第1志望に「3分の2が不合格」中学受験の現実 入学して“今はここで良かった” #こどもをまもる
中学受験シーズンが始まった。首都圏模試センターによると、直近2023年入試の受験者数は、私立と国立中学を合わせて5万2600人と過去最多となった。受験率も17.86%と最多だ。「中受ブーム」の中、「3分の2の受験生が第1志望の学校に受からない」という現実がある。そうした子どもたちは自分自身の感情にどう向き合うのか。第1志望以外の学校に進んだ子どもたちの今と、子どもたちを迎える学校の取り組みを追った。(文・写真:ジャーナリスト・国分瑠衣子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
不合格続き…6回目の受験で初めて合格
「私がこの学校に通うことはもう絶対にないんだって思いました」 都内の中高一貫の女子校に通う中学3年生の佐原葵さん(仮名、14歳)は、第1志望の中学が不合格だった日のことをこう振り返る。今の学校は第3志望の学校だ。 小学3年生から大手中学受験塾に通い始めた。憧れの学校はA女子校。父・潤さん(仮名)の仕事仲間の子どもが通っていて、楽しそうな学校の様子を聞いて目指した。 東京・神奈川の中学受験は2月1日から始まる。1月に行われる埼玉や千葉の学校を受験し、2月からの“連戦”に挑むのが一般的だ。桜蔭や開成といった「御三家」と呼ばれる私立の難関校は2月1日午前のみの勝負だが、複数回受験できる学校も相当数ある。ただし、同じ学校でも日を追うごとに倍率が上がり、難度が高くなる傾向がある。 最後の模試で葵さんは、A校の合格可能性が20%に下がり、自信をなくした。塾と相談し、次のような受験日程を決めた。 過去問の相性が良いB女子校を2月1日午前に受け、午後は合格可能性80%のC女子校。2日午前は第1志望のA校、午後は大学付属D校を受ける。自宅からの通学が難しいため、千葉や埼玉の1月受験は見送った。葵さんは内心、納得していなかった。「2月1日午前にA校を受けたかった。でも三者面談で(塾と親の間で)話が決まっていて言えませんでした」 そして2021年2月、葵さんの受験が始まった。1日午前にB校を受験。電車移動し、C校の最寄り駅で昼食をとって午後受験。その日の午後11時、C校の結果が出た。パソコン画面に表示されたのは不合格の文字。娘より先にそれを見た潤さんは言葉を失った。葵さんはもう寝ている。翌2日の朝、不合格を伝えた。手応えがあっただけにショックだったが、葵さんは本命A校に向かった。