飲食店でバイトする6人が語る「わたしたちが捨てている食べ物」

(写真:ロイター/アフロ)

食品業界の中でも、外食産業由来の食品ロスは製造業に次いで多い。客の食べ残しが話題になるが、それ以外にも厨房で廃棄されていることは、過去記事で触れた。

参考記事:

飲食店でバイトする学生はどんな食べ物をどれくらい捨てているのか

農林水産省は、外食産業由来の食品ロスを定期的に調査している。

農林水産省 平成27年度 食品ロス統計調査報告(外食調査)
農林水産省 平成27年度 食品ロス統計調査報告(外食調査)

今回、6名の大学生にインタビューした結果を紹介する。

飲食店でバイトしている6人にインタビュー

筆者の会社(株式会社office 3.11)で、この秋、インターンとして職業体験をしていただく女子大生のTさんにお願いして、飲食店でアルバイトしている大学生に、アンケートをとってもらった。質問内容は次の通り。

群馬県内の飲食店に掲げられた「食べ残しを減らそう」のぼり(2017年1月、著者撮影)
群馬県内の飲食店に掲げられた「食べ残しを減らそう」のぼり(2017年1月、著者撮影)

a)どんな飲食店でバイトしていますか?

b)仕事として、どんな食べ物をどれくらい捨てていますか?

c)食べ物を捨てていて感じることはありますか?

d)廃棄量を減らすためには何が必要だと思いますか?

ある調査では飲食店バイト経験者の82%が「仕事で食べ物を捨てたことがある」

このテーマは、前述の過去記事でインタビューしたことがある。都内の男女大学生239名を対象にインタビューしたところ、飲食店でのアルバイト経験者が185名。仕事として食べ物を捨てたことがある人が、そのうち152名(64%)いた。飲食店でバイトしたことのある学生の82%が「仕事として食べ物を捨てた経験がある」という結果だった。

今回の対象者は、カフェで働くIさん、バルで働くOさん、しゃぶしゃぶ屋で働くSさん、ケーキ屋で働くRさん、ハンバーガー屋で働くT2さんの5名に加えて、うどん屋で働いているTさんの合計6名。

客が皿に食べ残した料理は捨てるかリサイクルに廻すかしか選択肢がない(2016年11月、著者撮影)
客が皿に食べ残した料理は捨てるかリサイクルに廻すかしか選択肢がない(2016年11月、著者撮影)

下記がそれぞれの答えである。

Iさん

a) バイトしている飲食店は?

カフェ

b) 仕事として、どんな食べ物を捨てている?

サンドウィッチやそれに使う材料。量は日によって変わるが、2~3キロ捨てる。

c)食べ物を捨てていて感じることは?

アルバイトを始めた頃はもったいないと思っていたけど、最近はあまり感じなくなった。

飾りに緑の葉が飾られたものは残れば廃棄される(2016年10月、著者撮影)
飾りに緑の葉が飾られたものは残れば廃棄される(2016年10月、著者撮影)

Oさん

(以下、質問省略)

a) バル

b) 主にお客さんが残したもの、飾りのベビーリーフなど。作り置いてなかなか注文が入らなかったもの。

c) お客さんが残したものであれば美味しくなかったのだろうなと感じる。

店側が作り置きして残ったものはもったいないと感じる。

飲食店で出された肉(2016年9月、著者撮影)
飲食店で出された肉(2016年9月、著者撮影)

Sさん

a) しゃぶしゃぶ屋

b) 余った味噌汁2~3リットルくらい、しゃぶしゃぶ用の野菜5人前くらい

c) もったいない、もっと作る量を減らせばいいのに、この味噌汁を流すことで下水が汚れるだろうと思う

Rさん

a) ケーキ屋さん

b) 洋菓子や焼き菓子など賞味期限が近くなったものを捨てている。

1日に番重(ばんじゅう)1/3から1/2くらいの量。

c) 賞味期限1日前までが販売可能なのでまだ食べることができるのにもったいないと感じる。また、逆に、この廃棄するという行為でお客様の安心安全に繋がっているので仕方ないとも考える。

T2さん

a) ハンバーガー屋さん

b) パンの耳、レタスの汚れている部分、トマトのヘタ、コーヒーの粉末、食べ残し(ハンバーガー、ポテト、サンドウィッチ)

 日によって異なるが全部合わせると少なくてもゴミ袋2袋くらい

c) もったいない

うどん(2016年12月、著者撮影)
うどん(2016年12月、著者撮影)

Tさん

a) うどん屋

b) 白ご飯約1から2キロ、かやくご飯約0.5キロ、茹でうどん約1キロ、

生うどん約500グラム、だし1リットル~5リットル、カレールウ2リットル、トッピングで使うネギなど約10人前、厚焼き卵・かつ3人前

c)バイトを始めた頃は大量に捨てることにもったいないと感じていたが、捨てるのに慣れてしまい、もったいないと感じなくなっている。食料難民の人がたくさんいるのになぜゴミとして捨ててしまうのだろうと考える時がある。

毎日繰り返し捨てているうちに麻痺する「もったいない」という感覚

Tさんは、今回のアンケート結果を受けて、「みな最初はもったいないと思っているが、次第にそれに慣れてしまい、もったいないという感情が薄れてしまっている。店側が記録などをつけ、仕込みを工夫することは当たり前にやるべきだ。その上で、お客さんに声かけをしてもったいないという気持ちを持ってもらうことが大切。社員だけが廃棄量について考えるのではなくアルバイトも意見を出しお店側が一丸となってこの問題に取り組むべき」と語っている。

この「最初はもったいないと思っているが、そのうち慣れてしまう」というのは、コンビニオーナーからも聞いた。

こんなに捨てています・・」コンビニオーナーたちの苦悩

政府が定める食品廃棄物の発生抑制目標数値の認知は低い

著者自身、「もったいない」という感情は理解できる。が、全国のみならず世界じゅうで喫緊の課題となっている食品ロス問題を解決するには、感情を抱くだけでなく、仕組みづくりが重要と考える。

環境省が制作した3010(さんまるいちまる)運動の啓発ツール(2017年2月、著者撮影)
環境省が制作した3010(さんまるいちまる)運動の啓発ツール(2017年2月、著者撮影)

実は、農林水産省が食品業界に対し、食品廃棄物等の発生抑制目標値を設定している。平成26年4月1日に26業種が設定され、翌平成27年8月に、5業種が追加された。

食品事業者向けの講演や研修で、この数値目標について知っていたかを訊ねる機会がある。案外、知らないという社員が多いのに驚く。新入社員ではなく、中堅から経営陣にかけての人たちである。

学校給食の余りを寄付するフランス

今年2017年2月、フランスの農業省を訪問した。女性職員いわく、集団給食(学校給食など)の余ったものは、福祉施設などに寄付をしているという。日本では、フードバンクで取り扱う食品は、日持ちの長い加工食品が多い。炊き出しであっても、炊き出しそのものを目的としており、他の目的で作った食事を、生活に困っている人に寄付するという行為はほとんど聞かない。

フランスの持ち帰り「グルメバッグ」のロゴ入りシール(2017年2月、筆者撮影)
フランスの持ち帰り「グルメバッグ」のロゴ入りシール(2017年2月、筆者撮影)

また、この農業省の女性職員は、飲食店での持ち帰りを進めていくために、ドギーバッグならぬ「グルメバッグ」を企画し、ロゴマークや公式サイトを作り、シールや啓発グッズなどを飲食店で活用してもらっている。2016年1月4日付のFrench Todayも報じている。

フランス「グルメバッグ」の公式サイト

Gourmet Bag

提言:飲食店の廃棄を減らすために

今回のインタビューに答えてくれた6名の解決策は、次の通り。

Iさん(カフェ)

・売上状況を分析し、必要以上の材料を仕入れないように調整する

・1つでも多く売れるようにお客様に勧めたりする

Oさん(バル)

・「なるべく残さず食べてください」とテーブルのところに表示する。

・仕込みは日により出るもの出ないものが違うので改善が難しいが、できる

限り作り置きするものは無くし、無くなりそうになったら作るようにする。

Sさん(しゃぶしゃぶ屋)

・毎日どれくらいの量を捨てているのか把握する(記録をつける)。

 →傾向がわかることで作る量を加減できる。

 ・廃棄量の現状を知って、仕方ないではなく、問題点として考える。

 ・アルバイトやパートが食べる、持ち帰る。

 ・野菜は翌日の味噌汁の具として使う。

購入店では「当日中に食べきるよう」表示が貼られるケーキ(2017年3月、著者撮影)
購入店では「当日中に食べきるよう」表示が貼られるケーキ(2017年3月、著者撮影)

Rさん(ケーキ屋さん)

・製造数や販売数を減らしてしまうと売り切れ状態になってしまうため、お店側お客様側ともに損してしまう。そのため、賞味期限が近くなったら値引きをして販売すれば廃棄量の減少に繋がると思う。

・消費者側に廃棄量を知ってもらう。

T2さん(ハンバーガー屋さん)

必要な分だけ使うように心がけること

Tさん(うどん屋さん)

・私が働いている店では捨てたものの記録をつけているのだが、捨てる量が変わってないので、記録だけではなく仕入れに反映するべき。

・カレールウやかつは作り置きせず無くなり次第作るようにする。

・お客さんに少なめにもできるということを伝える。

飲食店の廃棄を可視化できるMint Scraps(出典:Mint Scraps公式サイト)
飲食店の廃棄を可視化できるMint Scraps(出典:Mint Scraps公式サイト)

Sさんが指摘している「記録」については、たとえば、飲食店向けのツールMint Scraps(英語サイト)がある。グラフにして、廃棄を可視化することができるようになっており、完全に廃棄にまわしたものと、リサイクルできたものとを区分するなど、わかりやすい仕組みになっている。

リサイクルと廃棄を分けて把握することができる(出典:Mint Scraps公式サイト)
リサイクルと廃棄を分けて把握することができる(出典:Mint Scraps公式サイト)

また、全国の自治体の中には、廃棄を少なくする努力をする飲食店に対し、インセンティブとなる「認定制度」を取り入れるところも出てきている。たとえば京都市では「食べ残しゼロ推進店舗」制度を始めており、昨年4月に200店舗台だった認定店舗は、今年2017年4月には500店舗を超えている(京都新聞記事より)。この制度は、京都市から京都府へと拡大している。

京都市が2017年1月におこなった飲食店対象の実証実験によれば、幹事役が「食べきりましょう」と声がけした場合としない場合とで比較すると、声がけした場合のほうが、食べのこしが減ったという。

長野県松本市が提唱した、宴会の最初の30分間と最後の10分間は席について食べ物を食べきろうという「3010(さんまるいちまる)運動」は、全国の市町村にじわじわと広がり、今では省庁(環境省)も啓発ツールを制作するまでになった。

飲食店におけるロスの4象限分析

飲食店で発生する食品ロスの主な内訳(筆者分析)
飲食店で発生する食品ロスの主な内訳(筆者分析)

飲食店で発生するロスには、食べられるもの(可食部)と、食べられないもの(不可食部)がある。前者はReuse(リユース:再利用)することができ、後者はRecycle(リサイクル)することができる。

飲食店の余った食材に関しては、株式会社コークッキングが、TABETE(食べて)という、余った食材を安価に売るサービスを試験的に始めた。

4象限グラフで赤字で示した「需要予測とのズレ」に関し、食品製造業や小売業では、日本気象協会の気象データを活用し、需要予測の精度を向上させることでロスを最小限に抑える実績が出始めている。2017年9月5日に放送されたテレビ東京系列『ガイアの夜明け』では、日本気象協会のデータを活用してロスを減らした相模屋食料が登場し、年間2,000万円のロスを削減できたと紹介された。

もちろん、ロス削減のためには、店側だけでなく、われわれ顧客側の意識や行動も必要だ。

提言:飲食店における食品ロス削減 10の視点

今年2017年3月、アジア最大の飲食展FOODEX(フーデックス)で、ホテル・レストランの事業者向けに「ホテル・レストランにおける食品ロス削減のアプローチ 10の視点」と題して、講演をおこなった。

10ポイントの概要は次の通りである。

1、ロス量を測る

2、メニュー・アイテム数の再考

3、持ち帰りの推奨

4、顧客が量・好みを事前選択

5、味に磨きをかける

6、予測を厳密に

7、規格外など安価な素材の活用

8、自治体・大学などとの連携

9、シェアする

10、リサイクル・ループの実践

+消費者(お客さま)への啓発活動

この記事をきっかけに、食品ロスの問題に興味を持ち、意識が変わり、行動を起こす人が増えることを願っている。

記事中、英仏渡航の写真に関して:JSPS科研費15K07627「食品ロスの測定を通じた食料需給システムの効率性と環境負荷に関する国際比較」(代表 小林富雄)に参加し、筆者撮影