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米寿司店で巻き寿司を食べ死者2人に 「生の希少高級キノコに注意」と喚起再び

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
米国で人気のカリフォルニアロール(イメージ)。(写真:イメージマート)

アメリカ北西部モンタナ州に住む女性が昨年、寿司店で巻き寿司を食べた直後に危篤状態となり、その後死亡した事故を地元メディアが再び報じ、注意喚起している。

同州KBZKニューヨークポストが伝えるところによると、亡くなったのはダナ・ベンチュラさん(享年64歳)。ダナさんは同州の寿司店、Dave’s Sushiで昨年4月17日、サーモンと生のアミガサタケ(アミガサ茸、モリーユ茸、morel mushrooms)入りの巻き寿司を食べた1時間後に食中毒の症状を訴え、危篤状態に陥った。ICU(集中治療室)での懸命な治療にもかかわらず、12日後の29日に帰らぬ人となった。

ダナさんはICUでの治療中に話すことが困難となり、紙に走り書きで「痛みに耐えられない」「もう長くないだろう」などと訴え、栄養チューブを外す決断を自身で下し亡くなったと夫ジョンさんが地元メディアのインタビューで語った。

アミガサタケ(morel mushrooms)。希少高級キノコという位置付けのようだ。
アミガサタケ(morel mushrooms)。希少高級キノコという位置付けのようだ。写真:イメージマート

ダナさんのケースでは、加熱調理していなかった生のアミガサタケの毒素が腎臓と肝臓に悪影響を及ぼしたと見られている。またCDC(米疾病予防管理センター)の調査では、このアミガサタケは中国産である可能性が高いという。

同州ギャラティン郡保健局の調査で、寿司店での食事後に内臓疾患で死亡した例はダナさんのほかに1人おり、何らかの病状を訴えているのは少なくとも51人に上ることがわかった。

アミガサタケは一般的に食用とされており、希少な高級食材と位置付けられている。

アミガサタケは海外ではパスタなどにも使われる食材。写真はタリアテッレ(イメージ)。
アミガサタケは海外ではパスタなどにも使われる食材。写真はタリアテッレ(イメージ)。写真:イメージマート

日本でこのニュースを聞くと「キノコ類を生で?」と不思議に思うかもしれない。日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、アメリカの飲食店やスーパーのサラダなどに、マッシュルームのようなキノコ類が生の状態で入っていることも珍しくない(西洋のサラダを真似た商品が日本でも最近は増えているが、それでもまだ数としてはそれほど普及していないため、大多数の人に馴染みがあるものではないだろう)。生の食材と言えば、キノコ類だけでなくアメリカ人はブロッコリー、カリフラワー、ニンジン、ピーマン、トウモロコシなど噛みごたえのあるものをアペタイザーやスナックとして食べたりもする。ただしアミガサタケについては、毒性作用を防ぐために完全に加熱調理する必要があるとCDCは警告している。

生のマッシュルーム入りサラダ。アメリカでは生の食材の食感や味を好む人は意外と多い。(イメージ)
生のマッシュルーム入りサラダ。アメリカでは生の食材の食感や味を好む人は意外と多い。(イメージ)写真:イメージマート

問題となった寿司店は、同店および複数の系列店で食品衛生管理の違反があったことが判明し、ダナさんの家族はレストランを相手に訴訟を起こしている。

海外でロールやスシロールと呼ばれる巻き寿司は、ハンドロール(手巻き寿司)と共にアメリカの食のトレンドの一つだ。ネタは生魚、キュウリ、卵に加え、赤身肉、天ぷら、アボカド、クリームチーズなどバラエティ豊か。近年は通常の寿司店に加え、ロール専門店が続々とオープンし行列ができるほど。そのような巻き寿司ブームにこの事件は水を差す形となった。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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