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超円安のGW 「最安値」ルートで東京からNYへ ── 良かったこと&悪かったこと【検証】

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
成田空港の出発ロビー。© Kasumi Abe

ゴールデンウィーク真っ只中の日本では、円安・ドル高が毎日のように報じられている。1990年4月以来34年ぶりの高値を更新し、今月28日には一時160円台に突入した。

しかし新型コロナ5類移行後初のゴールデンウィークとあり、海外旅行をする人は多いようだ。この連休の海外旅行者数は昨年の1.7倍の推計52万人と言われている。

歴史的な円安にインフレと海外旅行のハードルが上がる中、旅先での節約のため自炊用の食材や水などを持参する旅行客もいるそうだ。

自炊用の食材や水まで持参する旅行者

「ずっとタダのビーチ」「米は持参」お金の心配と自炊の準備…円安下でも人気のハワイ(テレ朝 報道ステーション)

【円安でGW海外旅行も“節約”へ】飲み物持参やハンバーガーをドリンクなしで(日テレNEWS)

ゴールデンウィークや夏休みなど人の移動が激しい時期は航空券も通常より値上がりする。インフレ、円安そしてロシアによるウクライナ侵攻後の原油価格の高騰で、ニューヨーク行きの航空券はそれでなくても高値だ。この春、日本に一時帰国していた筆者はゴールデンウィークの混雑を避けるため、一足先に出国した。

1万円はアメリカのドルでいくら?

現在、1万円はいくらの価値なのか、試しに出国時の成田空港で両替してみた。

今月25日の時点で、手に取ったのはたった63ドル(9957円分で43円のお釣り。手数料込み)だった。1万円と言えば日本ではコースランチやディナーをいただける額だが、今アメリカで63ドルと言えばディナーの軍資金として心許ない。これは寂しすぎる...。

© Kasumi Abe
© Kasumi Abe

東京・NY間の航空券。4人家族で100万円超!

東京・ニューヨーク間の往復航空券はいくらになるか。

現時点(この記事を執筆時点)の最安値は、ゴールデンウィーク明けの5月8日出発便(ハワイアン航空のハワイ経由)で1151ドル(約17万9600円)。この金額は戻りの日程やシーズン、航空会社や経由地などさまざまな要素で異なる。この20年で何度も行き来しフェアマーケットを知る筆者にとって、この金額は決して悪くない。

日系の航空会社で直行便となるとチケットはもっと高くなる。同じ条件で検索するとANA便が1677ドル(約26万1731円)。昨年は2000ドルを優に超えていたからそれに比べると安くなった方だが、それでも4人家族だと100万円超となる!

筆者が東京発ニューヨーク行きの航空券を購入したのは4月に入ってからで、価格帯はこれらと大体同じだった。1円でも安く抑えたい筆者は、ルート次第で上記の最安値よりさらに安くなるチケットを見つけた。

筆者が購入した航空券

(1)東京-ロサンゼルスの国際線航空券

(2)ロサンゼルス-ニューヨークのアメリカ国内線航空券

*重ねてだが、最安値は時期や条件によって変動する。また今回はとある事情で片道航空券の購入だったが、同じルートで「往復」を購入した方が価格は断然安くなる

料金内訳

(1)5万7623円(369ドル)

JALの子会社の格安航空会社(LCC)、ZIPAIRで東京とロサンゼルス間の最安値を見つけた。ドルにすると300ドル台とアメリカ人観光客にとっては驚異の安さ。筆者は荷物が重いのでのスーツケース(預け荷物)が30kgまでのコースを選んだが、荷物が軽くて機内食なしであればさらに安くなる。

ZIPAIRの評判が気になったが、某航空会社で働く友人曰く、機内食の有無を自分で選ぶスタイルだそう。また機内サービスは決して悪くなさそう。

(2)3万8391円(245.98ドル)

米格安航空会社(LCC)、フロンティア航空が最安値だった。某航空会社で働く友人によると、この会社の評判はそこそこで、それを茶化す話題がSNSなどに上がっているとのこと。サービスが多少悪くても普通に運航してくれたら文句はない筆者は、この航空会社のチケットを買ってみた。
検索すると、ダラス経由(ロサンゼルス-ダラス3時間2分&ダラス-ニューヨーク3時間22分)がこの時の最安値。ただしチェックインを自分ですることが条件。

実際に乗ってみて、良かった点とイマイチだった点を備忘録として記しておく。

良かった点

(1)ZIPAIR(3-3-3型座席で満席だった)
- 航空券が安い。安い割に地上係員の対応が丁寧(東京・成田)。CAのサービスは普通(決して悪くはない)。
- 各座席にモニターはないが、無料のWi-Fiが繋がり、機内エンタメはスマホやタブレットで観られる。
- CAは日本人で、案内は日本語と英語なので安心感がある。英語に不安がある人にとっては心強いはず。
- JALのマイレージに加算できる。

(2)Frontier Airlines(3-3型座席でLA-ダラスは満席だった)
- 航空券が安い。
- 預け荷物は18kgまで。
- 最安値はウェブサイトからセルフチェックインする条件だが、係員のヘルプがあった。
- ダラス-NYは定刻通りに出発、到着。
- ダラス-NYは隣が空席。

イマイチだった点

(1)ZIPAIR
- なぜか無料のWi-Fiが繋がらなかったので、機内エンタメは観られず。
- 機内食(事前に選んだ牛丼)付きのシートだったが、運ばれたのは何の変哲もない、紅生姜など一切入ってなく見栄えのしないただの牛丼(味も量も普通。1200円するものらしいがコンビニで購入したら300円くらいの価値だと思った)と小さめの水ボトルのみ。機内食は事前にコンビニで調達する方がマシ。(牛丼の写真は撮らなかったが、ほかの人がブログに掲載した写真がイメージに近い)

(2)Frontier Airlines
- 地上係員の対応がイマイチ。通常は窓側の客を先に搭乗させるがそのような案内がなかったため、出発前の機内はややカオス。
- シートのクッションが薄くて硬い。リクライニングなし。
- 機内サービスは一切なし(スナック類や水も出なかった)。
- 各座席にモニターなし。
- 無料のWi-Fiや電子機器のプラグなし。
- CAやパイロットのアナウンスが最小限。
- ロサンゼルス-ダラス線は機内清掃で遅延。
- ダラス-ニューヨーク線は機内が異常に寒かった。

各航空会社はここ10年ほどでサービス(機内食、無料のアルコール提供など)を大幅にカットしているが、不要なものを取っ払い、大前提の「安全に飛行」に注力するフロンティア航空はその最たる例だと感じた。シートは全席エコノミーで、富裕層には縁のないエアクラフトだろう。CAは必要最小限の動きしかしないので飛行中のアナウンスが少なく不安に感じる人もいるかもしれない。逆に航空機をバスやタクシーのように日常使いしたい人にとっては手軽で安価な長距離移動手段となる(599ドル、約9万4000円で年間乗り放題可)。

ほかに感じたこととして、通常は14時間ほどかかる東京-ニューヨーク移動だが、東京-ロサンゼルス(9時間半)、ロサンゼルス-ダラスとダラス-ニューヨーク(各3時間)と、細切れの移動で良かったのは、各空港で休憩ができることだった。10時間以上の超ロングフライトが苦手な人やタバコを吸う人にはオススメ。

また、東京発ニューヨーク行き(東行き)は、ニューヨーク発東京行き(西行き)と比べて時差ボケが酷くなるのが通例だが、今回は東京→ロサンゼルス→ダラス→ニューヨークと少しずつ時差をアジャストしながらの移動だったので、ニューヨーク到着後の回復がいつもより早く感じた(東行きの場合、通常は時差ボケが完全に解消するまで1週間ほどかかる)。

以上、ここに記したのはあくまでも筆者が搭乗した日の事例であり、路線や日によって異なることもあるかもしれないが、円安の折に筆者のように少しでも安くニューヨークに行きたい人にとって何かの参考になりますように!

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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