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【速報】2020年国勢調査確定報より、男女の生涯未婚率は何%になったのか?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

2020年国勢調査確定報より

昨日11月30日に、2020年国勢調査の人口等基本集計の確定結果が発表された。

配偶関係別人口も発表されたので、男女の最新の生涯未婚率(今は「50歳時未婚率」という)を計算してみた。

生涯未婚率とは、45-49歳の未婚率と50-54歳の未婚率とを平均したものである。50歳の未婚率ではなく、いわばアラフィフの未婚率である。また、この計算においては、歴史的に「配偶関係不詳」及び「年齢不詳」については総数から除いたものを使用している。よって今回もそれら不詳を除いたもので計算する。

※総務省統計局が発表している「結果の概要」PDFには、注釈にある通り、「不詳補完値」が表示されている。つまり、配偶関係や年齢不詳の人を他の構成比などに照らして按分合算したものである。過去のデータと比較するためには、それぞれ過去分を遡及集計しなければならず、あまり意味はない。総務省統計局もあくまで「参考表」として出している。よって生涯未婚率算定にあたっては「不詳補完値」は無視するのが妥当と考える(追記参照)。

2020年の生涯未婚率とその長期推移

外国籍者を含む総数による2020年の生涯未婚率は、男25.7%、女16.4%となった。大正時代からの長期推移のグラフを見れば一目瞭然だが、国勢調査が始まって以来の過去最高記録である。

5年前の2015年が、男23.4%、女14.1%であるから、男女ともなかよく2.3ポイントずつ上昇したことになる。男性の4人に1人、女性の6人に1人は生涯未婚となった。

もちろん、50歳を超えて初婚する人も皆無ではないが、55歳以上で初婚した男性の割合は、当該年齢の未婚人口の0.1%に過ぎない。そう考えれば「50歳で未婚ならば生涯未婚」といっても間違いとはいえない。

ちなみに、日本人だけに限れば、男25.8%、女16.5%とほんの0.1ポイントだけ高くなる。

とはいえ、今回の数値も個人的には驚くべくことは何もなく、予想の範囲内である。

社人研は2018年に2020年以降の男女配偶関係別人口推計値を発表しているが、そこから生涯未婚率も算出可能である。それによれば、2020年の生涯未婚率推計値は、男26.7%、女17.5%だったので、推計値の方が約1%程度高かったが、大きな流れとしては推計通りといえる。

このままいけば、2040年には男30%、女20%近くまで生涯未婚率はあがると推計されている。

その中には未婚のシングルマザーを選択する女性もいるだろうし、婚姻せず事実婚で生活を共にする男女もいるだろう。必ずしも結婚という選択を全員がしなければならないというものではない。むしろ皆婚といわれていた1980年代までの方が特殊だったとも考えられるのだ。いずれにしても、2040年には、離別死別含む独身者が5割の国に日本はなる(15歳以上人口)。少子化も高齢化も同じだが、確実に来るとわかっているものから目を背けず、その前提でどうすべきかを考えるステージになっている。

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このまま未婚率はあがり続けるのか?

写真:アフロ

しかし、だからといって、このままずっと無尽蔵に未婚率が上昇するわけではない。結婚する人がいなくなるなんてことはない。

年々未婚率の上昇幅は緩やかになっており、多分2040年あたりが天井になるだろう。未婚化・非婚化といっても、なんだかんだ男70%、女80%は結婚するのである。

但し、いくら晩婚化とはいえ、のんびり構えている場合ではない。今後40歳を過ぎてから結婚しようと思っても、男女ともになかなか難しい。40代のおじさんが20代の若い女性と結婚しようなんて到底無理である。それは変えられない。

20代女性と結婚したがる「40代以上婚活おじさん」は永久に仏滅です

写真:milatas/イメージマート

未来を変えるのは誰だ?

繰り返すが、2040年に生涯未婚率は最高値に達するだろう。2040年の時に45-54歳ということは、現在2021年時点で26-35歳の若者男女が、生涯未婚の最高記録を出す世代となるということだ。

しかし、未来を変えるのは決して不可能ではない。

50歳時の未婚率である生涯未婚率を変えられるのは、50歳の未婚おじさんや未婚おばさんではない。まさに、今アラサー世代の若者がどう行動するかで未来は決定される。

実は、本当の意味の少子化対策とは、子育て支援とかではない。子育て支援はそれはそれとして大切なことだが、婚外子が極端に少ない日本では、結婚がなければ出生はない。少子化を解決するのは婚姻の増加なのである。

30年間も平均給与があがらない雇用環境や、自分が40代を過ぎた時に安定した収入を確保できているか不透明なままでは、本当は結婚したいのに「経済生活たる結婚」に踏み切れない若者がいることも否めない。そして、それを若者の自己責任としてしまうのは酷だろう。

写真:PantherMedia/イメージマート

未来を変えることを、若者の意志や行動力だけに任せてしまうのではあまりに大人として身勝手すぎる。未来を変えるのは、若者の行動を変えるのは、そのための環境を整えるのは、大人たちの責任でもある。

追記

本記事掲載時点では、生涯未婚率計算式は2015年までの配偶関係不詳を除く方式でしたが、2022年より不詳補完値による計算が正式採用となったため、2020年の正式な生涯未婚率は、男28.3%、女17.8%と変更になりました。変更となった経緯は以下の記事に詳しく書いてあります。

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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