』でも触れた通り、気温・湿度や季節、対象となる食べ物によって、リスクは異なる。だから、梅雨時期や真夏ならともかく、生(なま)ものではないものなら、臨機応変に、柔軟に対応すればいいのに・・・と思う。だが、飲食業ではアルバイトを雇用する場合も多い。曜日によって、時間帯によって、シフトに入るバイトが全員違うこともある。経営する側にとっては、人手不足や効率化もあり、関係者全員に細かく指導するのは難しく、「持ち帰りは一律NG」とした方がラクだし、リスクを背負わなくて済むのだろう。

そのような飲食業やホテルの方に知っておいて欲しい国の取り組みが3つある。

ビュフェで食べ残った食事(筆者撮影)
ビュフェで食べ残った食事(筆者撮影)

1、国は業種ごとに食品廃棄の削減目標値を設定している

持ち帰りを一律に禁ずる飲食店やホテルに聞きたいことがある。

国が、平成26年4月1日から、食品業界の業種ごとに、食品の廃棄量について、削減の数値目標を定めていることを知っているだろうか?

この数値目標は、平成31年3月31日まで、5年間の設定だった。

そして、引き続き、2019年度(平成31年4月1日〜)から2023年度までの5年間、一部改訂した食品廃棄の削減数値目標が設定されている。

農林水産省が設定している食品廃棄物等の削減数値目標より一部引用(農林水産省HPより)
農林水産省が設定している食品廃棄物等の削減数値目標より一部引用(農林水産省HPより)

外食産業だけではなく、コンビニやスーパーなどの小売業や卸売業、製造業についても細かく数値を設定している。

大手食品小売業や大手食品製造業の社内研修で、この数値目標について「知っていたか」をたずねてみると、驚くほど知らない。経営陣ですらご存知ないことも多い。

では、飲食店やホテルなどの外食産業は、具体的にどうやって食品ロスを減らせるだろうか?

発注ミスなど内部に起因するものを除けば、お客さんが注文した料理をすべて食べきることか、ドギーバッグ普及委員会が勧めるドギーバッグなどで食べ残したものを持ち帰ってもらうことが一案だ。そうすれば、お客由来のロスは無くなる。

筆者は、いつも食べ残しゼロを目指す運動「30・10(さんまるいちまる)」の手作りPOPを持ち歩いている。

30・10のPOP(食生活ジャーナリスト協会撮影)
30・10のPOP(食生活ジャーナリスト協会撮影)

これを飲み会の席のテーブルに置くだけでも、参加者の意識が変わって食べ残しが減る。

テーブルに置いてあるのが「30・10(さんまるいちまる)」のPOP(有田俊雄氏撮影)
テーブルに置いてあるのが「30・10(さんまるいちまる)」のPOP(有田俊雄氏撮影)

「環境省 3010」で検索するとPOPのダウンロードページが見つかる。

ビュッフェで食べ残された食事(筆者撮影)
ビュッフェで食べ残された食事(筆者撮影)

2、食品ロス削減推進法が2019年10月1日より施行

2019年5月24日、食品ロス削減推進法が全会一致で成立した。2019年10月1日に施行され、「食品ロス」という言葉は、広く一般にも知られるようになってきた。

2020年の春までには、政府の基本方針が発表される。その方針に従って、全国の自治体や民間企業が、ロス削減に向けて動くことになる。

だが、先進的な企業は、もう実践している。軽井沢ホテルブレストンコートもその一つだ。

ただ売れればいいのではない。食品ロス削減は、事業者の責務なのだ。

3、国が発表した、飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項

2017年5月には、4省庁の連名で、飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項が発表されている。

消費者庁・農林水産省・環境省・厚生労働省が連名で発表した留意事項には、飲食店が食べきりを達成し、食べ残しによる廃棄を防ぐために気を付けるべきこと、消費者が心がけるべきことが具体的に書かれている。

つまり、国は、食べ残しを持ち帰ることを禁じているわけではない。むしろ、食べきりを勧めた上で、それでも残ればお客の自己責任で持ち帰ることを推奨しているのだ。

宴会が閉会し、残った料理の持ち帰りを禁じられたため、満腹の中、懸命に食べる出席者(筆者撮影)
宴会が閉会し、残った料理の持ち帰りを禁じられたため、満腹の中、懸命に食べる出席者(筆者撮影)

大量販売・大量廃棄から「適量」の時代へ

以上、述べた通り、国は、食品ロス削減のための法律を施行し、食品関連事業者に対しては食品ロス削減の数値目標を設定し、外食産業に対しては食べきりを進め、食べ残しを減らすための持ち帰り留意事項を発表している。

「一律持ち帰り禁止」は、1986年から1991年にかけてのバブル(経済)の頃なら許容されたかもしれない。が、もうそれでは立ち行かない時代になっている。なにしろ先進国の中でも日本は食料自給率が37%と低い中、世界中から大量に食品を輸入して食資源を他の国から奪っておいて、結局はそれを国内で大量に捨てている。これを続けていたら、世界から非難されるのは当然だろう。

SDGs(持続可能な開発目標)は2030年までに、小売と消費レベルで世界の食料廃棄を半減する目標を立てている(国連広報センターHP)
SDGs(持続可能な開発目標)は2030年までに、小売と消費レベルで世界の食料廃棄を半減する目標を立てている(国連広報センターHP)

飲食店が持ち帰りを禁ずる言い訳として「保健所がうるさいから」というのがある。保健所は、上記3点を把握しているだろうか?全国での講演の反応から考えると、全て知っている担当者は少ないと思う。

自分の店さえよければいいのではない。地球の資源を考えて行動しなければならない。それが、ひいては、自社の評判にもつながってくる。

飲食店を抱える全国の各自治体は、全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会に参加することをお勧めする。全国の先進事例を知ることができる。2019年12月23日現在、416の自治体が参加している。

いつもは食べ残しが出る食事会で食べきりが実践できた(高山千香氏撮影)
いつもは食べ残しが出る食事会で食べきりが実践できた(高山千香氏撮影)

そしてわれわれ消費者は、外食のときには食べられる量だけ注文すること。新年会など、飲み会の幹事になったら、会の参加者の年齢や、会の趣旨を考えて、無理なく食べ切れる量だけを注文すること。そうすることで、参加費も値下げできる。当日は、幹事が積極的に食べきりを呼びかけること。それだけでも効果があることが、京都市の実証実験でもわかっている。

関連情報

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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