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コンビニ3社オーナー5名に訊く「ポイント還元の実質値引き、どう思う?」見切りすれば5年で2000万増

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
コンビニオーナーによる座談会。議論はポイント還元のみに留まらなかった(筆者撮影)

大手コンビニ各社が、消費期限接近のおにぎりや弁当にポイント付与する施策を発表した。マスメディア各社は「コンビニもついに食品ロス削減へ本格始動」の論調で報道している。2019年6月19日付の朝日新聞には食品ロス対策、コンビニ各社も動き始めた 動画で解説がアップされた。

全国で年間20.9万トン発生していると推計される(2013年、環境省)コンビニの食品ロス。日々捨てる作業をしている現場の加盟店は、どう感じているのだろうか。コンビニ3社のオーナーと元オーナー、5名に話を伺った。

ファミリーマート2店舗のオーナー、高中隆行さん

千葉県内でファミリーマート2店舗(四街道駅北口店・千葉南町三丁目店)を経営するオーナー高中隆行さんに伺った。

高中隆行さん(高中隆行さん提供)
高中隆行さん(高中隆行さん提供)

既に見切り販売を実施している当店からすると、今回のポイント還元は、わずか5%引き。はたして完売できるのだろうか?と思います。当店では最大50%の現金値引を実施しています。

多くのオーナーが指摘していますが、ポイントカードを持っていないお客様にとって、ポイント還元ではメリットがありません。ポイント還元を口実に、本部から加盟店へ仕入れの強要はないでしょうか。コンビニ業界は人件費などの間接コスト意識が低いと感じています。

出典:高中隆行さんの言葉

次に、高中さんとは違う企業のオーナー、Pさん・Qさん・Xさんを訪ねた。今回の施策を含め、日頃感じていることについても伺った。

今回の消費期限接近おにぎりへのポイント付与策をどう考えるか

オーナーPさん(以下、P):ローソンが(消費期限の近づいたおにぎりや弁当にポイント付与すると)発表して、その後、セブンもやると読売新聞が書いて、その日のうちにこれ(FAX:読売新聞の報道について)が流れてきました。

―セブンさんは、もともとポイント付与やる予定なかったと(メディアから)聞いているんですが。

P:僕も全然(聞いてません)。本部がですか?

―そうです。

オーナーQさん(以下、Q):うちの担当に聞いたんですが、何にも聞いていませんという話でした。

―5%(ポイント付与の策)はいかがですか?この雑誌(週刊ダイヤモンド、2019年6月1日号、特集「コンビニ地獄」)に「効果は薄い」と書いてありますけれども。

Q:nanaco(ナナコ)の(カードを持っている)お客さまにしか恩恵がないでしょう? 本部がかぶるべき販促コストを抑えるために、巧妙な話ですね。

あるメディアで、5%の施策がアナウンスされると同時に「コンビニ本部の対応策としたらよくやったんじゃないの」と受けとめられたそうで。だからマスコミ対策としての・・・

―パフォーマンス、みたいな?

Q:その辺が相変わらず上手という印象ですね。

―ローソンの記者会見のあとメディア(出演時)に伺った話では「セブンは何も考えていなかった」と。「ローソンがやるということで(記者会見当日に)ぶつけてきた」と。

Q:ローソンはポンタカードとdポイントカードでしたっけ?

―そうです。100円当たり5ポイントが付く。今までは1ポイントだったけど、16時以降、シールが貼っている弁当やおにぎりを買うと、5ポイントが付くと。さらに5ポイントがこども支援への寄付、社会貢献。

Q:合計10%ですね。

見切りすれば1店舗で400万円、5店舗で2,000万円、実入りが増える

P:僕は見切り前は(月に)60万(円分の食品を)捨てていたんです。(見切りする)勇気がなかった。やると決めて、どんどん(廃棄が)一桁になっていって、(廃棄は)減っていった。

本部は、経済的側面では、忠誠心がないとかお客さまが悲しむとか抽象的なことを言う。環境的側面では、店を太陽光パネルにした、パッケージを省エネタイプにした、間伐材で箸を作った、食品ロスに目がいかないようにマスコミにリリースする。そんなかっこいいことに付き合っていたら、僕らは生きていけない。10円でも20円でも欲しいのが経営者です。

Q:Xさんは見切りはされているんですか?

オーナーXさん(以下、X):いや、もうすべきだと真剣に思うんですが、どういう手順で踏んでいったらいいかなと。

Q:僕は見切りやりだしてすぐ効果が出だしまして。毎日(廃棄が)2万、3万円ぐらいだったのが1万になり、5,000円になり、今、1日2,000〜3,000円ぐらいで。

X:最低時給の高騰、政府の時給1,000円計画で、毎年5%以上ずつ上がっている。人が集まりやすい時給にするには、どこかに原資を求めていかなければならない。使えるものは全部使って、本部の言うとおりと一般論程度では太刀打ちできない。

消費期限の手前にある「販売期限」が切れたため廃棄する弁当類(2019年3月、大手コンビニオーナー提供)
消費期限の手前にある「販売期限」が切れたため廃棄する弁当類(2019年3月、大手コンビニオーナー提供)

「364日は他の”恵方巻き”の廃棄がある」

Q:見切りすることによって、年間400万の利益を出していらっしゃる事例もあります。

参考:「見切り販売はしたほうが儲かる」 コンビニ11店の損益計算書を分析

X:フードロスという問題が、一見、利益には関係ないけれども、実は密接に関係してくるなという記事を読ませてもらって。ものすごい取材力だなという。加盟側の内側の人からすると、外の方がよく調べるな、みたいな。本当にもう感服します。

―ありがとうございます。何かきっかけがあって、見切りをされようと思われたんですか?

X:ずっと前から思っているんです。

―どのくらい前?

X:ずっと前から。調理麺を20〜30個捨てるとか・・・恵方巻がクローズアップされていますけれども、年に1回じゃないですか。364日は「他の恵方巻」があるんですよ。大問題なのは、その364日をどう詰めていくかということで。天候もありますし、簡単じゃない。ちょうどいい発注しろと言われても、社長がやっても不可能。

(廃棄が1日)3万、4万、5万。理不尽。社員も増えて、その家族のことも考えると、経営者としては逃げられない。本部からどう言われても、見切り販売には着手していかないと。

2019年2月3日21時台、コンビニで売れ残る恵方巻き(筆者撮影)
2019年2月3日21時台、コンビニで売れ残る恵方巻き(筆者撮影)

Q:今回、法律整備したじゃないですか。井出さんがひたすら頑張って頂いてできたことでしょう。それを横目で見ながら、今回の5%のポイント還元とかいう話を・・・。

政府の施策や世間から見て、いかに世間受けが良くなるかってことに対しては、今回は迅速に対応したと思うんです。

本部から、本当の経営の改善のための施策は出てこないと思わないといけない。とずっと思っています。

「人にされるぐらいなら(仕方ない)出店」

X:ドミナント(集中的に出店すること)は、(オーナーの)知り合いもいっぱいいますし、話を聞いています。「すぐそばに(店)つくるので(もう1店舗)しませんか?」と(本部に)言われて、泣く泣く、人にされるぐらいなら、と言って・・・。

P:2号店?

X:(自分の代わりに)家族を出そうと。そういう出店を「人にされるぐらいなら出店」と言っているんです。

(本部は)ずるい。「最初にオーナーさんのところに話は持ってきましたので、しないんだったら違う方にしますよ」と言われたオーナーは、家族のことも考えてしまうし・・・

Q・P(二人とも):(同じ話は)いっぱいあります。

X:そういうパターンですよね。この4~5年、オーナーが見つけにくくなった。最初に話をオーナーさんのところに振る。いい人そうじゃないですか、その方のことを考えて、みたいな。そういう拡大の仕方(ドミナント)ですごい苦しんでいる人を僕はいっぱい知っているんで。

Q:ロマンを持って頑張っていらした方が、オーナーを辞められたんです。一生懸命、2号店を出すために成績つくって頑張っておられたにもかかわらず、あざ笑うような、えげつないことをされてぶち切れた事件もたくさんあるんです。

どんどん(オーナーの)なり手が減ってきて、「近所に出すよ?嫌なら他の人にやらすけれどもどうよ?」という言い方をするパターンが増えています。

もう1店舗を開店するに当たって、身内で適切な人材がいればいいです。いない場合、広告打って募集して、お互い初めて会って付き合いだした。ところがいざやってみたら、ここまでハードな仕事だと思わなかったということで、半年と持たず、辞めていっちゃった。という場合、こちら(の夫婦)がどちらか(の店)に行かなきゃいけない。維持管理レベルが落ちていく。穴埋めのためにヒイヒイ言って回らざるを得なくて共倒れ的になっていく事例がたくさんあります。

「見切り禁止していない」と本部は言うけれど・・・

―これ(週刊ダイヤモンド)にも載っていたんですけれども、社長が「見切りを禁止していない」と言うのは、どう思いますか?

(見切り販売をやめさせるよう言うことは)絶対にありません。明確に否定します。店の経営にとっていいことを本部の経営指導員(OFC)は言いますから。暗に(やめるように)も言いません。価格をいくらにしろとは、我々からは言えないわけですから。(本部が価格を指定するとの認識は)大いなる誤解ですよ。もし、言っていたら、とんでもないことです。

出典:セブン永松新社長が断言、「ニーズがなければ24時間はやらない」

Q:今さら今さら。

参考:なぜコンビニは「見切りするより食品を捨てた方が本部が儲かる」の?見切り販売をさせない3つの事例とは

P:今さら。読売新聞に一面で出た日に、ローソンが社長から発表をやっているじゃないですか。

X:何日でしたっけ?

―5月17日。

X:17日の日の夕方のニュースでは、ローソンの社長がアナザー・・・・・・。

Another Choice(アナザーチョイス)。

X:Another Choiceを発表しているんですよ。すっぱ抜かれたんじゃなくて、リークしていると思うんです。ローソンが先行しているんじゃなくて、ローソンとセブンがそういう方向に行ったニュースにするために、自分で流しておいて、そんなの聞いていないとかいう話なんですよね。

「おいしいものを10%現金で引くのに、おいしくないものを定価で売ってポイントで返すのは違和感」

X:僕が思うに、中華まん10%引きセールとか、断続的に、雨嵐のように、キャンペーンをねじ込むじゃないですか。おいしいものを10%引いていかがですかという商売はいいと思うんですが、おいしくないといえば語弊がありますが、残り物に同じ価値があるのかといったらないと思うんです。

おいしいものを10%現金で引くのに、おいしくないものを、しかも定価で売ってポイントで5%(返す)というのは、ものすごく違和感があって。

お客さまに対して真摯(しんし)じゃないと思うのは、カード持っていない方は何の恩恵もないんですよね?見切り販売とは全然(違って)効果も低いし。お客さまのことを選別している点で、ものすごく腹立たしいというか。

P:1年前に、5%(ポイント付与)は、九州でやっていたんです。で、九州から「こんなの失敗している」って情報が入っていましたもんね。30円、50円、弁当(値)引いてるほうがどれだけ効果があるだろう?という情報が流れていたから、もう論じるまでもなく。

X:そうですよね。5%ポイント還元っていうのも、お客さまを限定して選別して、おいしくないものを少しだけ引いて食べさせるというのは、上から目線というか、こちら側の都合主義で。本部が対外的にフードロスに即急に対応しました、みたいな。出席取りに行っただけで授業は聞いていないみたいな話。

Q:アリバイ作りですね。

X:アリバイでしかなくて。それを活字にすると、何か対応しているかのような文章になっていくという。

Q:2009年の公取(公正取引委員会)の排除措置命令を受けて、何年かたってから、システムマニュアルに見切りのテクニックが追加で載っている話はご存じですか?

P:これでしょう?2009年に本部が急きょ作ったんですよ。

時間管理の商品(期限が短いデイリー食品)は、販売期限の1時間前。

日付管理商品(賞味期限の長い食品)は、販売管理の3時間前が目安。

サービスワゴン、オリコンに乗せて、売り場に行き、(見切り)作業を開始しますと。販売期限の1時間前なんて守っていたらできませんよ。できない。絶対できない。

Q:鼻で笑っちゃいましたよ。読む気もしないですけれども。お客さん目線で発言すると、同じ鮭のおにぎりが、こちら定価で140円。こちらは、ちょっと古いけど110円ですと。

P:30円引きでね。

Q:(新しくて高いのか、期限が近づいてて安いのか)どちらを買いますか?と、お客さんに選択権を委ねるんです。今すぐ食うから安い30円引きでいいじゃんと。

P:家族で刺身食べようかという時、スーパーで「すぐ食べるからこっち(値引き品)でいいか」と。それ(値引き)を僕らがやったら何で怒られないといけないの?見切りやったら客が減りますということは、さんざん聞いてきたんですよ。客が離れていくとかロイヤルティーが下がるとか。そんなこと1ミリもないですよね、Qさん?

Q:ないです。

P:やったことのない人が、上司の命令を受けて見切りさせないようにしてこいと。上見てしか仕事してないからトップが気に入ることをやる。自分たちのロスチャージの取り分がなくなるから。「見切りをやると、お客さん離れますよ、他のオーナーさんに迷惑掛けますよ」と。

研修で教えられるこのポイント。

「いつでも欲しいときに欲しい商品が欲しいだけあるように努めましょう」

研修で最初にたたき込まれるんですよね。もう、宗教のように。

2009年に公取(公正取引委員会)が6月22日に排除措置命令を出したとき、本当は(見切り)させたくないけども公取から雷が落ちるから無理やり作ったような感じなのよ。だからめちゃくちゃ(見切りを)やりにくくしてあるんです。やってもらってもいいけれども、そんなことしたら、お客さんにニーズに基づく品ぞろえが合っていない。そんなことばっかり書いているんですよね。そんなので売り切れたら誰も食品ロスなんか出さないですよ。

最初に刷り込まれてしまうんで、夜中の3時におにぎりを買いに来た人に、なかったら申し訳ないなと、最初はものすごく考えるんです。もう(その考え方は)取っ払わないと、Xさん、絶対(廃棄は)減りませんよ。売り切れてもいいねぐらいでないと、夜中の3時に来たって、ないものはないぐらいに思わないと。

PさんとQさん(筆者撮影)
PさんとQさん(筆者撮影)

食品ロスより「機会損失(販売機会を失うこと)」が合言葉

X:機関紙がありまして。最初のページは社長の言葉が2枚抜きで必ず載るんですが、「機会損失」という4文字が載らなかったことは一度もないんです。その機会損失が神髄。支えている4文字で。これさえ言っていけば自然と金が入ってくる。発注さえすれば(金が)入ってくる。

大手コンビニオーナーに配られる機関誌(筆者撮影)
大手コンビニオーナーに配られる機関誌(筆者撮影)

P:機会損失は目に見えないもんじゃないですか。廃棄の損失は目に見える。数字で。目に見えないものをいつまでも追いかけていて、機会損失、機会損失と言っているんだったら「ごみを出せ」と言っているのと一緒。

お客さまに迷惑掛けたら申し訳ない、みたいなことを最初に刷り込まれてしまうんで。死ぬまで24時間やって、商品を毎日2万3万捨てていないと駄目なと、これは切り替えないと、と思ったのが(見切りの)きっかけ。もったいないから。

参考:

50食しか売ってはいけない!働き方のフランチャイズ目指し 売上増や機会損失からの脱却と従業員の幸せ

Pさん・Qさんが店頭で見切りをする時に使っている機械(筆者撮影)
Pさん・Qさんが店頭で見切りをする時に使っている機械(筆者撮影)

「売った数は出ても、その裏で捨てた数は出ない」

X:情報分析も、販売に関する情報は事細かになっていますが、いくら廃棄になっているかは「電卓でやってください」なんですよ。急にAI導入して対応すると言っているけれども、15~16年同じシステムにしてきて、今さら、ちゃんちゃらおかしいよな、と。

Q:販売数は出ますが廃棄数は出ないでしょう?

X:そうなんですよ。納品数と販売数しか出ないんで、廃棄数は計算しないと分からない。

Q:デイリー品の場合、「100個売った」といっても、納品200個で廃棄100個かもしれないし。各店をあおるためのツールとしては使いますが、食品ロスに対しては、本部は加盟店にデータを提供しないということです。

P:これが機関誌。

X:機会損失のオンパレードなんですよね。

P:こう書いてあります。

「米飯の廃棄は多くても1万円程度ですので、廃棄ロスより商品欠品するほうがお客さまに失礼だという意識のほうが強かったと思います」と。

廃棄よりも欠品を防ごう。おにぎりお弁当がなくなってはいけないと。1万円程度で廃棄が少ないと考えて宣伝しているわけですね。これ見て「うちはまだ1万円なら廃棄は少ないほうかもしれない」と信じるオーナーもいる。

SDGs(持続可能な開発目標)と載っているのも腹が立って腹が立って。(SDGs)バッジ取れって。

SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHP)
SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHP)

2009年以降は「見切りやってもいいですよ」という説明を新人オーナーにしています、というパフォーマンスの書類です。

内容は一緒。こうです。

「売れ残り、廃棄ロスは、大きな原因はお客さまのニーズと仮説に基づく商品が合っていない。陳列や販売の仕方に問題があると考えられます。仮説を立てることで発注精度を高める。欲しいときに欲しいものがあることが大切です。仮説が外れた場合は、声掛け、試食等で売り切る努力により、食品ロスを最小限にすることができます。」・・・・・できるかい!

「見切りは廃棄ロスの減少につながることもありますが、同一商品の価値が同時間帯に、店舗により異なること(一物二価)はよくない」と。本部は「見切り止めてませんよ」と言いたいわけですよね。それでもやりますか?と、ずっと言い続けているんです。

X:今回の、ポイント5%還元の言い訳の社長の第一声が「価格は加盟店が決めるものだから今回のは値下げ処分ではございません」「値段は加盟店さまが決めるもんです」と言ってるから、じゃあ(見切りしても)何にも問題ないなと思って。

―見切りに踏み切ろうというモチベーションは、たとえばオーナーが病気で入院されて人件費が出せないとか、いろんなことが背景にあると思うんですけど、Xさんはどんなことですか?

X:法人経営を真摯に考えると、普通の会社にしたい、という思い。儲かるどうこうでなくて、普通のことをしたい。見切りも普通のことだろうし、社会保険も有給(休暇)も普通。やったから褒められることでも何でもなくて。

コンビニのイメージはものすごく下がっている、毀損(きそん)していると思うんです。人手が足りない、求人しても来ない。本部があくまで今のやり方を踏襲していく、現在のスタンスを変えないとなると、正論を言う人の記事の方が、ずーっと載っていって。

買い物には行くけど仕事では行かない業界になったときにはもう終わりだなと。泥船に一緒に乗ることはないという思いが強いんです。

時給も上げて問題提起もしていきたいし、人も集めたい。私らのためにもなるし地域のためにもなる。コンビニ(企業)が好きというのもあるんですよ。

普通の会社にしたい。責任者だから。80、90(歳)になったときに、体は動かないし、どうしようもないけど会社は普通じゃないとなると、もう最悪だなと。

Xさんと、Xさんの店の店長(筆者撮影)
Xさんと、Xさんの店の店長(筆者撮影)

捨てる食品にチャージをかけて利益を得る

P:捨てるものにまでにチャージをかけて暴利をむさぼる。捨てたって、本部は何ともないから、お客さんを味方につけて、「いつ来てもいいようにどんどん物を置きなさい」。僕らはもうないがしろで、無償の奉仕しないといけませんよね。

―マスメディアに対しても広告費を払っているでしょう?いろんなところで忖度(そんたく)が生まれているんですよ。

Xさんの関係者(筆者撮影)
Xさんの関係者(筆者撮影)

「食品ロス削減推進法」に期待すること

X:処分を自費でするとか、何十万必要ですってなった瞬間、廃棄は下がる。自治体の焼却場を使わせないとか。

P:企業責任として何かしないと罰則を作る。店側はインセンティブが付く。一日1万円以上の売価の廃棄を出した場合は企業に対して課徴金を科す。

バーコードラベラーが欲しいんです。スーパーで、時間になったらピピピと(見切り)やっています。スーパーのお下がりでいいのに絶対やらないから。

抜本的に廃棄を出させない会計システムにする。廃棄を出さない取り組みを行わなければいけない法律にできたら。

Q:コンビニに限らずね。どんな業界でも前年対比というのを必ず指標で出すじゃないですか。売上が前年対比でクリアするのは、資本主義社会では正しい話。でも、逆の見方でいくと、前年の廃棄実績に対して、今年どれだけ削減できたかの目線を持たないと。

自店だけで見るのは難しいなら、都道府県単位やチェーン単位。インセンティブを与えて。助成金を加盟店にあげるとか。

拡大均衡の話ばかりがずっと来た日本社会だけれども、これからは、廃棄削減も決してマイナスじゃないと思うんです。結果として、GDPやいろんな面でプラスに働くと思うんで。

Q:前年対比でどれだけ削減できたかに対し、国の指導が入ってインセンティブを与える。逆に増えるとペナルティが増える仕組みを作ることしかないかなと。

X:捨てる方が見切りするより本部が儲かるコンビニ会計がある。

Q:本部と加盟店のどちらに対しても同じリスクとインセンティブの仕組み。本部が「独立した加盟店さんの裁量の問題ですから」という言い逃れができないような、両方に責任がある縛りがないと(食品ロス削減は)無理でしょうね。

「それはオーナーさんの責任です」と必ず彼ら(本部)は言いますから。都合の悪いことは加盟店の責任にして手柄は全部本部のものにしますから。加盟店から見ると本当にいらいらしますよね。

P:法律で詳細が決まったら、食品ロスは、メーカーもスーパーもコンビニも百貨店も出している。コンビニは、ロスチャージの会計を利用する企業。

X:狙い撃ちですが、そうですね。スーパー業界だと「売り切ってなんぼ」だから。ゼロが衝撃な業界とは全然違う。似て非なるものなのは、ロスチャージの会計が存在するから。そこしか差はないと思うんですよね。

Q:端的に言うと自腹が痛むか痛まないかだけの話であってね。減ったらインセンティブ、超えたらペナルティ。

X:CO2(二酸化炭素)みたいに排出量を何%にするとか。

Q:本部も腹が痛むかどうかだけが全てですよ。でないと実行力がない。

―世界規模で見たらかなり途上なんですよ。イギリスで一番大きなスーパーのテスコは独自に食品ロス調査をして、まとめ売りはロスになりやすいとして2個まとめ売りは、やめているんです。自分が儲かる、じゃなく、お客さまにとって、環境にとって、倫理的に見てどうかと考えているんです。

X:外から招聘(しょうへい)しない限りそうなるのは・・・

P:無理無理。

X:自浄作用はないと思ったほうがいい。

元オーナーZさんにも取材した

Pさん・Qさん・Xさんとは異なるコンビニの元オーナー、Zさんにも取材した。Zさんは、オーナーは退いたが、今も同じコンビニの店舗に勤めている。

違約金のために辞められないと嘆いているオーナーがいらっしゃるようですが、違約金無しで経営から退くことができております。

愛媛と沖縄でポイント付与の社会実験が始まった事は知っております。ローソンでは、値引き販売は店舗負担で日常的に実施しております。

本部負担でのポイント付与の値引きでは、店舗のリスクは発生しませんが、ポンタカードかdカードを所持する方のみメリットがあり、不公平感があると思います。

現状、店舗負担で2〜5割引きで値引き品を購入されているお客さまにとって、魅力がない施策です。

食品ロス削減のためというのは理解いたしますが、本部負担であれば、現金値引き分をみてもらった方が、ポイント還元より、店舗・お客様にとってメリットがあります。

本部は、全店対象もしくはお気に入りの店舗だけの廃棄をみる(支払う)本部支援をときどき実施してますので、現金値引き分を負担してもいいと思います。(ただし、本部支援は対象商品を指示どおりに発注させるためで、普段より多くの食品ロスが発生します)

ポイント還元は、実験時の本部負担が少なく済み、社会的に削減に取り組んでますとのポーズにしか思えません。再考が必要と思います。

出典:Zさんの言葉

以上、ポイント還元による実質値引きについて、コンビニ3社の、オーナーと元オーナー、5名に伺った。2019年5月の発表後から様々な意見が報道されているが、筆者も含めて外野ばかりで、現場であるオーナーの意見が少ないように感じていた。

騒がれている「2,000万円」問題だが、コンビニ1店舗で見切り販売すれば、見切りしなかった時と比べて、年に400万円以上、収入が増えるという結果が出ている。1店舗なら5年で2,000万円。5店舗なら1年で2,000万円増える。

ただ、見切り以前に、そもそも欠品を禁じて作り過ぎている現実を直視して欲しい。命と資源の無駄遣いだし、生活者全員、そのコストを食料品価格と税金で払わされているのだから。

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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