5年前の事故で車イス生活の失意…「外に出る勇気」を与えてくれたパラ新種目バドミントンで里見紗李奈が涙の初代金メダル
そして劣勢になるほど、自分のなかで「スマイル、スマイル」と言い聞かせた。 試合中に何度も見せた、弾けるような笑顔の理由がここにある。サーブを打つ前に響かせる「ハイッ!」も、自らを鼓舞させるルーティンのひとつだったのだろう。 実際、ポーカンとの決勝も第1ゲームを14-21で奪われた。第2ゲームも15-9とリードされた状況から9連続ポイントを奪われて逆転され崖っぷちに追い込まれた。 「コーチから『勝ちたい気持ちが強い方が勝つ』と言われたので、自分で自分の気持ちを盛り上げながら試合をしました」 試合中に頭をもたげた不安を前向きな思いへ変えた、と振り返った里見は15-18となった第2ゲームで今度は連続5ポイントをゲット。逆転で第2ゲームを奪い、ゲームカウントをタイにして迎えた勝負の第3ゲームは、途中から元世界ランク1位のポーカンを圧倒した。 「周りの人に支えられている自分は、本当に恵まれていると思っていて、試合中もコーチや家族を含めたみんなの顔が浮かんできて、それがすごく力を与えてくれました」 戦いはまだ終わらない。 山崎とのペアで世界ランク1位に立つダブルスの決勝が、東京パラリンピック最終日の5日に待つ。大会前から「両方とも金メダルに手が届く場所にある」と公言してきた里見は有言実行の二冠獲得だけでなく、日本中の障害者を勇気づける勝利を目指して、国立代々木競技場のコートに立つ。
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