「合理的配慮」コンプラ視点欠ける私立学校の実態 進学フェアで門前払い、交渉できないケースも
校長の「合理的配慮? 何ですかそれは」の言葉に愕然
障害者差別解消法が施行され、障害のある児童生徒に対する合理的配慮が国公立学校において義務化されたのは2016年のこと。同法の改正によって2024年4月からは、私立学校も合理的配慮の提供が努力義務から法的義務となった。しかし、その対応には大きな差があるようだ。私立学校の合理的配慮をめぐる現状を取材した。 【写真】大学入学共通テストで受けられる合理的配慮とは? A氏は今年、複数の私立学校が集う都内の進学フェアに参加した。A氏の子は読み書きに困難がある学習障害で、高校受験を控えている。そのため入試や授業でどのくらい合理的配慮を受けられるのかを確認したかったという。 「私立は対応が手厚いと聞いていたのですが、4校のブースを回ったところ、ほぼ門前払いの対応でした。ある学校の管理職は『うちはそういう生徒を対象にしていない』と返答し、別の学校の校長は『合理的配慮? 何ですかそれは』と言葉自体も理解していない様子でした。今通っている公立中学校では合理的配慮に関して話し合いができていたので、私立学校のトップの認識に本当に驚きました」(A氏) こうしたケースは特別なことなのだろうか。学習障害の子を持つ母であり、読み書きに困難のある子どもの支援を行う一般社団法人 読み書き配慮 代表理事の菊田史子氏の元には、合理的配慮を受けられないという相談が寄せられている。例えば、今年度は次のような事例があったという。 【事例1】 書字障害の高校生が、特別支援教育の研究が盛んなある大学の総合型選抜を受けるに当たり、パソコンで小論文を書かせてほしいと申請。この大学には合理的配慮を検討する専門委員会があったが、なぜか不可となった。異議を申し立てたが覆らず、手書きで試験に臨むことになった。 【事例2】 私立の中高一貫校に入学した学習障害の生徒は、中学校の校長から「高校入学後に合理的配慮を提供します」と言われたため内部進学した。しかし、進学後に高校の校長から「合理的配慮はしない」と言われた。「事前にわかっていれば内部進学をしなかったのに」と生徒は話す。 「こうした事例はほかにもあると考えています。近年は現場の理解が進み『読み書きができないのは国語の指導や練習不足』と考える先生はだいぶ減りましたが、学校の経営層の中には合理的配慮を知らない人も多いのではないかと感じます」(菊田氏)