「いいことも悪いことも経験できた」交通事故から4年、桃田賢斗29歳の今 #ニュースその後
「ただ車に乗っていただけなのに、なんで僕なんだろう……」。バドミントン元世界ランキング1位の桃田賢斗(29)は、選手生命の危機に見舞われた2020年1月の交通事故をこう語る。あれから4年。五輪イヤーを迎えた今、桃田はパリ五輪選考レースで厳しい状況に置かれている。なぜ挫折と復帰を繰り返しながらもコートに立ち続けているのか。昨年、本気で引退を考えた桃田を突き動かす原動力とは――。激動の20代の日々とこの先の人生を聞いた。(取材・文:金明昱/撮影:近藤俊哉/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
本心が垣間見えた一言
桃田賢斗は照れ笑いしながら自分の将来に少し悩んでいた。 「もちろん結婚はしたいです。家を建てて、子どもとキャッチボールをしたいと考えることはあります。ただ、そんなに現実はうまくいかない(笑)」 バドミントンでは百戦錬磨でも、こと恋愛に関しては攻略の糸口を見つけるのは難しいようだ。ただ、次の一言を聞いたとき、桃田の“本心”が垣間見えたような気がした。 「子どもができたら、バドミントンはさせたくないです。大変なんで……。やりたいって言ったら、いいかなと思いますけれど、強制してまでやらせてみようとはならないです」 2018年から約3年、男子シングルスで世界ランキング1位に君臨した桃田が言うのだから、“大変”の一言には重みがある。あらゆる欲を捨て、過酷な練習に耐え、トップコンディションを維持することの難しさは想像に難くない。しかし、29歳の桃田にとって、20代は想像以上に“大変”だったことだろう。 「この10年を振り返ると本当に早かったです。いいことも悪いことも、全部含めて、いろんな経験ができた20代でした」
いま振り返る「違法カジノと交通事故」
“桃田賢斗”と聞いて思い浮かべるイメージは、日本代表として世界の舞台で活躍する姿の人もいれば、違法カジノの賭博問題とマレーシアでの交通事故を思い出す人も少なくないはずだ。 当時の出来事をほじくり返す気はさらさらないが、過去に何があったのかは振り返っておきたい。 2016年4月、21歳のときに違法カジノでの賭博が発覚し、その後は無期限の競技会出場停止処分。17年に出場停止処分が解除されると、そこから約1年で日本男子初の世界ランキング1位にまで上りつめた。