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「恋愛はお金がかかる?」日本と欧州3カ国の若者の恋愛意識の違いを比べてみた

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

「恋愛したい」意識の国際比較

日本と比べて、欧州各国の恋愛意識とはどれくらい違うのだろうか。

内閣府が実施した「令和2年度少子化社会に関する国際意識調査」結果を見てみたい。これは、日本、フランと、ドイツ、スウェーデンの4か国(20-40代男女)とを比較したものである。

年代と未既婚が混同しているものだと、正確な比較ができないため、特に、各国とも未婚率が高いであろう20代男女だけを抽出して比較をしてみる。

まず、恋愛に対する能動的意識である「いつも恋愛をしていたい」という項目では、圧倒的に日本人だけが低い、男女とも唯一1割にも届かない。

「恋愛に自信がない」比較

続いて、逆に恋愛に対するネガティブな意識としての「恋愛に自信がない」という項目で比較すると、やはり、日本人だけが男女ともに圧倒的に「自信がない」のだ。他国は、大体1割程度以下である。

日本人の「恋愛に自信がない」割合は男27%、女19%なのだが、これは奇しくも、2020年の国勢調査(不詳補完値)による生涯未婚率の男28.3%、女17.8%と限りなく近い。20代で「恋愛に自信のない」これらの層が、そのまま50歳になって生涯未婚となるのだろうか。

また、男性に関しては、2020年時点で20代の「今まで一度も恋愛をしたことがない割合=未恋率」についても調査しているのが、その割合も約27%であり、この「恋愛に自信がない」割合と符合する。

生まれてから一度も恋愛相手がいたことのない「生涯未恋率」は男女それぞれ何%か?

自由恋愛という自己責任化

私は「恋愛強者3割の法則」といっているが、残り7割は広義では恋愛弱者に分類されるが、その中にもグラデーションがあって、真ん中4割は中間層で、全く恋愛経験がないわけではない。最下層の3割が恋愛最弱者層となる。

ただし、早合点してはいけないのは、この連載でも繰り返しお伝えしている通り、これは決して「最近の若者が恋愛離れ」したわけでも「草食化」したわけでもない。少なくとも統計の残る1980年代からたいして変わっていない。

かつて、内閣府「令和4年版男女共同参画白書」の中にあった「20代男性の約4割はデートの経験なし」という調査結果が大きな話題になったことがあったが、それは単に直近の切り取りデータにすぎず、「デート経験なし4割」など40年前もから変わっていない。

「デート経験なし4割」で大騒ぎするが、40年前も20年前も若者男子のデート率は変わらない

1980年代までの皆婚時代は、個人の恋愛力がなくても、お見合いや職場のお膳立てによって結婚できたという事情がある。全員が結婚することが決して良いことだとは言わないが、少なくとも「結婚したいけどできない」という不本意未婚は1980年代まではほぼいなかったことも事実である。それが今や4割が不本意未婚である。

自由恋愛といえば聞こえはいいが、恋愛の自己責任化であり、パートナーを見つけられないのは本人の問題であると一刀両断されてしまう。特に、男性においては、「お金の問題」がついてまわる。婚活界隈においては特にそうだ。

「恋愛は金がかかる」比較

ちょうどこの国際比較調査においても「恋愛は金がかかる」という項目がある。その結果が以下である。

きれいに、日本の男性だけが圧倒的に突出している。

結婚にいたる前の恋愛において、「デート代を男はおごるべきか」という「おごり・おごられ論争」が常に話題になる。「デートの食事代は男だけが払うのは不公平だ」vs「女だって洋服代や化粧品代にお金がかかっている」のような、不毛などうでもいい(失礼)論争が定期的に勃発するものだ。つい先日もヤフーのコメンテーターコメント欄にその件について書いたところツイッターで大きな話題となった。

しかし、この内閣府調査での割合を見ても、一番割合の高い日本でも「恋愛には金がかかる」と言っている男性はせいぜい25%程度にすぎず、これは、いわば「恋愛に無駄な金を使っている」層が25%もいるだけという見方もできる。実際恋愛相手がいる層は、お金などかけずに豊かな恋愛をしているのだと思う。もしくは、「金がかかる」と言っているのは「お金をかけなければ相手が見つからない」層だろう。

いずれにしても、恋愛はお金がなければできないものではないし、仮にお金を使ったとしても、それを「勿体ない」とか「痛い出費だ」なんて感じるのだとしたら、それは恋愛ではないのかもしれない。

オタクは自分の趣味に湯水のごとくお金を使っているが、それは彼らからしたら無駄でもないし、浪費でもない。常々、「恋愛強者は恋愛オタクである」と言っているが、それと同じである。

但し、結婚はまた別物である。

ところで、前掲の「恋愛にはお金がかかる」グラフであるが、他国も日本より少ないとはいえ、男女差があるのがわかる。「金がかかる」と思っている割合の男女比を計算すると、日本2.3倍、フランス2.1倍、ドイツ2.1倍、スウェーデン1.5倍である。すべて男性の方が多い。

やはり、万国共通男にとって恋愛はお金のかかるものなのだろうか。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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