第1志望に「3分の2が不合格」中学受験の現実 入学して“今はここで良かった” #こどもをまもる
2日午前は父の母校の男子校、午後は1日午後に受験した共学校を再び受けたがともに不合格。浩紀さんは「1、2日午後の共学校は人気が上がっていて、前年の偏差値を参考にしにくかった」と振り返る。 3日、現在通っている学校の試験を受け、午後3時に本命校の不合格が分かった。これまで不合格が続いても気丈に振る舞っていた航さんだが「何がダメだったんだろう」と感情があふれ、塾の先生への報告の電話では泣いた。浩紀さんも不合格を突きつけられ続ける息子を見るのがつらかった。でも5日、合格の知らせが届いた。「あの時の感情は言い表せません」と航さんは言う。 入学前は新生活を楽しみにしながらも「心のどこかで、本気でやらなくても学校生活をこなせる」と思っていた。
だが、実際に入学し、学校生活を送る中で気持ちに変化が出てきた。同級生や先輩にはスポーツや芸術分野に秀で、全国レベルの大会で活躍する生徒がいた。好きなことに打ち込む姿を素直に「すごい」と思い、刺激を受けた。 今はテニス部に所属し、学外のスクールにも通うほどテニスに打ち込んでいる。大学との連携が多く、学校の授業も面白い。そんな航さんを見て、浩紀さんは「行くべき学校に進んだ」と感じている。母の理子さん(仮名)は保護者として、学校行事の参観や手伝いなどに積極的に参加する。「親も子も進学先の学校に興味を持って関わると、学校の良さに目が向き、楽しめるようになると思います」
レゴブロックで交流促進 愛校心を育む取り組み
文部科学省の2022年度の学校基本調査によると、首都圏の国・私立中学校は315校。偏差値も個性も異なるさまざまな学校があるが、全ての受験生が第1志望で入ってくるわけではない。 こうした学校の多くは、生徒が入学した学校に愛校心を持ち、自己肯定感を高めてもらう取り組みを行っている。 首都圏模試センター教育研究所長の北一成さんは「各家庭の価値観が多様化し、御三家といわれる難関校に受かっても別の学校を選ぶケースもあります。その意味では、ほぼ全ての学校が併願校といえます。こういう状況なので、全ての学校が子どもたちに学校生活に慣れ、楽しんでもらう工夫をしています」と話す。 そうした「工夫」とは、どんな取り組みなのか。 JR山手線・駒込駅から徒歩数分。東京・北区の聖学院中学校・高等学校は、キリスト教教育の男子校だ。「Only One for Others」の理念を基に、誰もが神から必ず才能を与えられていると教え、自己肯定感を高める教育を行う。