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アラスカ航空 飛行中吹っ飛んだドアプラグって?米では破損した窓から乗客が吸い出される死亡事故も過去に

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
オレゴン州ポートランドに緊急着陸した機体を調べる係員。(提供:NTSB/ロイター/アフロ)

5日、米旅客機の機体の一部が飛行中に吹き飛ぶ事故が起こった。

事故機はオレゴン州ポートランド発カリフォルニア州オンタリオ行きのアラスカ航空1282便で、機種は米ボーイング737マックスシリーズの9型機(737MAX9)。

NPRによると、同機は上空1万6000フィートを飛行中、左側の「ドアプラグ」が爆音と共に機体から剥がれ落ち、胴体に大きな穴ができた。そこから座席の一部、乗客の持ち物(携帯電話や少年が着ていたシャツなど)が機外に吹き飛んだ。

同機は離陸から35分後に出発地と同じポートランド国際空港に緊急着陸し、乗客171人と乗員6人は全員無事だった。1人が軽傷を負い、病院へ搬送された。

吹き飛んだドアプラグの横の座席は、背もたれのクッションが剥がれ落ちてなくなっている。事故当時はこの席に誰も座っていなかったのが不幸中の幸いだった(後日アラスカ航空のCEO談で、このフライトはほぼ満席で、空席はたったの7席だったことがわかった。ここはそのうちの1席だった!)。

落下したドアプラグは(63ポンド、約28.5キログラム)は、USAトゥデイによると、ポートランド近郊の一般家庭の裏庭で発見された。

機体から剥がれ落ちたのはドアではない。ドアプラグとは?

前述のNPRによると、ドアプラグとは厳密にはドアではないそうだ。機体の側壁を埋めるように設計されたコンポーネントの一部で、オプションで非常口を取り付けることもできる。乗客数が200人以上の機体は非常口の設置が義務付けられており、200人に満たない規模の小さな機体において、航空会社が追加の非常口を必要としない場合に代わりに取り付けるもの。通常の機体の窓のある壁に見えるため、ドアプラグに気づく人はあまりいないという。

同機はつい3ヵ月前に運航開始したばかりのものだった。この事故が起こる前にすでにいくつか問題が発生していたが、アラスカ航空は同型機を運航停止にしなかったという情報がある。

事故後は点検のため世界で運航していた約200もの737MAX9全機が一時運航停止となっている。最新情報では、ユナイテッド航空が同型機を検査したところ、ドアプラグのボルトやそのほかの部品の緩みが発見された。

「自分の家族が737マックスで飛行することに100%問題なし」と当時のFAA局長

MAXシリーズはボーイング社製の小型旅客機だ。同シリーズの8型機(737MAX8)は2018年10月(ライオンエア)および19年3月(エチオピア航空)と5ヵ月の間に2度墜落し、計346人の乗客乗員が死亡した。

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387機すべてが20ヵ月間にわたる運航停止となり、ソフトウェアのバグの改良後は当時のFAA局長、スティーブ・ディクソン氏のお墨付きだった。「自分の家族が737マックス機で飛行することに100%問題はない」と、その安全性に太鼓判を押していた。

FAA Ungrounds 737 MAX

過去には破損した窓から乗客が吸い出された死亡事故も

2018年には、(MAXシリーズではないが)同じボーイング社製の737-700型機の窓が飛行中に破損し、そこに乗客の女性が吸い込まれて死亡する痛ましい事故が起こっている。

同年4月、乗客144人と乗員5人を乗せた米サウスウエスト航空1380便(ニューヨーク発ダラス行き)が離陸から20分後、高度3万2000フィートを飛行中に、左のエンジンが爆発し、その衝撃で窓が破損した。急激な減圧により、乗客のジェニファー・リオーダンさんの腰から上部が機外に吸い込まれた(吸い出された)。周りの乗客がリオーダンさんを引き戻したが、死亡が確認された。またこの時はほかに7人が負傷した。機体はフィラデルフィアに緊急着陸した。詳細

高度こそ違えど、機体の一部が破損するとはどれほどの衝撃だったかを物語っている。今回の737マックス9型機の事故でドアプラグのある席が空席で、かつ近くの乗客がシートベルトを締めており、全員が無事だったのは奇跡と言えるだろう。

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(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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