「今に見てろよ」巨人を変える新監督・阿部慎之助が語った盟主復活への思い #昭和98年
2年連続4位の屈辱を味わった読売巨人軍。来季、球団創設90周年のメモリアルイヤーを迎えるにあたって再建を託されたのが44歳の阿部慎之助新監督だ。2000年のドラフト1位で中央大から入団以降、通算2132安打、406本塁打、1285打点など数々の輝かしい実績を残し、2019年限りで引退後も二軍監督、一軍のコーチと20年以上にわたり一貫して巨人のユニホームを着続けてきた。生粋の“ジャイアンツ人”が胸に秘める盟主復活への思いを単独インタビューで聞いた。(取材・文:二宮寿朗/撮影:倉増崇史/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「軍」という言葉がつくのは巨人だけ
「歓迎 読売巨人軍」 ひなたサンマリンスタジアム宮崎の電光掲示板に、大きくその文字が映し出されるなか、若手を中心とした巨人の秋季キャンプは終盤を迎えていた。 新監督に就任した阿部慎之助はじっとしていない。 見て、聞いて、話して。気になった選手をつかまえては身ぶり手ぶりで指導していた。聞けば、キャンプ中に打撃投手を買って出たとか。グラウンドとブルペンを往復し、選手、コーチ、裏方スタッフとコミュニケーションを取っていく。精力的な「動」に引き出されるように全体が活気づいていた。 指揮官が電光掲示板に目を向けて言った。 「軍という言葉がつくのは、日本のプロスポーツ界においておそらく巨人だけ。軍隊とか、戦争とか、もちろんそういう捉え方ではありません。組織のなかにいろんな役割の人たちがいるからこそ、成り立っている。一人ひとり自分には何が必要かを考えて、実行していく人たちの集まりということではないかな、と。野球において“軍”が意味するところは何なのかって、僕自身考えさせられています」
読売巨人軍の名のもとに結集したそれぞれがプライドを持ち、役割と責任をまっとうしていくことだと阿部は考えている。 動きすぎないところも実はミソだ。 「早出の練習はコーチの人たちに任せる時間ですから、基本的には行きません。選手たちがちょっとだらけるようであれば僕、行きますよとは伝えています。コーチのやる仕事を取っちゃったらダメですから」 選手のみならず、コーチ、裏方を含めてすべてに対する目配りと気配り。「群」ではなく「軍」にしていくための視座に立っているからにほかならない。