泥沼…なぜJBCは井岡一翔ドーピング騒動の謝罪文を2度公式HPに掲載したのか…背景に井岡、田中両陣営の「責任無き謝罪」拒否
筆者はJBCの幹部に「両陣営への謝罪はメディアにリリースした上で公開で行わねば名誉回復にはつながらない」という意見を伝えたが、彼らは、こっそりと動いた。ガバナンス委員会を立ち上げた組織が、また情報を公開せずに“隠密行動”である。 一方の陣営には、すでに非公開で永田理事長が“謝罪”に出向き、そこで“謝罪拒否”をされた。 もう一方の陣営とは弁護士レベルで話し合いを行っているが、紛糾。直接謝罪を拒否されている。両陣営からはJBCの不手際で井岡にドーピング疑惑の汚名を着せたにもかかわらず、名誉回復への努力が不十分であるとの指摘も受けている。異例ともいえる2度目の謝罪文掲載の背景には、これらの事情があるのだ。 そして両陣営が謝罪を拒否している最大の理由が「責任無き謝罪」である点。2度目の謝罪文にも、両陣営が求めている答えは記されなかった。 井岡は19日に行われた記者会見で、「いろんな不備が原因で(こんな事態になり)謝罪だけでは納得がいかない。現役を続ける上で今の(JBCの)体制でやっていくのには怖いという気持ちがある。僕以外のボクサーにこういう思いは絶対にしてほしくない。選手が安心できてパフォーマンスに集中できる体制を作ってもらいたい」との怒りをあらわにして、今回の不手際を起こしたJBC幹部の“辞任”を暗に要求していた。 騒動に巻き込まれた対戦相手の田中が所属する畑中ジムも「(JBCから)納得のいく説明があるかどうかで謝罪を受け入れるか考えたい」「今後、このような事態を繰り返さないためにも、この大混乱を招いたJ B Cの関係者はしかるべき責任をとるべきだ」と、永田理事長らJBC幹部に事実上の“辞任要求”を突き付けていた。 しかし、謝罪文では「今後」については触れているが、今回の不始末に関する責任問題については、一切、触れられていない。水面下で行われた“謝罪”の場でも、JBCは、両陣営に対して「どう責任を取るか」の問題に対しての答えを用意していなかったという。 現JBC幹部は、19日の理事会で正式な承認、決定手続きを得る前日の18日に倫理委員会の答申内容を先に井岡サイドに文書で伝えるなど、組織のコンプライアンス、ガバナンスを疑われる行為を再度、犯していたことも判明している。 井岡、田中両陣営は、共に現体制のトップが“辞任”という形で責任を取り“お詫び”に説得力を持たせない限り謝罪を受け入れる考えはない。「責任無き謝罪」は謝罪とは言わないのである。 永田理事長は19日の会見で「今後、ガバナンス、ドーピング委員会を開く。これからの取り組みが責任だと思う。ドーピングの在り方を正すのが先」と、論点をすり替え、理事長自らが職を辞して責任を取ることは「ありません」と否定した。だが、「現体制には今後の改革は無理」「責任を取らずに何がガバナンス委員会か」などの批判が、JBCと両陣営とのやりとりの中で飛びだしている。 JBCが2度目の謝罪文を掲載しようが、両陣営が謝罪を受け入れない以上、井岡のドーピング疑惑騒動は、まだ決着を見ていないのである。JBCが不手際の責任を明確にしない限り事態は泥沼化する。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)