「金さえ払えば食事を残すのは客の自由」なのか   宴会が増える年末に考えたい、客が取るべき行動

飲み会(写真:アフロ)

外食チェーンのサイゼリヤでメニューを全品注文し、その様子をYouTubeにアップし、結局ほとんど食べずに残した行為が批判を浴びた。一方「金を払ったのだから食事を残そうが食べきろうが客の自由」という意見があった。本当にそうだろうか。

確かに、食べ残しが避けられない場面はある。

美味しいと思って注文し、実際食べてみたら、味が(好みに)合わなかった。

食べきれると思って食べてみたけど、思った以上にお腹がいっぱいになってしまい、食べきれなかった。

など、仕方がないものもあると思う。それを無理して食べて気持ちが悪くなったり、健康な体を害してしまったりしては、元も子もない。

だが、あくまでそれは仕方がなかった場合であり、食べられる量を頼んで食べきるのが基本である。

注文して消費しないのが「食べ物」以外だったら

今回のケースは食べ物だったが、たとえば提供する商品やサービスが食べ物以外の他のものだったらどうだろう。

こんな事態は考えにくいが、たとえとして考えてみると・・・

衣類:ファッション店で洋服を棚ごと買占め、それを着ないで全部捨てる。

住居:マンション一棟すべての部屋を買占め、誰も入居させないで放置する。

新幹線:ある時刻の全ての号車の座席を買占め、誰も乗せずに走らせる。

飛行機:ある便の座席全てを予約し、誰も乗せずに飛行機を飛ばす。

宿泊施設:ある日の夜、ホテルの部屋すべてを予約し、誰も泊めない。

結婚式場:ある日の式場すべてを予約し、誰も使わない。

食事の場合は全メニュー頼んでも数万円で済むかもしれないが、仮にこれらを実践しようとすると高額になるため、このような極端な例は考えづらい。が、万一このような事態が起きたらどうだろう。その商品やサービスを利用しようとしていた人すべてに迷惑をかける。商品やサービスを直接、顧客に提供する人たちだけでなく、その商品やサービスが出来上がるまでに関わった人たちや、それにかけられたエネルギー(電力や水、ガスなど)もすべて無駄になる。

写真や映像は「ネタ」と「金」になる。が・・・

先に挙げた衣類や住居や公共交通機関などは、高額であり、それを買い占めたとしても、“絵”にならない。おもしろくない。でも食べ物が大量に届く様子は、映像として見る人の興味や関心を惹く。でも、経済的にも時間的にも環境的にも無駄なことをしている動画で広告収入が得られるというのは、少しずれているのではないだろうか。

飲食店では食べ残しが発生する(筆者撮影)
飲食店では食べ残しが発生する(筆者撮影)

消費者は権利と同時に責任を持つ

今回の件では、「消費者の権利」が主張されていたが、消費者が持つのは「権利」だけではない。「責任」も生じる。

東日本大震災以降、「エシカル消費(倫理的消費)」という消費の仕方が注目された。エシカル消費とは「人と社会、地球環境のことを考慮して作られたものを購入または消費すること」である。

一般社団法人エシカル協会は、公式サイトで「私たち消費者が力の大きさを認識し、『買う』という行為をしっかりと考えて行なうことが大切です。毎日の消費行動は決して個人的な行為ではありません。何かを買う瞬間、人や社会、環境、ひいては未来にまで影響を与えています」と述べている。

環境のことまで配慮して商品や店を選ぶ消費者を「グリーンコンシューマー」と呼ぶ。イギリスで1988年に発行された「グリーンコンシューマー・ガイド」で提唱された考え方である。グリーンコンシューマーの10原則は次の通りである。

  1. 必要な物を必要なだけ買う。
  2. 使い捨て商品ではなく、長く使えるものを選ぶ。
  3. 容器や包装はない物を優先し、次に最小限の物、容器は再使用できる物を選ぶ。
  4. 作るとき、買うとき、捨てるときに、資源とエネルギー消費の少ない物を選ぶ。
  5. 化学物質による環境汚染と健康への影響の少ない物を選ぶ。
  6. 自然と生物多様性を損なわない物を選ぶ。
  7. 近くで生産・製造された物を選ぶ。
  8. 作る人に公正な分配が保証される物を選ぶ。
  9. リサイクルされた物、リサイクルシステムのある物を選ぶ。
  10. 環境問題に熱心に取り組み、環境情報を公開しているメーカーや店を選ぶ。

参考記事:グリーンコンシューマーの歴史(環境NGO 環境市民)

グリーンコンシューマーの原則でも、適切に購買し、適切に消費する、という消費者の責任が謳われている。どちらも持つので、どちらか一方だけを主張するのは偏っており、充分ではないのだ。

1988年に出版された、イギリスのジョン・エルキントンとジュリア・ヘインズの共著「グリーンコンシューマー・ガイド(The Greenconsumer Guide)」
1988年に出版された、イギリスのジョン・エルキントンとジュリア・ヘインズの共著「グリーンコンシューマー・ガイド(The Greenconsumer Guide)」

宴会の食べ残しは14.2%

平成27年度の農林水産省・食品ロス統計調査(外食産業調査)結果の概要によれば、食堂・レストランでの食べ残し率は3.6%、結婚披露宴では12.2%、宴会では14.2%となっている。農林水産省で食品ロスを担当している食料産業局バイオマス循環資源課食品産業環境対策室食品リサイクル班によれば、宴会での食べ残しの割合は、7皿に1皿分の量に相当する。

農林水産省 平成27年度 食品ロス統計調査(外食産業調査)結果の概要
農林水産省 平成27年度 食品ロス統計調査(外食産業調査)結果の概要

飲食店でアルバイト経験のある大学生239名にアンケートをとったところ、仕事として食べ物を捨てたことがある人が、全体の64%(152名)いた。

参考記事:飲食店でバイトする学生はどんな食べ物をどれくらい捨てているのか

食べきるための10か条

今回のような極端な事例はのぞき、普段、集団給食や外食などを食べきるためには、具体的にどのような対策が挙げられるだろうか。客側と店側と、双方の立場でできることがあると思う。実行しやすいものから順に、10か条にまとめてみる。

なお、ここでは、客としてできることだけでなく、食事を提供する店側としてできることも合わせて挙げている。われわれ客としては、食事を提供する店側がおこなっている努力を認識して食べ残し削減につなげたい、という意図である。

1、ご飯の適量(大中小)を店員に伝える

農林水産省のデータによれば、外食で残る食品群のうち、ご飯や麺などの主食が挙げられている。客の側から、「ご飯少なめにしてください」と店員さんに頼んだり、お店の側からお客に問いかけたりすることもできると思う。一部の飲食店ではあらかじめサイズが選べるようになっているが、メニューにはなくとも、口頭で依頼することは今すぐにでもできるだろう。実際、筆者がランチミーティングである寿司店でちらし寿司を注文したとき、店員が「ご飯の量はどのくらいにしますか?」と訊ねてくれたことがあった。

ご飯ではないが、珈琲チェーン店では量の違いによるサイズが4種類ぐらい用意してある。それに比例して価格が設定されており、客が選べるようになっている。

参考記事:飲食店でバイトする6人が語る「わたしたちが捨てている食べ物」

ドギーバッグ普及委員会が推奨するご飯の量の申告(ドギーバッグ普及委員会公式サイトより引用)
ドギーバッグ普及委員会が推奨するご飯の量の申告(ドギーバッグ普及委員会公式サイトより引用)

京都市の「食べ残し削減推進店舗」は平成29年(2017年)4月末の時点で518店舗となっている。小盛りサイズやドギーバッグを準備するなど、食べ残しを少なくするための8項目のうち、2項目以上を実践している店に対し、京都市が認定した店舗である。

京都市だけでなく、全国の市区町村で、このような認定制度が始まっている。市区町村では、ぜひ、このような制度を検討してほしい。客側としても、これらの店を積極的に選ぶ姿勢がのぞまれる。

2、店員に料理の内容や量の説明を依頼する

埼玉県所沢市の飲食店がテレビで紹介されたとき、初めて注文するお客に対し、「この料理はこういう味だから、初めてなら複数でなく、まず1つ注文したほうがいいですよ」と説明し、客が、注文数を減らす様子が紹介されていた。お店側から必ず説明してくれるとは限らないので、もし食べきれるか心配だったら、店員にたずねてみてはどうだろうか。

長野県松本市が提唱し全国に拡がった「残さず食べよう!30・10(さんまるいちまる)運動」のポスター(長野県松本市提供)
長野県松本市が提唱し全国に拡がった「残さず食べよう!30・10(さんまるいちまる)運動」のポスター(長野県松本市提供)

3、飲み会や宴会では幹事が皆に食べきるよう声がけする

10年以上前から福井県でも始まっていた「食べきり運動」は、長野県松本市が「30・10(さんまるいちまる)運動」を提唱し、全国の市区町村に広がり、環境省など省庁が啓発ツールを作成し、今や全国区となった。京都市の実証実験によれば、4種類の飲食店(一般的な居酒屋、高級店、食べ放題の居酒屋、中華料理店)で、幹事が「食べきり」を声がけした場合とそうでない場合とで食べ残し量を比較したところ、声がけしたほうが食べ残しが少ないという結果になった。声がけ一つでいいなら、コストはかからない。

長野県松本市が作成した食べきり運動「30・10(さんまるいちまる)運動」の啓発ツールのコースター(写真:長野県松本市提供)
長野県松本市が作成した食べきり運動「30・10(さんまるいちまる)運動」の啓発ツールのコースター(写真:長野県松本市提供)

参考記事:お花見や宴会で全国に拡がる「食べきり運動」の発祥はあの市だった

長野県松本市「30・10(さんまるいちまる)運動」

4、1個単位で注文する

横浜の中華街では、しゅうまい1個、春巻き1本など、1個単位から注文できるようなお店があると伺っている。1個単位で注文できる店であれば、客のお腹のすき具合や人数にあわせて頼むことができる。これは外食だけでなく、小売店がメーカー(製造業)に商品を発注する場合も同じだ。京都市のスーパー、八百一本館では、商品を、ケース単位でなく、1個や2個などのピース単位で発注できるようになっている。

参考記事:食品ロスを生み出す「欠品ペナルティ」は必要? 商売の原点を大切にするスーパーの事例

京都・八百一本館では商品をケース単位でなくピース単位で発注できる(写真:2017年6月、筆者撮影)
京都・八百一本館では商品をケース単位でなくピース単位で発注できる(写真:2017年6月、筆者撮影)

5、持ち帰りを頼む

食べ残ってしまったら、持ち帰りを店に頼んでみる。店側は、余った料理を持ち帰ることができるように、持ち帰り用の容器(ドギーバッグなど)を準備しておく。日本では、食品衛生のことを考え、一律すべて禁止の場合があるが、たとえば、生のものは禁止する、など、例外をつくることもできる。

ドギーバッグ普及委員会は、持ち帰りの基本は「自己責任」としている。

6、教育・啓発活動をおこなう

長野県松本市では、環境省と連携し、環境教育の実施の有無と学校給食の食べ残しとの関係を調査した。その結果、環境教育をおこなった小学校2校では、それぞれ10%台、30%台、食べ残しが減少した。一方、環境教育をおこなわなかった小学校では、逆に食べ残しが10%以上増える結果となった。

7、生き物の命に触れる

筆者の知人の学校給食の栄養士は、以前、学校に牛一頭を連れてきたことがあった。小学校1年生から6年生まで、先生にも協力してもらい、牛に触れたり搾乳をしたりという経験をおこなった。生徒たちは、牛でできているもの(ランドセルやベルト、カバンなど)を持ってきて、牛の命が使われていることを学んだ。牛乳が牛の血液からできていることを学ぶため、ペットボトル約200本に、赤く染めた水を入れて、牛乳も牛の命をいただいていることを知った。その結果、それまではとても多かった牛乳の飲み残しが激減したという。加工食品しか目にしたことがないと、食べ物が「命」からできている実感が得られにくいが、このような体験は食べ残しを防ぐことに繋がる。筆者が赴任したことのある青年海外協力隊では、渡航前の2-3ヶ月の訓練期間に、にわとりをさばく訓練があった。帰国してからも、協力隊OV(経験者)夫婦が、生きている鴨をさばいて食べるイベントを催し、子どもたちに命の大切さを学んでもらう機会を作っている。

にわとりは、1日に1個の卵しか産むことができない。24時間以上かけて1つの卵が生み出されると知り、にわとりの苦労を感じることができれば、卵も、今よりもっと大切に食べるようになるかもしれない。

8、数量限定にする  

京都の飲食店「佰食屋(ひゃくしょくや)」は、一日百食限定。売り切れたら店をしめる。卵の割れたものや、野菜の切り方を間違えたものなどは、店員たちの「まかない」としてすべて食べきっている。ご飯も、以前は食べ残しが出た時期があるそうだが、微妙に量を調整し、今はちょうどよい量にできたという。牛肉もまとめて仕入れ、すき焼きの店・肉寿司の店・ステーキ丼と3種類の店で、それぞれに適した部位を、無駄なく使い切っている。

参考記事:なぜシングルマザーや障害者も働くことができるのか 一日百食限定、京都女性社長の店から働き方改革を問う

京都・佰食屋のハンバーグ(写真:佰食屋提供)
京都・佰食屋のハンバーグ(写真:佰食屋提供)

9、味を向上させる

東京都足立区は、9年前の平成20年(2009年)から「おいしい給食」と題して、給食の味の向上を目指し、実践してきた。その結果、小中学校106校での食べ残し量(平均値)は、2009年に11.5%だったのが、2016年現在では4.2%となっており、3分の1に削減できている。

足立区は、味の向上だけでなく、喫食時間を確保する日を定期的に設ける、区内の小中学生を対象に学校給食メニューコンクールを実施する、中学生が田植えや稲刈りを体験し、そのお米を給食で提供する、月1回、旬の野菜を使った給食を提供する、地元の野菜である小松菜を使った給食を提供するなど、幅広い取り組みをおこなっている。

東京都足立区が平成20年から始めた「おいしい給食」(東京都足立区ホームページより引用)
東京都足立区が平成20年から始めた「おいしい給食」(東京都足立区ホームページより引用)

10、客の好みやその日に体調にあわせて提供する

2017年10月に開催された第一回食品ロス削減全国大会では、筆者もプレイベント(9月・10月)で2回登壇した(主催:長野県松本市、全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会、共催:環境省・農林水産省・消費者庁)。

パネルディスカッションでは、長野県の軽井沢ホテルブレストンコートが、食品ロスを削減するために取り組んできた内容を発表した。結婚式の披露宴では、幅広い年齢層の方が参列する。ブレストンコートでは、当日の食事は選択制としているそうだ。洋食・和食のどちらかを選ぶ。デザートも複数の中から選ぶ。肉料理や魚料理も同様で、量も軽めのもの、しっかりしたものを、参列者自身に選んでもらうことにより、食べ残しがなくなってきた。食べ残し量は、以前よりも13%削減でき、満足度も上昇したと発表された。このような取り組みはハードルが高そうだが、当日の発表では、これまで蓄積してきた経験値から、ある程度は予測できると話されていた。

軽井沢ブレストンコートは、この他にも、一つのテーブルに一人のシェフが担当としてつく「ワンテーブルワンシェフ」や、ビュフェ(またはビュッフェ・ブッフェ)台の料理量のコントロールや食品ロス量を最適化させる取り組みなどをおこなっている。

われわれ客側は、食事を提供する側がこのような努力をしていることを意識し、できるだけ食べきるようにしていきたい。

以上、これらだけでなく、ほかにもたくさんの対策はあるが、10項目にまとめてみた。

なお、予約しておいてドタキャンする、連絡せずにキャンセルするなどのマナー違反が発生していて、飲食店を困惑させているが、このような行為は、言うまでもなく論外である。

農林水産省本館6階エレベーター横に展示された全国の食品ロス削減啓発ツール(写真:農林水産省提供)
農林水産省本館6階エレベーター横に展示された全国の食品ロス削減啓発ツール(写真:農林水産省提供)

農林水産省環境省消費者庁の3省庁と全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会が連携し、12月1日から外食時の「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンを始めている。忘年会・新年会シーズンの、平成29年(2017年)12月1日から平成30年(2018年)1月31日まで実施予定。全国の取り組みのうち、食品ロス削減啓発資材の特色あるものの特別展示を、農林水産省の6階中央エレベーター横と北別館入口で、今月いっぱいおこなっている。

農林水産省北別館入口に展示された全国の食品ロス削減啓発ツール(写真:農林水産省提供)
農林水産省北別館入口に展示された全国の食品ロス削減啓発ツール(写真:農林水産省提供)

参考記事:外食時の「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンの実施について(農林水産省・消費者庁・環境省・全国おいしい食べきり運動 ネットワーク協議会 共同リリース)

環境省が制作している30・10(さんまるいちまる)運動の啓発ツール(筆者撮影)
環境省が制作している30・10(さんまるいちまる)運動の啓発ツール(筆者撮影)

消費者には権利だけでなく義務もある

店側だけでなく、お客の側も、食べきる努力をしなければならない。「金さえ払えば、残そうが何しようが客の勝手」というのは、消費者の「権利と義務」のうち、「権利」だけを主張したもので、偏りがある。口に合わなかった、量が予想より多過ぎたなど、致し方ない食べ残しはともかく、食べきらない前提で食べきれないほどの量の食事を注文し、食べ残すのは、消費者の義務を果たしていないのではないだろうか。