第1志望に「3分の2が不合格」中学受験の現実 入学して“今はここで良かった” #こどもをまもる
A校の入試では力を出し切った満足感があった。午後の受験校へ向かう途中、1日午前のB校の不合格を知った。「疲れていて『あぁ、そうか』という感情ぐらいでした」。電車の中で母が作った弁当を食べ、眠った。疲れが出てD校は問題が頭に入らなかった。 2日夜に本命A校も不合格になり、2日目を終えた時点で合格はゼロ。潤さんは3日午後に行われるC校に再チャレンジの出願手続きをした。3日午前に都立中高一貫校を受けた後、葵さんと潤さんは地元の店でパスタを食べた。口数が少ない葵さんに潤さんは「つらかったら、もう受けなくていいんだよ」と声をかけた。 「このまま地元の中学に行くことになるのかな……」。葵さんの頭には塾の仲間や応援してくれた学校の友達の顔が浮かんだ。「今さら地元には行けない」。再びスイッチが入り、C校へと向かった。その夜の11時、C校の結果が判明。計6回目の受験で初めて合格を手にした。嬉しいというより、ほっとした。
クラスの大半が「第1志望じゃなかった」に挙手
C校に入学して間もない4月上旬。葵さんが驚いたことがあった。男性の担任教員が「この中で第1志望じゃなかった子は?」と聞くと、クラスの大半の生徒が手を挙げた。「じゃあ第1志望だった子は?」。手を挙げたのは数人だった。「そうだよね、第1志望の子もいれば、そうじゃない子もいるよね」と担任は言った。 「私だけじゃないんだ」。葵さんは自分と同じ境遇の子が多いことにほっとした。同級生と互いの受験をオープンに話すことで、気持ちがほぐれ、友達が増えていった。そして学校が好きになった。
一方で、中1の1学期ごろまで「A校に通っていたらどんな生活を送っていただろう」ということが頭をよぎるときがあった。友達の中には、入れなかった第1志望の学校のキーホルダーを中1の冬までカバンにつけていた子もいた。葵さんはいま思う。 「『あの学校に行きたかった』という気持ちはたぶんみんな持っている。でも同じぐらい『思った以上に今の学校はいい学校』と感じているんだと思います」 中3の今は、心の底からこの学校で良かったと思っている。