「高校でまた甲子園に帰ってくる!」タイガースカップ準決勝で敗れた中島大誠(忠岡ボーイズ)の新たな決意
■明石ボーイズVS忠岡ボーイズ
「 第19回タイガースカップ」の準決勝、第1試合は明石ボーイズVS忠岡ボーイズ。
チーム創設30周年の忠岡ボーイズは7年ぶり5度目の出場だが、今年はチーム史上最高位タイのベスト4までこれた。あと1つ勝てば、チームの記録を塗り替えられる。
明石 500 000 0=5 H9、E0
忠岡 000 000 0=0 H3、E2
《バッテリー》
明石:空、山㟢、畠山、四宮―吉本
忠岡:中島、田村―二村
【得点経過】
一回表…いきなりの投手強襲のヒットから次打者の犠打がヒットとなり、重盗。3番・空の中越え三塁打で2点。1死からも連続長打を浴び、5番・荒木の左中間オーバーの三塁打で1点、6番・安藤のセンター越え二塁打で1点。2死三塁から8番・吉本の右前打で1点。(5-0)
忠岡ボーイズはホームを踏めず、明石ボーイズが決勝に進出した。
■「4番・ピッチャー」中島大誠
「立ち上がりが課題」というのは、先発した中島大誠選手も以前から明かしていた。自分でもわかっていたからこそ、対策は練った。早めにブルペンに行き、多めに投げて肩を温めた。
しかし、だ。プレーボール直後、1番・川上彗選手のピッチャー返しが襲ってきた。反応はしたものの、グラブで弾いてヒットにしてしまった。
次打者のサードによるバント処理も不運だった。バッテリーに動揺が走ったところに重盗を決められ、そこからは長打のつるべ打ちで、あっという間の5失点になった。
「いつもなんですけど、立ち上がりが安定していない。ブルペンでのピッチングが投げ足りなかったのかと思います」。
十分に投球練習をしたつもりではあったが、結果が伴わずガックリと肩を落とす。
だが二回以降は切り替え、六回までは無失点だった。どんどん本来の調子を取り戻し、キレも増していった。一回に27球を要した球数も、以降は5イニングスで52球。1回あたり10球ほどで終えるという安定ぶりだった。
それだけに「二回以降は0点で抑えられたんですけど、立ち上がりが…」と唇を噛む。
傾いた流れを止め、引き戻すのは非常に至難だ。二回以降、シャットアウトしたことは胸を張っていいい。出したランナーも牽制などで刺し、バックもしっかり守った。
「投手を中心とした守りのチーム」を標榜する忠岡ボーイズのスタイルは出せた。
だが、打線が振るわなかった。チーム安打数が3本、そのうち2本は中島選手のバットから放たれた。
「1打席目はポテン(右前打)やけど…。2打席目はしっかりと初球から打っていけた。甲子園も最後になったので、しっかりヒットも出てよかったです」。
右に左にとマルチ打を刻み、気を吐いた。
■門田義人監督の談話
「ちょっとね、立ち上がりがね」と、門田義人監督も苦しそうに言葉を紡いだ。「準決勝という緊張っちゅうか、気合いが空回りしたところがあったんかな」。独特の空気感があったことは否めない。
「たまたま運が悪かった。(2番打者の)バント処理がちょっと遅れた感じで、その子も足が速くて…。あそこからちょっとピッチャーも上がってしもたのかも」。
そう言って、中島選手の心情を慮る。そして、そこからの奮闘を認め、「あそこからよく踏ん張って頑張った。ただ、打つほうでチャンスを作れんかったのが敗因やね」と、決して中島選手を責めることはしなかった。
それよりも、「3試合もできるとは思ってなかったのでね」と、ベスト4まできたナインを讃える。「ピッチャー中心にしっかり守って、よく頑張った。1点差ゲームで勝ってきたことが多いんで、それは褒めてあげたいところです」と、うなずいていた。
今後に向けては「やっぱりバットが振れんとね。今日でも明石の子のスイングに負けていた」と振り返り、「この冬は体を鍛えんと」と意気込む。優秀な1年生も芽が出てきており、チーム内競争がこれから激化することを期待していた。
「今日の相手のピッチャーは2人ともよかったね。なかなかこの時期の中学生が打てるようなスライダーではなかった。でも、ああいうのにも対応していかんと、春も全国大会に出ても上がっていかれへんから」。
この冬は、全国大会で勝ち進めるチームへと育て上げるべく、厳しい練習を課していく。
■好敵手との対戦
ゲーム終了後、整列してあいさつをするとき、明石ボーイズのキャプテン・川上彗選手と言葉を交わしたように見えた。そのことを中島選手に尋ねると、「『ありがとう』って言っただけです」と明かす。
川上選手は小学6年生のとき、オリックス・バファローズジュニアに所属していた。阪神タイガースジュニアとは練習試合で何度も対戦があり、「けっこう打たれたイメージがありました」と、中島選手の記憶にも残っているという。
2年経ち、お互いに成長しての対戦だった。この先カテゴリーが変わってもまた、どこかで相まみえることがあるだろう。いい選手との対決は刺激になり、己を強くしてくれる。
■高校で甲子園に帰ってくる
この中学生硬式野球の関西ナンバー1決定戦である「タイガースカップ」は、舞台が阪神甲子園球場であるところが人気の一つとなっている。高校野球よりいち早く甲子園でプレーできるチャンスがあるのだ。
中島選手も「いい経験になりました。今回はベスト4だったんですけど、高校でも甲子園を目指して、もう一回ここでプレーできるように頑張っていきたいです」と悔しさを押し殺し、前を向いて力強く宣言した。
一度その土を踏んだからこそ、また帰ってきたいとより強く思える。タイガースカップに出場したことが、今後への大きなモチベーショにつながったようだ。
勝負ごとには勝ち負けがある。負けていい試合など、ひとつもない。だが、勝つことだけがすべてではない。結果的に負けて得ることも数多くある。
まだまだ長く続く野球人生。中島大誠ほかタイガースカップに出場した赤司海斗、多井桔平、永井仁之丞、有本豪琉、さらには11人のタイガースジュニア2021のメンバーたちは、これからも勝って負けてを繰り返しながら、大きく羽ばたいていくことだろう。
(写真の撮影はすべて筆者)
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