「迷惑だけはかけてない」石田純一69歳、敗者復活という生き方 #昭和98年
「不倫は文化」など芸能史を彩る発言を数多く残してきた俳優の石田純一(69)。トレンディードラマで一世を風靡し、ニュースキャスターも経験。その一方で、さまざまなニュースの主役にもなり、2020年には新型コロナ禍での行動でバッシングも受けた。芸能人に高い清廉性が求められるなか、石田は何を考えるのか。「家を売り、車を売り、靴も時計も売って。ずいぶんバカにもされましたけど、迷惑だけはかけてない」と今の思いを吐露した。(取材・文:中西正男/撮影:近藤俊哉/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「絶体絶命」の半生
もう69歳ですか。誰の年だとも思いますけど(笑)。ま、それだけいろいろなことをやってきましたし、いろいろなことも言ってきました。 いわゆる「不倫は文化」発言もですけど、「この考えが正しいんだ」と押しつけるつもりは毛頭ありませんでした。選択肢を提示するというか、一つの視点のようなことを言ったつもりが、ハレーションがすさまじく大きかった。 実際、オペラなんかでも、出てくるのは何かある人間なんですよ。道徳的に真面目な人の日常を描いてもあまり面白くないわけです。分かっちゃいるけどやめられない。そんな恋や道ならぬ思いに生きるから面白いのであって。 ただ、僕の場合はちょっと、あれこれありすぎちゃったのでね。自分で自分の首を絞めるようなことばっかりでしたけど。 これまでの半生を一言で表すならば、一番適しているのは「絶体絶命」でしょうね。
そもそも、20代から役者をやって10年近く経っても全く売れなかった。事務所からも「もうマネージャーになりなさい」と言われましたしね。マネージャーという仕事が役者より上とか下とかじゃなく、もう役者としては売れる見込みはないという宣言ですよね。 そんななか、1988年にフジテレビのドラマ「抱きしめたい!」で一気に流れが変わりました。そこで認めてもらって、本来5話でお役御免になるはずだったのが、最終回まで出ることになりました。34歳からの役者人生のスタートです。 1997年からテレビ朝日で報道番組「スーパーJチャンネル」のキャスターもやらせてもらいました。当時、役者がキャスターをやるというのは異例だったんですけど、その状況だったからこそ「不倫は文化」のハレーションが大きくもなった。 近年で言うと、都知事選の話があり、新型コロナ禍でのバッシングがあり……。全部、身から出た錆なんですけど、本当に絶体絶命の連続でした。 ただ、なんとかここまで続けることはできました。その資質ですか? それがあるとすれば、自分で言うのもアレだけど、粘り強さですかね。限りなく無理に近い局面でも「無理じゃない」と信じる力というか。 最後の最後、地球上で自分が自分を信じなくなったら、もう終わりですから。自分だけでも、あきらめない。それを心の奥底では考えてきた人生だったと思います。