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新成人の数が減ったという話より、もっと深刻な「若者に見放される生まれ故郷問題」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:つのだよしお/アフロ)

新成人の人口は20年前にわかってたこと

総務省が発表した2022年1月1日現在の人口推計によれば、今年新成人を迎える人口は前年から4万人減って120万人となり、過去最少を更新したとのこと。報道発表には「新成人は男性が61万人、女性が59万人。総人口に占める割合は0.96%で、2年ぶりに減少した。95年以降、減少傾向が続いており、1%を下回るのは12年連続となった」とあるのだが、それは特に目新しい話ではなく、20年前にわかっていた話である。

なぜなら、20歳になる人口というのは20年前に出生した人口とほぼイコールであり、死亡や海外移住でもない限り、そのまま推移する。ちなみに、2020年人口動態調査の年齢別死亡者数によれば、年齢不詳を除く0歳~19歳までの死亡者数は年間で3973人。年間死亡の約0.29%である。現代は、生まれてきた子どもはほぼ死なずに成人するといってもいい。

若年人口の死亡が近年大激減している話はこちら

日本の人口は6000万人へ。まもなくやってくる「多死時代」の幕開け

よって、新成人の人口は、すでに発表されている各年の出生数を追えば、おおよそ自動的にわかることであり、取り立ててニュースにするようなものではない。

いうなれば、2040年までの新成人人口は以下の通りに推移することがほぼ確定である(暦年計算と年度計算とで多少数字の違いはあるにせよ)。

2022年の新成人が120万人で減少したというが、2040年の新成人は84万人になる。

出生と婚姻は相関する

今後、出生数は減少していくことはほぼ間違いない。それは、政府がどんな少子化対策をしようが何も効果はあげられない。理由は、当連載で繰り返しお伝えしている通り、1990年代後半の「来なかった第三次ベビーブーム」による全体人口の減少による。

母数たる女性の有配偶人口が遂に独身人口と並んだという話はこちらの記事(減り続ける有配偶女性人口、遂に独身女性人口と並んだ)ですでに書いた。

出生と婚姻とは強い相関がある。有配偶人口の減少はすなわち出生数の減少につながる。

写真:アフロ

誤解している人も多いが、結婚した女性が産む子どもの数は平均2人で、これは1980年代と変わっていない。合計特殊出生率が下がっているのは未婚女性人口が増えたからであって、決して母親が産む子どもの数が減ったわけではない(この件については後日単独で記事化したい)。

つまり、婚姻数が増えなければ出生数は増えないのだが、出生数同様婚姻数も、2019年の令和婚効果以外減少し続けている。

新成人の人口がどうだという話よりも、実はもっと重要なのは、各地で生まれた子どもたちが成人を迎える時には移動してしまっているという現実の方である。

生まれた場所で成人しない子どもたち

2000年に出生したと都道府県別の子どもの数と、その20年後である2020年時点での都道府県での20歳の人口とを比較すると、それがよくわかる。

生まれた子ども以上に、その歳の20歳の若者がもっとも増えているのは東京で、実に出生数の1.4倍である。同様に、東京圏である、埼玉、千葉、神奈川も10%程度増えている。

東京圏以外に他に増えているのは、京都、大阪、宮城、福岡、滋賀、愛知、石川など全部で11府県のみである(京都が多いのは大学が多いという要因だろう)。他はすべて減っている。しかも、その減り具合が、東北や四国・九州地方では3割にも達する。

マップにすると一目瞭然である。

このマップを、前回の記事の婚姻率マップと照らしてみると、いかに若者の人口移動と婚姻率とが相関しているかがおわかりになるだろう。若者が流出してしまう地域ほど婚姻率は低くなるのである。

1990年から2019年までの都道府県婚姻率マップはこちら

意外と知られていない。東京が、20年も連続で「婚姻率ランキング全国1位」を続けている事実

東京の若者人口集中は変わっていない

勿論、若者は結婚目当てで移動するわけではない。京都などのように進学によって移動する数が増えるところもあるが、多くの人口移動は就職によって起きる。つまり、仕事のあるところにしか若者は集まらない。逆にいえば、若者が流出するエリアというのは、若者にとって「仕事がない場所である」というのと同義なのである。

よくよく考えると、これは地方にとって深刻な話でもある。仕事を求めて出ていった若者が、都会で結婚して家庭を持てば、猶更都会に住み続けることになるだろう。

最近、「東京の人口が減った」というニュースも見かけるが、勘違いしてはいけないのは、昔も今も東京に人口が集中するのは20代の若者が集中することによるのであり、それはコロナがあろうとなかろうと変わらない。東京から流出しているのは一部の子育て世代の夫婦と高齢者だけである。しかも、その移動先も東京から周辺3県に流れているだけで、大きな意味での東京圏人口は減ってはいない。

提供:アフロ

生まれ故郷で一生暮らすということを推奨するものではないが、少なくとも以前と比べて同い年婚比率が高まっている中で、同級生のうち3割がいなくなってしまうエリアの婚姻が減るとのは当然といえるだろう。しかも、男女同数ではなく、流出の多いところほど女性の流出が多い。それが、積もり積もって、日本全国的な「男余り」現象を作り出してもいるのだ。

かといって、東京など大都市にくれば、高い確率で結婚できるかというとそうでもない。

最新の2020年国勢調査の生涯未婚率でも明らかなように、特に女性にとって東京はむしろ「生涯未婚の多い場所」でもある。

地方にいたままでは相手がいないが、東京に来たからといって相手が見つかるとは限らない。どっちに転んでも婚姻が増えるというポジティブな要因は見出せない。

「新成人人口が減った」というわかりきった表層的な話云々より、生まれた子どもがどこで成人しているのかという視点で統計を見ると、違った課題が浮き彫りになる。そして、それは実は本質的な課題なのである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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