コンビニの「ポイント還元」「実質値引き」「なぜ今やるの?」騒ぎでそもそもみんなが忘れていることとは?

大手コンビニ加盟店。消費期限の手前の販売期限が来たため廃棄される(オーナー提供)

大手コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンとローソンが、消費期限接近のデイリー食品(弁当やおにぎり)などを購入する顧客に対し、カードのポイントを、通常の5倍還元すると発表した。

5月17日(金)、ローソンの記者会見の日は、特にメディアは大騒ぎだった。

筆者にとっても、この1~2週間は、怒涛のスケジュールとなった。

5月13日(月)に、農林水産省のASEAN事業の一環で、インドネシアのボゴール大学へ渡航。渡航する前の羽田国際空港で日経プラス10(BSテレビ東京)生出演の打ち合わせ。5月16日(木)の夜中にジャカルタの空港で搭乗し、翌朝5月17日(金)、少し遅れて羽田国際空港へ到着。到着してすぐ、ローソンの記者会見会場へ直行。スマートフォンで、セブン-イレブン・ジャパンもローソン同様の取り組みをすると知り、びっくり。移動の電車の中で、NHK名古屋から専門家コメントを求める電話。記者会見会場で文化放送とNHK東京から電話。会見後、急遽、NHKへ移動し、その日のNHKニュース7で流す専門家コメントを収録。移動の最中に日本テレビから電話。帰宅して文化放送(ラジオ)に急遽、生出演。終わって今度は六本木のスタジオに移動し、22時から23時までの間に日経プラス10の生出演。

19日(日)は日本テレビの「ZIP!」の収録へ行き、20日(月)に放映。同じく20日(月)の日本経済新聞朝刊社会面に取材コメントが掲載された。20日(月)は、群馬県前橋市で140名の方へ食品ロスの講演を行なった。

つまり、筆者のような一個人にメディアの問い合わせが集中するくらい、今回のニュースは関心を集めたということだ。

「初めの一歩」

NHKニュース7でコメントした通り、この動きは「初めの一歩」だと思う。筆者の周りでは、一般の方ほど、今回の大手コンビニの動きや報道にとても喜んでいるように見える。

物事は、すぐには動かない。大きな改革は、小さな改善が積み重なってできる。まったく動かないと思っていたことが動いたのは大きい。

コンビニ加盟店ユニオンは大きな不服

一方、コンビニ加盟店ユニオンは、今回の「ポイント還元」に、大きな不服を唱えた。ポイント還元より廃棄削減に大きく寄与する見切り販売の推奨をすべきとしている。

(前略)

5%還元というのは割引率で言えば僅か0.5割引です。このような値下げシールは小売の現場で見たことがありません。これでは効果が薄いことは想像に難くありません。

(中略)

今回のセブン-イレブン本部の打ち出した方針は見切り販売をすると廃棄が大幅に削減できることは分かっているのに、そうはしない。つまり、コンビニ会計を念頭に置いている限り(加盟店に見切りをされて分配前の荒利益を減らされたくない)本部は本気で食品ロスの削減に取り組まないことを示したものと言うことができます。

(後略)

出典:セブン-イレブン本部の食品ロス削減施策について(委員長コメント)

確かに、コンビニの顧客全員が、ポイントカードを持っているわけではない。「カードを持っていないなら見切りの品を買えばいい」と言われても、全国55,000店舗以上あるうちの、たった1%の店舗しか見切り販売をしていない現状。ポイントカードを持っていない客は、恩恵を受けられない。

みんなが忘れている本質とは?

ポイント還元もいいし、見切り販売もいい。でもその前に、消費期限が近づいたり見切りしたりするまで余らせないのが最も廃棄を減らすことなのではないか?

日本の食品リサイクル法でも、世界のSDGs(持続可能な開発目標)でも、最も優先されるのは、環境配慮の原則「3R(スリーアール)」の中の「Reduce(リデュース)」だ。廃棄物を出さない(発生抑制)。

つまり、「作り過ぎない・売り過ぎない・買い過ぎない」ということ。

ローソンの記者会見会場で、大手マスメディアの質疑応答があったが、この本質に斬り込んだメディアは、筆者の聞いた限りでは一社もなかった。

環境配慮の原則「3R(スリーアール)」で最も優先されるのは「Reduce(リデュース:廃棄物を出さない、廃棄物の発生抑制)」(筆者作成)
環境配慮の原則「3R(スリーアール)」で最も優先されるのは「Reduce(リデュース:廃棄物を出さない、廃棄物の発生抑制)」(筆者作成)

製造現場では日本気象協会のデータを駆使し、年間数千万円レベルの食品ロス削減を達成

現に製造現場では、日本気象協会の気象データを活用し、需要と供給の誤差を最小限にする取り組みがなされている。企業によっては、年間2,000万円レベルで食品ロスが削減できている。

群馬県の相模屋食料は、テレビ番組の「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」などでも、その取り組みが取り上げられてきた。

日本気象協会のデータを活用し、群馬県の相模屋食料は年間30%もの豆腐の食品ロスを削減した(日本気象協会提供)
日本気象協会のデータを活用し、群馬県の相模屋食料は年間30%もの豆腐の食品ロスを削減した(日本気象協会提供)

販売現場では欠品(棚が空になること)を許容し、顧客に支持されシェア15%以上

日本の販売現場のほとんどは、棚が空っぽになること(欠品)を許さない。食品メーカーは、欠品を起こすと、小売から取引停止される可能性があるため、やむなく多く作らざるを得ない。

しかし、福岡県柳川市のスーパーマルマツは欠品を許容し、高齢化が進む自治体で、近隣の競合店がある中、地元の顧客に支持されている。

海が時化(しけ)て魚が取れなければ、市場には、古くて高くて不味い魚しかない。マルマツの社長は、そんな時、無理して買わない。しかし大手スーパーは、数合わせで、古くて高くて不味い魚でも買っていくと言う。「欠品」しないために。

福岡県柳川市のスーパーマルマツ(筆者撮影)
福岡県柳川市のスーパーマルマツ(筆者撮影)

飲食店も「100食限定」で売り切り食品ロスほぼゼロ

筆者が2017年から取材し続け、ここに来て、ウーマン・オブ・ザ・イヤーの大賞受賞など、ブレークしているのが、京都・佰(ひゃく)食屋の中村朱美さん。

牛肉を塊で仕入れ、歩留まりをよくし、ランチ営業のみ、100食限定。

「もっと営業すれば儲かるんじゃないですか?」とのテレビのインタビュアーの言葉にも、「それは私の働き方ではない」と明言した。

京都・佰食屋の中村朱美さん(中村さん提供)
京都・佰食屋の中村朱美さん(中村さん提供)

棚に無くても怒らない消費者の態度が最も重要

店からすれば、「なんで置いてないんだ!」と、クレームしてくる顧客が、最も怖い。

一番大切なのは、消費者も、たまたま無くても、それに苦情をしない姿勢ではないか。

中学校の家庭科では、「まとめ買いは無駄になりやすい」など、ある一定の「買い方」を習う。だが、大人になれば、ただ店に金さえ払えば何をしてもいい、と勘違いしている顧客もいる。動画サイトでアクセスを増やすため、飲食店で食べきれないとわかっている大量の食事を注文し、食べ残す客は、その類だろう。

消費者には権利と同時に責任もあるのに、権利だけを主張する消費者もいる。

京都のスーパー八百一本館の店長は「欠品を防ぐコストは半端ない」と語る。実際、取材のときも欠品は目立ったが、地元客には支持されているお店(筆者撮影)
京都のスーパー八百一本館の店長は「欠品を防ぐコストは半端ない」と語る。実際、取材のときも欠品は目立ったが、地元客には支持されているお店(筆者撮影)

売り切り店こそ賞賛されるべし

1月には、農林水産省が、恵方巻きの販売は「需要に見合った数を」と、小売店に通知を出した。

だが、ふたを開けてみれば、2019年も恵方巻きは大量に売れ残っていた。

2月3日の閉店5分前、270本以上の恵方巻きが売れ残る百貨店(筆者撮影)
2月3日の閉店5分前、270本以上の恵方巻きが売れ残る百貨店(筆者撮影)

ポイント還元もいいし、見切り販売もいい。

だが、そもそも「余らせない」ことこそ食品ロスや廃棄を減らす根本だ。

「作り過ぎない・売り過ぎない・買い過ぎない」が基本であり、根っこの削減策であることを、きちんと認識したい。